墓穴を掘り続ける中国:ALPS 処理水の罠にはまった中国
これはもう戦争なのか
中華人民共和国政府は、東電福島第一原発から海に放流されたALPS処理水を汚染水と称し、日本産の生鮮海産物のみならず水産加工品の禁輸に踏み切った。それに加えて、24日の放流開始後から福島県や東北圏内のみならず、様々なところに迷惑電話が中国内からかかってくる。
海産物・水産加工物の禁輸の枠を超えて、飲食、ホテル、行政などが通常業務ができない状況に陥っている。
これはもはや単なる嫌がらせの域を超えて、情報戦であり経済戦争である。
処理水放出開始から1週間が過ぎたが、事態は悪化する一方である。
当初、中国の思惑によれば追随するのではないかと思われていた韓国は、その政権与党が実に真っ当な対応を見せ中国の思惑を裏切る形となった。
今や中国のみが〝核汚染水〟とあげつらっている。世界でひとりぼっちの不見識を振りまいているといった有り様だ。気の毒というほかない。中国政府はALPS処理水の罠に落ちた。自ら墓穴を掘ったのだ。
ただ、こういった中国の言いがかり的な全くもって〝科学的でない〟やり口から見えてくることがある。
しらを切る中国政府
中国国民の中には、処理水に含まれるトリチウムがとんでもない汚染―ひいては健康被害をもたらすと本当に思い込んでいる筋が結構いるらしい。塩の買い占め騒動がその良い例である。科学的かつ論理的に考えれば、中国の方がより多量のトリチウムを近海に放出しているので、日本産よりも中国沿岸で生成された塩の方がより多くのトリチウムを含んでいる可能性が高い。
ALPS処理水の放流後のモニタリング調査では、放流口近辺のトリチウム濃度は国際基準をはるかに下回っており、捕獲したヒラメなど底物の魚体からは検出限界以下という結果しか出てきていない。
中華人民共和国外交部の副報道局長は31日、「日本側に誠意があるなら、直ちに放出を停止し、隣国と十分な意思疎通を行うべきだ」との見解を示した。なにを言っているのか。あんたらがそれを拒否しているのではないか。
そもそもトリチウムは太古の昔から自然に存在するし、中国の原発からも恒常的に福島第一を超えるトリチウムが放出されている。トリチウムはどのトリチウムも同じトリチウムである。色はついていないし、つけることなどできない。
したがって、中華人民共和国外交部の副報道局長は何が言いたいのか——呆れるを通り越して、無知と悪意しか感じ取れない。
中国政府のいう〝核汚染〟の真意
科学的事実に基づけば〝核汚染〟でも何でもない—天然トリチウム水よりもトリチウムが薄い。それがALPS処理水である。何ら問題はないのだが、事態はそれとはもはや関係がないところで進展している。
中国発の迷惑電話は、日本各所にかかってきている。中国語でまくしたて片言の日本語で〝バカヤロウ〟などという。このような嫌がらせ電話は明らかな営業妨害であり、法律違反になる。しかし、中国外務省は「状況を把握していない」の一点張りである。
中国政府は24日の放出前から、〝核汚染水〟キャンペーンを貼ってきた。IAEA国際原子力機関からも安全のお墨付きを得たALPS処理水は核汚染水ではないという科学的根拠に基づく主張を聞き入れることなく、中華人民共和国政府は中国国民の不安感と危険意識を煽りに煽ってきたのである。
厄介な隣国—中華人民共和国
中国は今不動産バブルの崩壊の真っ只中にあり、その悪影響はとりわけ富裕層の間に著しい。そして、大学生の間には「卒業すると即失業」という就職氷河期が蔓延し、若者の失業率は軽く20%を超えると言われている。
そんな折に、ALPS処理水放出は人民の不満の矛先を自国の失政以外に向ける格好の材料になった。
そんな不埒な隣国にやられっぱなしでは、この先わが国は立ち行かない——みなさんはどう思われるのか?
むしろこれを契機に、日本は生鮮海産物のみならず水産加工品の中国への全面輸出入禁止を行うべきだろう。そして、他の友好国への輸出の伸張や国内需要を喚起し、これにわが国政府は支援する方向に舵を切るべきではないか。
また、経済安全保障のみならず日本国民の人の安全保障を旨とするなら、日本から中国に進出した企業・製造工場などは、向こう数年のうちに日本に引き揚げるべきだろう。中国依存のビジネスは、良いビジネスで儲かったのかもしれないが、リスクの方が大きいということはもうすでに嫌という程経験を積んだはずではないか。
確たる証拠もなく、スパイ容疑で逮捕拘留される法人ビジネスパーソンは後を絶たない。そして日本政府、現地大使館は手も足も出ないのである。
今年2月、米国CAIのバーンズ長官は、習近平国家主席が2027年までに台湾侵攻の準備を整えるよう軍部に指示していたという情報を明らかにした。台湾進攻の開始とともに、中国にいる日本人は全員スパイ容疑で拘束・拘置される。そんなことは、太平洋戦争の米国のやったことを見ても明らかだ。
2027年まであと数年しかない—日本の政治のみならず国民の覚醒と決断が問われている。
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