日本版DOGEへの提言:国益を毀損する「脱炭素補助金」を大掃除せよ

高市総理は総裁選の際、「補助金の大掃除が必要だ」と明言されました。これを受け、現在は片山さつき財務大臣が「日本版DOGE」のトップとして活動を開始しています。現在、補助金や租税特別措置における無駄について広く意見を募集しており、締め切りは2月26日までとなっています。
【意見募集ページ】租税特別措置・補助金の適正化に向けた提案募集
筆者は、この機会を逃してはならないと考え、特に巨額の予算が投じられている「脱炭素政策」に焦点を当て、6項目からなる意見書を作成した。以下にその内容をそのまま提示する。
読者の皆さまにも、ぜひ主体的に意見提出を行っていただきたい。これは単なる行政手続きではなく、国の予算の使われ方を変える数少ないチャンスである。
【項目1】温暖化対策事業における不透明な予算情報開示の是正と事業廃止について
予算情報開示の現状と課題
温暖化対策に関連する事業の予算総額について、現状の情報公開は極めて不十分である。地球温暖化対策推進本部が毎年度公表する「地球温暖化対策計画の進捗状況」では、予算が「内数※)」として表示され、実際にいくら支出されているのか不明な事業が事業件数の約6割を占めている。
こうした予算の内数表示を廃止し、温暖化対策に投じられた具体的な金額を確かな透明性をもって公表すべきである。
※)内数について:上記予算の中に温暖化対策費用が含まれていることを意味するが、具体的な金額のうちいくらが温暖化対策分にあたるのかが明示されていない状態を指す。
不透明な情報開示の具体例
多額の予算が投じられながら、内数表示により実態が不明確な具体例(所管:経済産業省、国土交通省、環境省等)は以下の通りである。
- 社会資本整備総合交付金(関連支援含む): 約1.5兆円/年の内数
- 循環型社会形成推進交付金: 約1,000億円/年の内数
- 地方創生汚水処理施設整備推進交付金: 約1,000億円/年の内数
- 再生可能エネルギー導入促進を支える分野横断的施策: 約500億~1,000億円/年の内数
- エネルギー使用合理化等事業者支援補助金: 約500億円/年の内数
また、環境省が公表する「地球温暖化対策関係予算案」に含まれる予算の定義も不明確である。何をもって温暖化対策関連とし、どのような集計基準で計算しているのかが不明であり、予算の算出根拠が欠如している。
国際的評価と行政に求められる改善
温暖化対策に限らず、日本の税支出の透明性に関する国際評価(GTETI:Global Tax Expenditures Transparency Index)において、日本は「Public Availability(情報の公開性)」の項目で世界最低水準にある事実を行政機関は重く受け止めるべきである。
- 総合評価: 評価対象116か国中81位(100点満点中38.4点)
- 詳細: 公開の頻度・定期的公開、可視性、オンラインアクセスの利便性、読者への分かりやすさの4項目で世界最低水準と評されている
このように費用に関する情報公開が不透明な事業は、速やかに廃止すべきである。また、予算の定義を明確化し、国際水準に則った透明性の高い情報開示への抜本的な改善を強く求める。
【項目2】費用対効果を指標とした温暖化対策事業の定期的評価および改廃の実施について
費用対効果の算出と改廃基準の策定
温暖化対策事業においては、二酸化炭素(CO2)削減量1トンあたりに要する費用(費用対効果)を算出することを原則とすべきである。実績の集計が困難な事業であっても、削減目標量に基づく試算を行うことは可能である。政府は、有識者を交えた政府主導の会議において、この費用対効果を指標とした事業の改廃基準を明確に設けるべきである。
排出権価格との比較による事業の正当性
現在、政府が検討している排出量取引制度では、排出権価格の上限を1トンあたり4,300円とする案が示されている。この基準に基づけば、将来的なコスト低減が見込める等の具体的かつ現実的な理由がない限り、これを大幅に上回る高コストな事業の継続は正当化されない。そのような政策や事業については、速やかに改廃を検討すべきである。
現行事業における費用対効果の実態(試算)
現状、温暖化対策は情報公開が不十分であり、正確な算出は困難を極める。そのため、一部に仮定を置いた試算ではあるが、主な事業の1トンあたりの削減コストを以下に整理する。
比較的コストが低いとされる事業(地球温暖化対策計画フォローアップ番号):
- 62. J-クレジット制度の活性化: 約3.7万円
