過激な原子力批判、真意を聞く−河野太郎議員

2016年12月29日 13:29

河野太郎衆議院議員(自民党)は電力業界と原子力・エネルギー政策への激しい批判を繰り返す。そして国民的な人気を集める議員だ。その意見に関係者には反論もあるだろう。しかし過激な主張の裏には、「筋を通せ」という、ある程度の正当性があり、彼の言葉に一定数の支持が集まる。主張の真意を聞いた。

%e4%be%9d%e9%a0%bc%e5%86%99%e7%9c%9f-sプロフィール・1963年、神奈川県生まれ。慶応大学経済学部、米ジョージタウン大卒。富士ゼロックスなどを経て1996年に衆院神奈川15区(同県平塚市、茅ヶ崎市など)で当選。以後、当選7回。父は河野洋平元衆議院議長。15年10月から16年8月まで、国家公安委員長、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全、規制改革、防災)。著書に「原発と日本はこうなる」「『超日本』宣言―わが政権構想」(いずれも講談社)など多数。

行革相として原発予算にメス

「電気事業連合会は反社会的勢力だ」。河野太郎議員は開口一番、電力業界を批判した。「過激ではないか」と懸念を述べると、その真意を説明し始めた。

河野氏によれば、電事連は任意団体であるという理由で、財務も活動の詳細も明らかにしていないない。「金を使って影響力をおよぼそうとするが、説明責任や社会的責任をまったく果たしていない」。異論のある人はいるだろうが、これが彼の認識だ。

当然、核燃料サイクルや放射性廃棄物の取り扱い、福島第一原発事故の処理などについての見方も厳しい。「国民に正しい情報が開示されていない」「政策に合理性がなく、国民の税金を無駄に使ってきた」。経済産業省、電力業界への批判は止まらない。

河野氏は15年8月から10カ月、行政改革担当大臣になった。そこでこれまでの問題意識を反映させて、原子力政策をめぐる税の使い方にメスを入れた。

原発をめぐって支出される交付金の透明化、支出した予算が、効果があるかPDCAサイクルを回して使う、ほとんど使われなかった使用済み核燃料の運搬船「開栄丸」の廃船を決めるなどだ。これは多くの人の支持を集め、原子力関係者からも目立った異論は出なかった。

福島第一原発の事故後の賠償そして福島第一原発事故の処理方法にも疑問を示した。事故後の処理・賠償費用を補うために、負担を電力託送料金に上乗せし、また税金からの支出を増やす案を経産省は16年12月に公表した。「上場会社である東京電力は、自ら責任を取っていないのに、なぜ税金が投入されたり、消費者に負担が押しつけられたりするのか」。河野氏は問題外というスタンスだ。

核燃料サイクルの非合理性

河野氏は、核燃料サイクル政策への批判を続ける。その主張を要約してみよう。

  • 高速増殖炉の商業利用に赤信号が点る。その中で、日本が開発を固執する理由はない。
  • 英国とフランスに委託してきた再処理により、日本の保有するプルトニウムは47トンになる。「もんじゅ」の廃炉が決まり、プルトニウムを発電に使うなど合理的に利用することが当面できない。
  • その中で六ヶ所村の再処理工場を動かせば、新たなプルトニウムが生み出されることになる。経産省と電力会社は、プルサーマル(ウランとプルトニウムの混合燃料を原子炉の燃料にする)をウラン資源のリサイクルなどとごまかす。しかしそのコストは高くなり、経済的合理性はまったくない。
  • 核燃料サイクルも巨額の資金がかかる。これまで電力会社は原発立地自治体に対して、使用済み核燃料は地元に残さないと約束してきた。そしてその燃料を持ち込んだ青森県に対しては、再処理してプルトニウムを取り出せる資産だと説明してきた。もし再処理をやらなければ、青森県から使用済み核燃料を持ち出さなければならないが、現時点では持っていく先がない。だから仕方なく再処理を続けようとしている。
  • 青森県に使用済み核燃料を移動できなければ、原発の燃料プールはまもなくいっぱいになり、原発が止まる。「使用済み核燃料の持っていく先がないから再処理、核燃料サイクルを行う」などという本末転倒な政策に、莫大なコストをかけて突き進んでいる。きちんと青森県に謝罪し、青森県を最終処分地にしない。使用済み核燃料の保管料を支払うという説明をすべきだ。

