エセ科学に基く脱炭素はサブプライムローンに似る(下)
前回の上巻・歴史編の続き。脱炭素ブームの未来を、サブプライムローンの歴史と対比して予測してみよう。

Lemon_tm/iStock
なお、以下文中の青いボックス内記述がサブプライムローンの話、緑のボックス内記述が脱炭素の話になっている。
<下巻・未来編>
5. 現実の壁に跳ね返されてバブルが崩壊する
サブプライムローンは当然のことながら多くの焦げ付きを起こして破綻した。もともと返済能力の無い人に無理に高い買い物をさせていたのだから、当たり前だ。
いまは脱炭素などと言っているが、脱炭素とは石油もガスも石炭も禁止するということだから、そもそも出来るはずがない。2050年まであと29年しかないので猶更だ。強引に目指すと莫大な費用がかかるので庶民の抵抗に遭い、そのような政策は現実には導入できない。
いまコロナ後の金融緩和を受けて「グリーンな企業」の株も高値で買われているが、このグリーンな企業の持つ技術は未熟で高価なものばかりであり、政府の補助金や規制がないと事業性が無い。したがって政策が導入されないと分かったとき、いま膨れ上がっている脱炭素バブルは崩壊する。
6. ツケは全て庶民に回す
リーマン・ブラザースは破綻したが、他の多くの投資銀行や証券会社は金融システム全体への影響が懸念されたことから「大きすぎて潰せない」として政府が救済した。庶民の巨額の税金がこのために使われた。
既にぼろ儲けをしてお金を貯めこんだ人々がそれを返したという話は聞いたことがない。
サブプライムローンを借りた人々の多くは巨額の借金を抱えたり、自己破産したりして、生活は苦しくなり、マイホームの夢は断たれてしまった。
庶民はすでに再生可能エネルギーや電気自動車への補助金、エネルギーへの課税などで巨額の負担をしている。
この負担額はこれからうなぎ上りに増えてゆく。
耐えかねた庶民の反対によって税や規制の導入が止まると、今度はグリーンバブルが崩壊して、また投資銀行や証券会社が救済の対象になるのかもしれない。
脱炭素バブルの害毒を逃れる方法は
いまのところ、ESG投資ファンドといってもその中身(銘柄の選択)は普通の投資ファンドとあまり変わらず金儲け優先であって(藤枝氏記事)、つまり切れ味が悪いので害毒は少ない。またグリーンボンドといってもボンド(債権)市場の2%程度と、ごく一部に過ぎない(藤井良広著、前掲)。
けれども金融機関は民間・公的を問わずCO2の規制強化や炭素税の導入を政府に要求しており、グリーンバブルがいよいよ本格化するかもしれない。
この「未来編」のごとき悪夢の様なシナリオを避けるにはどうすればよいか。直ちに脱炭素バブルの正体を白日の下に晒し、早々にそれを崩壊させることだ。膨らめば膨らむほどにバブルは危険なものになる。バブル拡大の過程で儲けを貯めこむ少数の人もいるが、やがてそのツケは圧倒的多数の庶民が背負うことになる。
■

関連記事
-
少し旧聞となるが、事故から4年目を迎えるこの3月11日に、原子力規制庁において、田中俊一原子力規制委員会委員長の訓示が行われた。
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 IPCCの報告では、20世紀に起きた地球規模での気温上昇
-
2014年12月4日、東商ホール(東京・千代田区)で、原子力国民会議とエネルギーと経済・環境を考える会が主催する、第2回原子力国民会議・東京大会が、約550名の参加を得て開催された。
-
東洋経済オンラインに掲載された細野豪志氏の「電力危機に陥る日本「原発再稼働」の議論が必要だ」という記事は正論だが、肝心のところで間違っている。彼はこう書く。 原発の再稼働の是非を判断する権限は原子力規制委員会にある。原子
-
他方、六ヶ所工場に関連してもう一つ、核不拡散の観点からの問題がある。すなわち、はっきりした使途のない「余剰プルトニウム」の蓄積の問題である。
-
バイデン大統領は1.5℃を超える地球温暖化は「唯一最大の、人類の存亡に関わる、核戦争よりも重大な」危機であるという発言をしている。米誌ブライトバートが報じている。 同記事に出ている調査結果を見ると「人類存亡の危機」という
-
「インフレ抑止法」成立の米国・脱炭素の現状 8月16日、米国のバイデン大統領は、政権の看板政策である気候変動対策を具体化する「インフレ抑止法」に署名し、同法は成立した。 この政策パッケージは、政権発足当初、気候変動対策に
-
2020年はパリ協定実施元年であるが、世界はさながら「2050年カーボンニュートラル祭り」である。 パリ協定では産業革命以後の温度上昇を1.5度~2度以内に抑え、そのために今世紀後半に世界全体のカーボンニュートラルを目指
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間