2035年のCO2削減目標を60%にしたい政府の理由に啞然

以前から、日本政府が10月31日に提示した「2035年にCO2を60%削減という目標」に言及してきたが、今回はその政府資料を見てみよう。
正式名称はやたらと長い:中央環境審議会地球環境部会2050年ネットゼロ実現に向けた気候変動対策検討小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会地球環境小委員会中長期地球温暖化対策検討WG 合同会合(第6回)
2050年ネットゼロに向けた我が国の基本的な考え方・方向性(事務局資料)
この資料自体はとても短くて4ページしかない。CO2目標を示しているのは3ページ目:

2035年に60%とする理由は「直線的な経路」ということだ、とはっきり書いてある。おい、それだけかよ!
この会議、経産省と環境省の「有識者」の合同会合なのだが、どのようなご意見があるのかというと、2ページ目にまとめてある:

なんじゃこりゃ。いったいどこの星のどこの国の話をしているのだ。代わりに意見を言ってあげよう:
- 日本が2050年CO2ゼロなど、そもそも出来るはずがない。
- それを直線的に達成するなどということをすれば、エネルギー価格は爆騰、製造業は完全に崩壊、失業者が溢れかえる。
- 世界を見よ。米国もロシアも、2050年CO2ゼロなど、やらない。それどころか、石油もガスも石炭も輸出しまくる。
- 中国もインドも、石炭火力発電を建てまくっている。
- グローバルサウスは、大前提であった「先進国の資金提供」が足りなすぎるので、CO2ゼロは出来ない、と言うだろう。
- フォルクスワーゲンまでリストラが始まった欧州も、どうせ豹変するだろう。
- そして、日本がCO2をゼロにしても、せいぜい0.006℃しか下がらない。
政府はこの2035年60%という数字を第7次エネルギー基本計画に書きこみ、来年2025年2月10日までにパリ協定に提出する構えだ。どうせ撤回することにはなるだろうが、さっさと止めないと、取返しのつかない破滅的な出費を無駄にすることになる。
愚かな数値目標設定を止め、パリ協定からは離脱すべきだ。
■
関連記事
-
先日、「国際貿易投資ガバナンスの今後」と題するラウンドテーブルに出席する機会があった。出席者の中には元欧州委員会貿易担当委員や、元USTR代表、WTO事務局次長、ジュネーブのWTO担当大使、マルチ貿易交渉関連のシンクタンク等が含まれ、WTOドーハラウンド関係者、いわば「通商交渉部族」が大半である。
-
今年の10月から消費税率8%を10%に上げると政府が言っている。しかし、原子力発電所(以下原発)を稼働させれば消費増税分の財源は十二分に賄える。原発再稼働の方が財政再建に役立つので、これを先に行うべきではないか。 財務省
-
日本経済新聞は、このところ毎日のように水素やアンモニアが「夢の燃料」だという記事を掲載している。宇宙にもっとも多く存在し、発熱効率は炭素より高く、燃えてもCO2を出さない。そんな夢のようなエネルギーが、なぜ今まで発見され
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。 1)改革進めるサウジ、その先は?-日本の未来を左右 サウジアラビアのムハンマド副皇太子、ま
-
今回は、日本人研究者による学術論文を紹介したい。熱帯域を対象とした、高空における雲の生成と銀河宇宙線(GCR)の相関を追究した論文である(論文PDF)。本文12頁に、付属資料が16頁も付いた力作である。第一著者は宮原ひろ
-
米国のロジャー・ピールキー(Roger Pielke Jr.)は何時も印象的な図を書くが、また最新情報を送ってくれた。 ドイツは脱原発を進めており、今年2022年にはすべて無くなる予定。 その一方で、ドイツは脱炭素、脱石
-
今週はロスアトムによるトリチウム除去技術の寄稿、南シナ海問題、メタンハイドレート開発の現状を取り上げています。
-
経済危機になると、巨大企業は「大きすぎて潰せない」とされて、政府による救済の対象になるのはよくある話だ。 だが、科学の世界では話は別かと思いきや、似非気候科学に金が絡むと、明白に誤った論文ですら撤回されない、すなわち「大
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間