- 68. 「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)の推進: 約7.5万円
- 47. 電力分野の二酸化炭素排出原単位の低減: 約30万円
※ ただし、固定価格買取制度(FIT)や再エネ賦課金(年3〜4兆円規模)を考慮すれば、費用対効果は著しく悪化する。
極めて費用対効果が低い事業:
- 23. 高効率な省エネルギー機器(浄化槽の省エネ化等): 約74億円
- 61. 都市緑化等の推進: 約57億円
- 57. 下水汚泥焼却施設における燃焼の高度化等: 約26億円
「定性」ラベルによる不透明な大規模予算の是正
以下の大規模事業は「定性的対策」とラベル付けされており、2030年度のCO2削減目標が定量的に定められていない。すなわち、理論上は「削減量ゼロ」であっても事業として存続可能な状況にありながら、莫大な予算が投入されている。
- 定性-12 地球温暖化対策技術開発と社会実装: 約3.5兆円規模
- 定性-02 脱炭素に資する都市・地域構造及び交通システムの形成: 約2.8兆円規模
- 定性-04 水素社会の実現: 約5,700億円規模
このように費用対効果を度外視した政策マネジメントは速やかに是正されるべきである。定量的な削減目標に基づき、厳格なコスト評価を実施することを強く求める。
【項目3】CO2削減が主目的である事業は、効果(便益)が全くないため事業を廃止すべき
事業効果(便益)の不在と予算投入の妥当性
温暖化対策には年間1兆円から5兆円以上(正確な金額は非公開)という莫大な国費が投じられているが、それに見合う効果(便益)は実質的に存在しない。CO2削減そのものを主目的とする事業は、国民生活への寄与が極めて限定的であり、速やかに廃止すべきである。
科学的試算に基づく気温抑制効果の限界
効果がほとんど認められない根拠は以下の通りである。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のTCRE(累積排出量に対する過渡的気候応答)係数を用いて計算した場合、日本が2050年までに排出量を完全にゼロにしたとしても、それによる気温低下の効果はわずか0.006℃にとどまる。
過去、地球の気温は約1℃上昇したが、深刻な被害が生じた事実はなく、台風や大雨の激甚化も観測されていない。将来の激甚化を予測するシミュレーションは存在するものの、過去の再現性すら十分に確保されておらず、信頼性に欠ける。
わずか0.006℃の変化が日本に有意な便益をもたらすとは考えられず、巨額の予算投入は正当化されない。これらに関する詳細なデータについては、杉山大志著『データが語る気候変動問題のホントとウソ』(電気書院)を参照されたい。
膨大な予算が投入されている具体的事業例
わずか0.006℃の抑制効果のために、以下のような大規模予算が計上されている(一部終了済み事業を含む)。
環境省所管事業
- 断熱窓への改修促進等による省エネ・省CO2加速化支援事業:約2,600億円規模
- 地域脱炭素移行・再エネ推進交付金:約1,300億円規模
- 脱炭素移行に向けた二国間クレジット制度(JCM)促進事業:約1,000億円規模
- 民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業:約800億円規模
国土交通省所管事業
- 子育てエコホーム支援事業:約2,000億円規模
- こどもエコすまい支援事業:約2,000億円規模
- 住宅・建築物カーボンニュートラル総合推進事業:約2,000億円規模
- こどもみらい住宅支援事業:約1,100億円規模
これらはいずれも多額の予算を要しながら、その科学的・経済的な便益が極めて不明瞭な事業群である。日本版DOGEにおいては、こうした費用対効果の乏しい事業を聖域なく「大掃除」の対象とすべきである。
【項目4】自立的な産業化が見込めないCO2削減技術開発事業の廃止について
社会実装に向けた経済的自立性の欠如
費用対効果が算出されていない、あるいは極めて悪い事業を正当化する理由として、「将来の技術開発に資する」という説明が多用されている。
しかし、検討されているCO2削減技術の多くは、補助金や規制による強制なしには産業として成り立たない可能性が高い。実験に成功したとしても、補助金なしに利益を出せる見込みがなければ社会実装は不可能であり、そのような技術開発に国費を投じ続けることは国益を毀損する行為である。
既存技術との圧倒的なコスト差
