今週のアップデート — 福島海洋汚染は危険か?科学的実証(2013年10月7日)
今週のアップデート
1)原発事故、海は危険なのか?— 福島近隣海域における放射能汚染の変遷
福島原発事故で流れ出る汚染水への社会的な関心が広がっています。その健康被害はどのような程度になるのか。私たちへの健康について、冷静に分析した記事がありません。
海洋生物環境研究所は、事故前から各地の原発周辺の海洋の放射能を計測してきました。そこで研究を続ける、日下部正志参与、博士(水産学)に、現状の分析をうかがいました。
日下部氏によれば、現在は漏洩が続いている可能性があり、その監視が必要です。しかし、これによる水産物の汚染、それを食べることによる健康被害の可能性は、現時点でかなり少ないないそうです。
2)エネルギー政策の混迷をもたらしている地球温暖化対策(上)— 対策の一つ原子力の検証
提携する国際環境経済研究所(IEEI)がサイトに掲載した久保田宏東工大名誉教授の論考です。地球温暖化問題の現状から、その対策の一つとされる原発について、その意味を分析しています。
原子炉の廃炉技術の情報を集積・研究する「国際廃炉研究開発機構」(理事長・山名元京大教授、東京、略称IRID)が9月の海外専門家による原発視察の映像を公開。今は立ち入りが制限されています。映像から、汚染水タンクの大きさ、そして原発構内の片付けが進んで整理されているということがうかがえます。
今週のアップデート
1) 異議申し立ての却下に対する当社コメント(日本原電)その1、その2
原子力規制委員会は日本原電の敦賀原発2号機の下に活断層があると認定し、同社に報告を求めました。それに原電は活断層ではないという異議申し立てを行っていました。それについて同委員会は、申し立てを却下しました。(日経、10月3日記事)それについての日本原電のコメントです。この認定は、同社の原子炉を廃炉としかねません。「行政機関による不誠実、不当な決定」という批判を原電はしています。同委員会は慎重な対応が必要でしょう。
時事通信10月1日配信記事。小泉首相が脱原発をめぐる発言を繰り返していることについての菅義偉官房長官の発言です。波紋が広がっているものの、明確な政治勢力の結集とはなっていないために、小泉氏の主張は力にはならないでしょう。しかしエネルギーをめぐる議論の深化は必要です。
3) 地元を離れ東京で争う関電×大ガス×中部電–巨大電力市場に食い込めるか?
産経新聞10月6日記事。原発事故を東電が起こし、動けなくなったために、他地域のエネルギー企業の首都圏への進出が目立ちます。電力・ガスは協調する動きが多く、静かな産業でした。競争によってその姿が変わるのでしょうか。注目すべき動きです。
4) 原発なしの日本は世界にとって大災難である(英語)
米国の外交誌EIR(Exective Intelligence Review)に掲載された、同誌インド人編集者Ramtanu Maitra氏の寄稿です。原題は「Japan Without Nuclear Energy
Is a Disaster for the World」。世界の原発の重要技術で、日本の重工業が大きな役割を果たしていることを指摘し、その原発を維持すること求めています。方針の転換を述べています。日本製鋼所(JSW)の鋳造、日立、IHIの原発関連機器の技術を紹介しています。
イスラエルのネタニヤフ首相は10月1日の国連総会演説で、「イランは「羊の衣をまとった狼」だ。甘い言葉を信用してはいけない。核兵器開発を狙っているのは間違いない」と批判しました。これを巡り、ニューヨーク・タイムズの著名外交記者のトーマス・フリードマン氏がコラムを書いています。「大きな北朝鮮」ではなく、「中東の中国」を目指すのが合理的な政策だが、いずれでも米国と世界には危険だという趣旨のコラムです。イラン情勢は、日本のエネルギー供給にも結びつきます。

関連記事
-
はじめに述べたようにいま、ポスト京都議定書の地球温暖化対策についての国際協議が迷走している。その中で日本の国内世論は京都議定書の制定に積極的に関わった日本の責任として、何としてでも、今後のCO2 排出枠組み国際協議の場で積極的な役割を果たすべきだと訴える。
-
みなさんこんにちは。消費生活アドバイザーの丸山晴美です。これから、省エネやエコライフなど生活に密着した役立つお話をご紹介できればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
-
前回の投稿においてG20エネルギー移行大臣会合の合意失敗について取り上げたが、その直後、7月28日にチェンナイで開催されたG20環境・気候・持続可能大臣会合においても共同声明を採択できす、議長サマリーを発出して終了した。
-
中国で石炭建設ラッシュが続いている(図1)。独立研究機関のGlobal Energy Monitor(GEM)が報告している。 同報告では、石炭火力発電の、認可取得(Permitted) 、事業開始(New projec
-
東京新聞によれば、学術会議が「放射性廃棄物の処理方法が決まらない電力会社には再稼動を認可するな」という提言を17日にまとめ、3月に公表するらしい。これは関係者も以前から懸念していたが、本当にやるようだ。文書をみていないので確かなことはいえないが、もし学術会議が核廃棄物の処理を条件として原発の運転停止を提言するとすれば違法である。
-
先日、日本の原子力関連産業が集合する原産会議の年次大会が催され、そのうちの一つのセッションで次のようなスピーチをしてきた。官民の原子力コミュニティの住人が、原子力の必要性の陰に隠れて、福島事故がもたらした原因を真剣に究明せず、対策もおざなりのまま行動パターンがまるで変化せず、では原子力技術に対する信頼回復は望むべくもない、という内容だ。
-
地震・津波に関わる新安全設計基準について原子力規制委員会の検討チームで論議が進められ、その骨子が発表された。
-
検証抜きの「仮定法」 ベストセラーになった斎藤幸平著『人新世の「資本論」』(以下、斎藤本)の特徴の一つに、随所に「仮定法」を連発する手法が指摘できる。私はこれを「勝手なイフ論」と命名した。 この場合、科学的な「仮説」と「
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間