一目瞭然!アジアでは石炭火力が増えている

Andrzej Rostek/iStock
図は2015年のパリ協定合意以降(2023年上期まで)の石炭火力発電の増加量(赤)と減少量(緑)である。単位はギガワット(GW)=100万キロワットで、だいたい原子力発電所1基分に相当する。
これを見ると欧州と北米では石炭火力発電所は減っているが、アジアでは増えている。とくに中国は爆増してきた。
今回の図も前回に続き米国Energy Policy Resaerc Foundationが公開しているものである。
欧州で減ってきたのは歴史的な理由だ。冷戦期までは石炭を多く使っていたが、その後はロシアが供給する安価なガスの方が経済性がよくなったので、石炭は要らなくなった。
北米もシェールガスの開発成功によってガス火力発電所の経済性が高くなり、石炭火力発電は廃止されていった。
欧州も米州も、いくらかは温暖化対策の効果もあるにしても、石炭火力よりも安価なガス火力があったという経済的な理由が大きい。
アジアにはこのような恩恵は無かったから、電力需要に対応するためには石炭火力発電は有力な選択肢だった。これは今後も変わらない。
欧米はやたらと「脱石炭」と言うようになったが、経済性の優れた代替手段があったから言えたことだ。
ロシアからの安価なガス供給が乏しくなったことで、欧州はいまエネルギー価格高騰に苦しんでいる。今後はどうなるだろうか。
■

関連記事
-
ドイツが徴兵制を停止したのは2011年。当時、メルケル政権のツー・グッテンベルクという国防相の下で、大した議論もなくあっという間に決まったのを覚えている。廃止ではなく停止というのがミソで、いつか必要になったら復活する可能
-
有馬純 東京大学公共政策大学院教授 今回のCOP25でも化石賞が日本の紙面をにぎわした。その一例が12月12日の共同通信の記事である。 【マドリード=共同】世界の環境団体でつくる「気候行動ネットワーク」は11日、地球温暖
-
学生たちが語り合う緊急シンポジウム「どうする日本!? 私たちの将来とエネルギー」(主催・日本エネルギー会議)が9月1日に東京工業大学(東京都目黒区)で開催された。学生たち10名が集い、立場の違いを超えて話し合った。柔らかな感性で未来を語り合う学生の姿から、社会でのエネルギーをめぐる合意形成のヒントを探る。
-
日本が議長を務めたG7サミットでの重点事項の一つは気候変動問題であった。 サミット首脳声明では、 「遅くとも2025年までに世界の温室効果ガス排出量(GHG)をできるだけ早くピークにし、遅くとも2050年までにネット・ゼ
-
前回の投稿においてG20エネルギー移行大臣会合の合意失敗について取り上げたが、その直後、7月28日にチェンナイで開催されたG20環境・気候・持続可能大臣会合においても共同声明を採択できす、議長サマリーを発出して終了した。
-
少し前の話になるが2017年12月18日に資源エネルギー庁で「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」と題する委員会が開催された。この委員会は、いわゆる「日本版コネクト&マネージ」(後述)を中心に再生
-
連日、「化石燃料はもうお仕舞いだ、脱炭素だ、これからは太陽光発電と風力発電だ」、という報道に晒されていて、洗脳されかかっている人も多いかもしれない。 けれども実態は全く違う。 NGOであるREN21の報告書に分かり易い図
-
はじめに 映画「Fukushima 50」を観た。現場にいた人たちがフクシマ・フィフティと呼ばれて英雄視されていたことは知っていたが、どんなことをしていたのかはもちろんこの映画を観るまで知らなかった。 中でも胸を打ったの
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間