具体的な例を挙げれば、CCS(二酸化炭素回収・貯留)発電やアンモニア混焼発電のコストは、既存の火力発電の2倍から3倍以上に達すると試算されている(電力中央研究所研究報告EX22013、総合資源エネルギー調査会資料等)。同様の懸念は、メタネーションによるeフューエルを用いたガス事業や、水素自動車、水素還元製鉄、SAF(持続可能な航空燃料)などについても当てはまる。
客観的な評価(フィジビリティスタディ)の徹底と透明化
政府の支援は、補助金を停止して産業として自立させるタイミングや基準を、定量的かつ客観的に定める検討(Feasibility Study)にこそ充てられるべきである。その検討結果を透明性をもって公表し、自立の見込みがある技術にのみ予算を限定すべきである。自立の見込みがない事業については、速やかに廃止を決定する必要がある。
廃止すべき事業の具体例
- 経済産業省所管:グリーンイノベーション基金事業(約2.8兆円規模)
将来的に国民負担を強いるだけの「出口戦略のない技術開発」は、日本版DOGEによる徹底した見直しの対象とされるべきである。
【項目5】課題や対策の異なる複数事業の統合による不透明な情報開示・進捗管理の是正について
個別事業ごとの予算および削減実績開示の必要性
地球温暖化対策計画の進捗状況において、課題や対策が根本的に異なる複数の事業が束ねられ、不透明な形で予算やCO2削減実績が示されている現状がある。
透明性を確保するためには、これらを個別に切り分け、それぞれの予算および実績を明示すべきである。個別のデータが開示されない状況下では、適切な進捗管理(PDCA)の実施は不可能であると言わざるを得ない。
最大規模の施策における情報集約の問題点
特に深刻な問題として、2030年度の削減目標量が3億2,900万t-co2と最大規模に設定されている施策が挙げられる。この施策では、「火力発電の高効率化等」「安全が確認された原子力発電の活用」「再生可能エネルギーの最大限の導入」という、性質の異なる各種電源が一つの項目としてまとめられている。
いかなる理由があるにせよ、進捗を確認するための資料において、課題も対策も異なるこれらの電源を統合して記載すべきではない。
透明性の欠如が招く国益への損失
原因の究明や課題の抽出が必要な現状において、透明性を持ったデータを公表できない事業は、長期的に見て国益を損なう結果を招く。したがって、このように不透明な管理がなされている事業は廃止すべきである。あるいは、直ちに開示方法を改め、健全かつ透明性を持った議論を活性化させる体制を構築すべきである。
【項目6】中国への依存と国益毀損を招く補助金の廃止について
地政学的リスクと人権問題への懸念
太陽光パネルの世界シェアの約9割を中国製が占め、その約半分には新疆ウイグル自治区が関与している。同自治区では強制労働の関与が強く疑われており、米国では強制労働に関与したとされる太陽光パネルの輸入を禁止する措置を講じている。日本がこうした製品に補助金を投じ続けることは、国際的な人権基準に逆行し、地政学的なリスクを高める結果を招く。
環境負荷と品質管理の問題
中国製の太陽光パネルは品質管理の不備も指摘されており、老朽化や廃棄に際して鉛やカドミウム等の有害物質による地下水汚染など、環境負荷増大の懸念が拭えない。また、風力発電においても部品の半分以上が中国製と推計されるほか、電気自動車(EV)に関しても中国企業の競争力が極めて強い状況にある。
日本産業の競争力保護と国益の守護
日本企業は内燃機関において世界屈指の競争力を有している。それに対し、中国企業が優位にある太陽光パネル、風力発電、EVに多額の補助を継続することは、結果として中国を利し、日本の国益を損ねる行為に他ならない。したがって、これらの分野に対する補助金は速やかに廃止すべきである。
廃止すべき事業の具体例
経済産業省所管事業
- 蓄電池の製造サプライチェーン強靭化支援事業:約1兆円超
- クリーンエネルギー自動車導入促進補助金:約3,000億円規模
- 太陽光発電の導入可能量拡大等に向けた技術開発事業:約150億円規模
- 需要家主導型太陽光発電及び再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入促進事業:約100億円規模
- 需要家主導型太陽光発電及び再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業費補助金:約100億円規模
- 家庭用蓄電池等の分散型エネルギーリソース導入支援事業:約100億円規模
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