今週のアップデート — 原発のあり方への議論へ(2012年6月4日)
野田佳彦首相は5月30日に開催された「原子力発電所に関する四大臣会合」 に出席し、関西電力大飯原子力発電所3、4号機の再稼働について「総理大臣である私の責任で判断する」 と語りました。事実上、同原発の再稼動を容認するものです。
関西では原発を稼動させなければ、今年夏のピーク時点で15%の電力が不足すると見込まれていました。悪影響を避けるためには再稼動は当然の結論でした。しかし稼動の是非について政治的な論争が生じ、その実行が遅れました。
GEPRは再稼動をきっかけに、原発の是非をめぐる国内の混乱が落ち着き、エネルギー政策のあり方をめぐる冷静な議論が広がることを期待します。
1)「電力自由化の条件:通信自由化の教訓」という論文を、GEPRを運営するアゴラ研究所の池田信夫所長が寄稿しました。日本では電力会社の地域独占の見直しが検討されています。この論文は、日本で電電公社を民営化した1980年代の経緯を振り返っています。教訓として、通信自由化では第二電電などの企業を国が支援して、競争を促しました。今の電力自由化では、新規参入者が見当たらず、競争が生じない問題があることを指摘しています。
2)「食品中の発がん物質と放射性物質のリスク評価 — 福島原発事故の影響を考える」というコラムを、国立医薬品食品衛生研究所の畝山智香子氏に寄稿いただきました。食品は実は未知のリスクがたくさんあります。そして現在分かっている範囲からみると、福島の原発事故の影響は、他のリスクに比べて、飛び抜けて高い訳ではないことを指摘しています。
3)アゴラ研究所フェローでジャーナリストの石井孝明は「メディアが醸成した「放射能ストレス」(上)― 感情的な報道の生んだ人権侵害」「(下)― 死者ゼロなのに大量の報道、なぜ?」を寄稿しました。福島原発事故の後の報道の混乱をまとめています。
4)GEPRはNPO法人国際環境経済研究所(IEEI)と提携し、相互にコンテンツを共有しています。民間有志からつくる電力改革研究会のコラム「日本の電力網が「くし形」である理由−「電力会社の陰謀で連系が弱い」は本当か?」を提供します。日本の電力会社の電力網の結びつきが弱く、これは販売電力量の減少を嫌った電力会社の陰謀だという指摘が出ました。震災後の停電で出ました。この論考では、それが事実と違うことを説明しています。
今週のリンク
1)「夏の電力対策 産経「原発で安定供給図れ」節電と再稼働で論調は二分」(産経新聞 5月28日記事)。産経新聞は5月末時点での日本の各新聞の社説を紹介しています。産経、日経、読売が電力不足に懸念を示す一方で、朝日、東京中日は節電を奨励。それは再稼動への態度へも影響し、前者がそれを求める一方で、後者はそれに反対する態度を示しています。
2)「大飯再稼働、6月上旬にも決定…関西首長容認で」(5月30日、読売新聞)。関西の自治体首長などによる関西広域連合が、再稼動を容認したことが政府の決断をうながしました。再稼動反対で世論の注目を集めていた橋下徹大阪市長が反対の姿勢を示したことも一因です。読売新聞は「大飯再稼働へ「容認」とは福井県に失礼だ」(6月1日社説))で、関西の混乱を批判しています。
3)「IEA、シェールガスの新ルールを提示」。米国の雑誌ナショナルジオグラフィック、日本ウェブ版。米国で起こっているシェールガスの採掘の増加への、期待と懸念を伝えています。
今週の論文
1)経済産業省・資源エネルギー庁は、基本問題委員会(同会ホームページ)で、電力の未来についての検討を進めています。その中の第25回会議(12年5月28日開催)の資料「経済影響分析を巡る論点」では、これまでの議論を踏まえて、原発の発電割合を、0%、15%、20〜25%、35%にした場合の、経済の影響について、民間5チームの2030年時点の試算を公表しています。原発0%のとき、2010年比でいずれもGDPが2%減少などの結果が出ています。
2)日本経済研究センター「全原発停止なら年7兆円の経済損失も―火力代替で17年度にも経常赤字に」。中期経済予測(2011-2020 年度)をまとめています。また同センターは2011年会報6月号「火力代替で所得流出4兆円も」(リンクのカテゴリで「会報」を検索)をまとめています。
3)IEAは「ガス黄金時代には「黄金ルール」が必要」というリポートを発表しています。(IEAによる解説記事とリポート本文へのリンク)
これは、毎年11月に発表されるIEAの「世界エネルギー調査」特別リポートの位置づけを持っています。
4)エネルギー経済研究所の小山堅主席研究員が一般向けに解説記事「国際エネルギー情勢を見る目(89)IEA、「ガス黄金時代」に関する最新特別レポートを発表」を公開しています。
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