イギリスでも脱・脱炭素を掲げる改革UKが大躍進
いまイギリスで急速に支持を伸ばしているのが、右派政党の改革UK(Reform UK)だ。今年の世論調査では、ついに労働党や保守党を抑え、支持率で第一党に躍り出たとの報道もあった。背景にあるのは、不法移民問題に加え、生活費高騰とその原因となっているエネルギー政策への強い反発である。

ナイジェル・ファラージ・改革UK党首
同氏インスタグラムより
Reform UKは、英国の政治において初めて明確に「Net Zero(温室効果ガス排出実質ゼロ)」の廃止を党の公約に”Scrap Net Zero”と明記した政党である。さらに、太陽光や風力といった再生可能エネルギーに対して補助を全廃した上で新たな課税を行うと主張している。
従来、気候変動対策について、保守党・労働党といった伝統的な主要政党はNet Zeroを推進してきた。しかしここへ来て、国民の不満を背景に「Net Zeroそのものを見直す」という立場が民衆の支持を獲得しつつある。
最近になってThe TimesがYouGovに委託した世論調査では、Reform UK の指導者ナイジェル・ファラージが、気候変動政策に関して「正しい政策を持っている」と信頼される割合は22%となっており、与党労働党の首相であるスターマーの24%、同党のエネルギー・ネットゼロ大臣であるエド・ミリバンドの23%とほぼ同じ水準になっている。
こうした「反Net Zero」の政治潮流は、イギリスだけの現象ではない。ドイツではAfD(ドイツのための選択肢)が、フランスではRN(国民連合)が、いずれも最大野党にまで急成長し、いずれも気候政策の急進路線を批判している。すなわち、AfDはNet Zero・再エネ政策に強く反対し、憲法上の気候中立目標の削除を求めている。RNは「懲罰的エコロジー」を批判して気候目標の引き下げを求めている。
そしていま、イギリスでも世論調査で主要政党に肉薄しつつあるReform UKが、同じ立場を鮮明にしている。つまり、欧州三大国すべてで「反Net Zero」を掲げる右派勢力が台頭してきたのである。
この趨勢は、今後の国際的なエネルギー政策や気候政策にも影響を与えるだろう。各国政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」は政治的に長期にわたり安定した目標ではない。むしろ、近い将来、エネルギー安全保障と国民生活を直視した現実的な政策への転換が、欧州政治の潮流となる可能性も高まっている。
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