こうした河野氏の主張には、一理ある。もちろん反論もあるだろう。原子力政策、核燃料サイクルをめぐる議論では感情的な反対論を警戒するために、河野氏のような、一理ある主張を議論のテーブルに載せ、政策としてこなかった面がある。

河野氏の意見に耳を傾ける時

「筋を通せ、政策は合理的に、議論の機会を設け、情報を公開しろと、私は当たり前のことを言っている」と河野議員は強調する。

ただし合理的な主張は一貫し、現実主義者でもある。「電力自由化の時代、原子力の足かせが外れた方が電力会社も自由にビジネスができるはず」「未来のエネルギーは、石油石炭は、使えない。今原発をすぐに全部なくすことは無理かもしれないが、40年計画でフェードアウトさせ、再エネと天然ガスの時代を考える必要がある」。

原子力への世論は厳しい。そして与党自民党内でも、その主張はじわりと支持を広げているようだ。河野議員の訴えるエネルギー・原子力の未来に、どの立場の人も真摯に耳を傾けるべき時なのかもしれない。

(編集・石井孝明 ジャーナリスト、GEPR編集者)

(この記事はエネルギーフォーラム12月号の記事を、一部修正の上転載します。許諾をいただいた関係者の方に感謝を申しあげます。)

This page as PDF

関連記事

  • 割高な太陽光発電等を買い取るために、日本の電気料金には「再生可能エネルギー賦課金」が上乗せされて徴収されている(図)。 この金額は年々増え続け、世帯あたりで年間1万円に達した注1)。 これでも結構大きいが、じつは、氷山の
  • 「40年問題」という深刻な論点が存在する。原子力発電所の運転期間を原則として40年に制限するという新たな炉規制法の規定のことだ。その条文は以下のとおりだが、原子力発電所の運転は、使用前検査に合格した日から原則として40年とし、原子力規制委員会の認可を得たときに限って、20年を越えない期間で運転延長できるとするものである。
  • 福島原発事故において、地震によって原子炉の主要設備が破壊されたのではないかという懸念が、社会に広がっている。こうした懸念が、原子力規制委員会による過剰ともいえる地震対策や、原子力発電への不安につながっている。この小論が、そうした懸念を払拭する一助になればと思う。
  • 大阪のビジネス街である中之島で、隣接する2棟のビルの対比が話題という。関西電力本社ビルと朝日新聞グループの運営する中之島フェスティバルタワーだ。関電ビルでは電力危機が続くためにその使用を減らし、夏は冷暖、冬は暖房が効かない。
  • 2013年9月15日に大飯発電所4号機が停止して全原子力発電所が停止して以来、既に1年5ヵ月間我が国にある48基の原子力発電所は休眠状態に置かれている。このため、代替電源の燃料費としてこの4年間(2011年~2014年)に12.7兆円もの国費が海外に流出した。消費税5%に相当する巨額な金額である。アベノミクスでいくら経済を活性化しても、穴の開いたバケツで水を汲んでいるに等しい。
  • 世界はカーボンニュートラル実現に向けて動き出している。一昨年、英グラスゴーで開催されたCOP26終了時点で、期限付きでカーボンニュートラル宣言を掲げた国・地域は154にのぼり、これらを合わせると世界のGDPの約90%を占
  • 中東発のエネルギー危機を受けて、世界、とくにアジア太平洋諸国で、石炭への回帰が加速している。以下、主に報道ベースであるが、紹介しよう。なお情報源リンクは長くなるのでこちらを参照されたい。 第1に、既存の石炭火力の稼働率を
  • 環境保護局(EPA)が2014年6月2日に発表した、発電所からのCO2排出量を2030年までに2005年に比べて30%削減することを目標とした規制案「クリーン・パワー・プランClean Power Plan」。CO2排出削減の目標達成の方法として、石炭火力から天然ガス火力へのシフト、既存発電技術の効率向上、省エネ技術の導入による促進などとともに、再生可能エネルギーや原子力発電などの低炭素電源を開発していくことが重要施策として盛り込まれている。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