PV expoから見るポストFITサービス
2/27から3/1にかけて東京ビッグサイトにおいて太陽光発電の展示会であるPV expoが開催された。
ここ2年のPVexpoはFIT価格の下落や、太陽光発電市場の縮小を受けてやや停滞気味だったが、今年は一転「ポストFIT」を見据えてこれまでにないアプローチの展示が増え、苦境の中でも新しい市場を切り開いていこうという業界の強い意志が見られて大変見所が多かった。
このコラムでは何度か「ポストFIT」の住宅太陽光発電事業の経済性について議論してきたところであるが、今回は視点をより将来に移して、PV expoの中で当方が独断と偏見で選んだ「時代を先取りしたサービス」を紹介することにしたい。なお予め言っておくが本記事は広告記事ではない。
本題に入るが、今回紹介するのは、東京電力パワーグリッド(以下「東京電力PG」)とインフォマティクス社が共同して進めている「うちワケ」という卒FIT太陽光発電システムを抱える住宅向けの宅内IoTサービスだ。
上の写真は東京電力PGがPvexpoで掲げていたパネルだが(画像はPv expoでの同社の頒布資料を画像化した)、この「うちワケ」というサービスの特徴は、目的の明確さと、機器構成のシンプルさにある。
目的に関しては「家庭での電力の販売―使用状況を、負荷レベルまで落としこんで明らかにする」ということに特化しており、機器構成は分電盤に「インフォマティクス社の電力センサーを取り付けるのみ」である*。施工・設定も20分程度で済むとのことだ。(*マンションの高圧一括受電の場合はPLCでの通信アダプタも必要になる)
この電力センサーは4チャンネルの入力口が用意されており、このうち2chで家庭内の電力使用状況を解析するための基礎情報を取得し、残りの2chは太陽光発電や蓄電池などの外部電源と接続することが想定されている。こうして取得された家庭での電力の使用情報は、東電PGとインフォマティクス社の合弁会社であるエナジーゲートウェイ社が提供するIoTプラットフォームのAI基盤により解析され、個別の家電・負荷レベルにまで使用情報が分解される。もちろん解析結果は、以下のようなシンプルな画面でスマホやタブレットで確認可能だ。

(Pv expoにおいて筆者撮影)
留意点を言えば、負荷別の電力使用情報は直接個別の家電から電力消費情報を取得しているわけではなく、あくまで一定のアルゴリズムによって推測がなされるにすぎないので、正確なものではなく担当者によれば「だいたい80%くらいの正確性」に留まるという点であろう。ただそれでも家の電力消費パターンの傾向を掴むには十分であろうし、また今後性能が向上する中で改善していくことも見込まれる。
この「うちワケ」を利用した今後のビジネス展開の方向について聞いてみたところ、担当者は「こうした電力使用情報提供サービス自体でユーザーからサービス料を取るというよりも、このプラットフォームで取得できる情報を活用し、他業種と連携したサービスを作り出すことを主眼に置いている」と話していた。

(“うちワケ”パンフレットより筆者作成)
これはあながち絵空事というわけではなく、実証実験の段階ですでに「電力消費情報を見ていたら、家に誰もいないはずの時間帯でテレビが使われていて、子供が学校をサボっていることが判明した」「家電の消費パターンを変えることで太陽光発電の自家利用を増やした」というような声が上がってきているそうだ。こうした利用方法は、現在ユーザーの自助努力で行われているわけだが、他のサビース業種と本格的に連携すれば、見守り、エネルギーマネジメント、故障検知、など様々な可能性が生まれていくことになるだろう。
余談ではあるが、東日本大震災以来暗いニュースが多かったであろう東京電力PGにおいてこのような新しい動きが起きていることを知り、改めて社会全体として次世代のエネルギー産業を作り出す時期に来ているのだな、と強く感じ大変感慨深かった。随所で指摘されていることだが2019年は「次世代エネルギー産業元年」になるのかもしれない。

関連記事
-
2018年4月8日正午ごろ、九州電力管内での太陽光発電の出力が電力需要の8割にまで達した。九州は全国でも大規模太陽光発電所、いわゆるメガソーラーの開発が最も盛んな地域の一つであり、必然的に送配電網に自然変動電源が与える影
-
ここ数回、本コラムではポストFIT時代の太陽光発電産業の行方について論考してきたが、今回は商業施設開発における自家発太陽光発電利用の経済性について考えていきたい。 私はスポットコンサルティングのプラットフォームにいくつか
-
カリフォルニア州の電気代はフロリダよりもかなり高い。図は住宅用の電気料金で、元データは米国政府(エネルギー情報局、EIA)による公式データだ。同じアメリカでも、過去20年間でこんなに格差が開いた。 この理由は何か? 発電
-
2023年4月15日(土曜日)、ドイツで最後まで稼働していた3機の原発が停止される。 ドイツのレムケ環境大臣(ドイツ緑の党)はこの期にご丁寧にも福島県双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」を訪れ、「福島の人々の苦しみ
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンク、GEPRはサイトを更新しました。
-
上記IEAのリポートの要約。エネルギー政策では小額の投資で、状況は変えられるとリポートは訴えている。
-
先日、「ESG投資がインデックス投資よりもCO2を排出?」という記事を書きました。Investment Metrics社のレポートで「欧州の気候変動ファンドがMSCIワールド・インデックスよりも炭素排出量への影響が大きい
-
国境調整炭素税を提唱したフォンデアライエン次期欧州委員長 先般、次期欧州委員長に選出されたフォンデアライエン氏は今後5年間の政策パッケージ案において6つの柱(欧州グリーンディール、人々のために機能する経済、デジタル時代へ
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間