米国で広がる「ESG成敗」:日本のメディアが報じない「気候カルテル」追及

米国ではここ数年、レッドステート(共和党系州)司法長官らによるESG・脱炭素・気候カルテルへの追及が急速に広がっています。
調査対象は、資産運用会社、銀行、議決権行使助言会社、格付会社、監査法人、CDP・SBTiなどの民間イニシアチブ、大手企業などに及び、さらには裁判官向け気候教育まで追及されています。内容も、独占禁止法、消費者保護法、利益相反、監査人の独立性、受託者責任など多岐にわたります。筆者が把握している主な案件を時系列で一覧表にまとめました。
米国におけるESG・脱炭素成敗の一覧
| 時期 | 実施主体 | 主な対象組織・イニシアチブ | 概要 | リンク |
| 2023年1月 | テキサスなど25州司法長官 | 米労働省(DOL)のESG投資規則 | ・従業員退職所得保障法(ERISA)違反/行政手続法違反 | テキサス州司法長官2023年1月26日付リリース |
| 2023年9月 | ネブラスカなど22州司法長官 | NZFSPAの署名機関 | ・独占禁止法/消費者保護法違反 | ネブラスカ州司法長官2023年9月13日付リリース |
| 2024年1月 | テキサス州司法長官 | バークレイズ | ・ネットゼロ方針・化石燃料企業ボイコットに関する質問に回答せず
→州の地方債引受市場から排除 |
テキサス州司法長官2024年1月26日付リリース |
| 2024年6月 | 米下院司法委員会 | CA100+、GFANZ、Ceres、ブラックロック等 | ・気候カルテルによる共謀/談合 | 米国下院司法委員会2024年6月11日付リリース |
| 2024年11月 | テキサスなど11州司法長官 | ブラックロック、ステート・ストリート、バンガード | ・市場操作
・共謀 |
テキサス州司法長官2024年11月27日付リリース |
| 2025年1月 | テキサスなど11州司法長官 | ブラックロック、ゴールドマンサックス、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、モルガン・スタンレー | ・ESG・DEI推進が法的・契約上・受託者責任上の義務に違反 | テキサス州司法長官2025年1月23日付リリース |
| 2025年7月 | フロリダ州司法長官 | CDP、SBTi | ・独占禁止法/消費者保護法違反 | フロリダ州司法長官2025年7月28日付リリース |
| 2025年8月 | アイオワなど23州司法長官 | SBTi | ・独占禁止法/消費者保護法違反 | アイオワ州司法長官2025年8月8日付リリース |
| 2026年1月 | フロリダなど6州司法長官 | Ceres | ・独占禁止法/消費者保護法違反
・「気候カルテルの首謀者」と名指し |
フロリダ州司法長官2026年1月21日付リリース |
| 2026年4月 | ネブラスカなど23州司法長官 | フィッチ、ムーディーズ、S&Pグローバル | ・利益相反
・独占禁止法/消費者保護法違反 |
ネブラスカ州司法長官2026年4月22日付リリース |
| 2026年4月 | フロリダ州司法長官 | ELI、Climate Judiciary Project | ・裁判官向け気候変動活動教育がFDUTPA違反 | フロリダ州司法長官2026年4月16日付リリース |
| 2026年4月 | フロリダ州司法長官 | ユニリーバ、コカ・コーラ、ネスレ等+環境団体 | ・環境方針を巡る協調・取引制限・価格上昇に関する独禁法違反 | フロリダ州司法長官2026年4月21日付リリース |
| 2026年8月 | ネブラスカなど16州司法長官 | デロイト、EY、PwC、KPMG | ・独立性義務違反
・利益相反 |
ネブラスカ州司法長官2026年8月24日付リリース |
米国下院司法委員会は金融機関による脱炭素強要を「気候カルテル」と呼び、フロリダ州司法長官はCeresを「気候カルテルの首謀者」とまで名指ししています。テキサス州はBlackRock、State Street、Vanguardを提訴し、フロリダ州はCDPとSBTiを独禁法違反・消費者保護法違反の疑いで調査中。ネブラスカ州などはFitch、Moody’s、S&P、さらにデロイト、EY、PwC、KPMGに対して利益相反の疑いをかけています。
ところが日本では、こうした米国の動きがまったくと言っていいほど報じられません。
日本企業の環境・サステナビリティ担当者と話していても、「そんなことが起きているのですか」「どうせトランプがいなくなったら収まるのでしょう」といった反応ばかりです。無理もありません。日本ではほとんど報道されていないのですから。連日、脱炭素・ESG対応を求めるニュースが大量に届く一方、その制度や推進団体が米国で独禁法や利益相反の観点から追及されている事実は一切伝わってきません。
そこで、マスメディアの皆さんにこの一覧表をご提供いたします。
筆者は日本国内に住むただのサラリーマンです。海外のプレスリリースを読むくらいはできますが、これ以上追いかけるのは無理があります。もちろん海外支局や特派員などのつながりもありません。
ここから先は、ぜひプロの記者の皆さんに取材していただき、正確な情報を日本国内にも報道してもらいたい。「ESGは正しいことだから」「脱炭素は世界の潮流だから」といった表面的な報道で終わらせず、誰が制度をつくり、誰が儲け、誰がコストを負担させられ、その活動が法的にどこまで許されるのかなど、ESG・脱炭素を巡る本質的な議論を日本の産業界にも届けていただきたいのです。
この一覧表は転載自由です。筆者やアゴラ編集部への断りも不要です。どんどん使ってもらって構いません。メディアに限らず、大学の先生や学生の卒業論文、企業担当者のプレゼン資料など、どなたでもご自由にお使いください。
そして、リンク先にある司法長官らの追及内容を、日本企業の経営層やサステナビリティ部門担当者へ知らせてください。
あとはプロの皆さんにお任せします。よろしくお願いします。
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