再生可能エネルギーの出力制御はなぜ必要か

SimonSkafar/iStock
立春が過ぎ、「光の春」を実感できる季節になってきた。これから梅雨までの間は太陽光発電が最も活躍する季節となるが、再エネ導入量の拡大とともに再エネの出力制御を行う頻度が多くなっていることが問題となっている。
2月6日に行われた閣議後記者会見の質疑で、齋藤健・経済産業大臣は、記者の「最近再エネの出力制御が常態化しつつあり再エネ普及と拡大に水を差しかねない事態だが、大臣の受け止めと対応策はどうか」との問いに対し、
- 再エネの出力制御は、電力の安定供給を維持しながら再エネの導入を進めるために、むしろ必要な措置である。
- しかし、再エネの導入拡大に歯止めがかからないよう、昨年末に「出力制御対策パッケージ」を取りまとめた。
と答えた。

図1 出力制御パッケージ
出典:経済産業省
出力制御を行うことは、「せっかく利用できる再エネを捨てることになりもったいない」との声もあるが、どう対応するのが適切なのだろうか。
停電を防ぐために必要な電気の需給バランス
電気はそのままでは貯めることができないため、電力系統においては電気を使う量と発電する量(需要と供給)を常にバランスさせる必要がある(同時同量)。このバランスが崩れてしまうと電力系統の周波数が乱れ、最悪の場合、大規模停電が発生する恐れがある。

図2 需給バランスのイメージ
出典:朝日新聞デジタル
電気の需要は時々刻々変化するとともに、太陽光や風力といった自然変動電源の発電量は需要の多少にかかわらず天候に左右される。

図3 電力需給のイメージ
出典:経済産業省
また太陽光発電は、日中の発電量は多いが、陽が西に傾くにつれて急速に発電量が下がるという特徴を持っている。

図4 太陽光発電の発電電力量の推移
出典:東京電力EP
このように刻一刻と変化する需要と供給のバランスを一致させるため、電力系統で電源をどのような条件や順番で動かすかを定めた「優先給電ルール」がある。

図5 優先給電ルール
出典:経済産業省
通常は「優先給電ルール」に従い、発電量(供給)が需要を上回る可能性がある場合には火力発電所や揚水式発電所などの出力を調整して対応しているが、それでも供給が需要を上回る恐れがある場合に再エネの出力制御が行われることになる。
このように、停電を防ぎ電力の安定供給を確保するために需給のバランスを取ることが必要不可欠であり、さまざまな電源の出力制御が日常的に行われている。
再エネの出力制御は優先度が低く「苦肉の策」ではあるものの、仮にそれを全くやらなければ大停電が起きることになり、そうなると再エネ自体も発電を続けられなくなってしまうため、齋藤大臣の「必要な措置」というコメントとなっているのである。

関連記事
-
東日本大震災で事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所を5月24日に取材した。危機的な状況との印象が社会に広がったままだ。ところが今では現地は片付けられ放射線量も低下して、平日は6000人が粛々と安全に働く巨大な工事現場となっていた。「危機対応」という修羅場から、計画を立ててそれを実行する「平常作業」の場に移りつつある。そして放射性物質がさらに拡散する可能性は減っている。大きな危機は去ったのだ。
-
WEF(世界経済フォーラム)や国連が主導し、我が国などでも目標としている「2050年脱炭素社会」は、一体どういう世界になるのだろうか? 脱炭素社会を表すキーワードとして、カーボンニュートラルやゼロ・エミッションなどがある
-
アゴラ研究所の運営するエネルギー調査期間のGEPRはサイトを更新しました。
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクのGEPRは、サイトを更新しました。
-
「世界で遅れる日本のバイオ燃料 コメが救世主となるか」と言う記事が出た。筆者はここでため息をつく。やれやれ、またかよ。バイオ燃料がカーボンニュートラルではないことは、とうの昔に明らかにされているのに。 この記事ではバイオ
-
「海外の太陽、風力エネルギー資源への依存が不可欠」という認識に立った時、「海外の太陽、風力エネルギー資源を利用して、如何に大量かつ安価なエネルギーを製造し、それをどのように日本に運んでくるか」ということが重要な課題となります。
-
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ドイツがロシアからガスを輸入し続けていることを激しく非難し続けている。 ただ現実には、ロシアのガスは今もなおウクライナ経由の陸上パイプラインを通って西に向かって流れている。しかも、4月1
-
今回の大停電では、マスコミの劣化が激しい。ワイドショーは「泊原発で外部電源が喪失した!」と騒いでいるが、これは単なる停電のことだ。泊が運転していれば、もともと外部電源は必要ない。泊は緊急停止すると断定している記事もあるが
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間