ナイジェリア大統領、経済成長を奪う脱炭素に反論

hadynyah/iStock
先進国の「脱炭素」押し付けでアフリカの経済成長の機会を奪ってはならない。
ナイジェリア大統領のムハンマド・ブハリがニューズウィークに書いている。
例によって日本のメディアは無視を決め込んでいるので、抄訳して紹介しよう。
いま最も流行している風力発電や太陽光発電は、不安定だという欠点があります。
安定した電力が供給されなければ、アフリカを低雇用の採掘産業主導の経済から高雇用の中所得の大陸へと発展させるための工場を建設することはできません。子どもたちは、電池の光では、ろうそくの光よりも長く学ぶことができません。今日のアフリカと同様に、明日のアフリカも、不安定なエネルギー供給では発展できません。
しかし気候変動問題への対応を急ぐあまり、そして欧米の援助機関や投資家が環境に配慮していることをアピールする目的に資するため、私たちは最も信頼性の低い代替エネルギーの導入を急いでいます。
また世界的な電気自動車ラッシュの中で、前世紀の化石燃料争奪戦に代わって、新たに電池用リチウム争奪戦が始まることの危険性は、あまり知られていないようです。アフリカで大規模な鉱床が発見された場合、地政学的な安定性が損なわれる可能性があります。そうなると、大量の難民が発生するかもしれない。
私たちは、化石燃料の使用をすぐに止めようとすることが、果たして賢明なことなのかどうか、よく考えなければなりません。
まずは、よりクリーンで安定したエネルギー生産への移行から始めなければなりません。これには、CCSやバイオマス、水力発電所などの技術があります。
原子力にも投資することができます。再生可能エネルギーではありませんが、カーボンニュートラルであり、持続的な経済発展を可能にするベースロード電力を供給することができます。ナイジェリアは、アフリカで原子力発電を検討している数少ない国のひとつで、すでに研究用原子炉が稼働しています。
私たちはヨーロッパやアメリカの友人たちからも「学ぶ」ことができます。彼らは自分たちが説いたことを必ずしも実践しているわけではありません。
私たちは、アフリカでの化石燃料投資のモラトリアムを解除するよう求めます。
ナイジェリアは、石油産業の副産物であるガスフレア(=余剰ガスの燃焼)を2030年までに回収し発電に利用することを約束しています。ナイジェリアの最大の温室効果ガス排出源はこのガスフレアなのですが、投資なくしては解消できません。
その一方で、欧米では、天然ガス発電への投資にそのような制限はありません。
■
先進国は「脱炭素」と言って、アフリカが化石燃料を使って経済成長する機会を奪っている。太陽風力では産業は発展出来ない。そのくせ先進国は今なお天然ガス火力に頼っている。穏やかな文面ながら、先進国の独善、偽善への憤りが感じられる。
日本は、この呼びかけに答えて、ナイジェリアの化石燃料開発に手を貸すべきではないのか?
■

関連記事
-
東京都の資料「2030年カーボンハーフに向けた取り組みの加速」を読んでいたら、「災害が50年間で5倍」と書いてあった: これを読むと、「そうか、気候変動のせいで、災害が5倍にも激甚化したのか、これは大変だ」という印象にな
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクであるGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
アゴラ研究所は、9月27日に静岡で、地元有志の協力を得て、シンポジウムを開催します。東日本大震災からの教訓、そしてエネルギー問題を語り合います。東京大学名誉教授で、「失敗学」で知られる畑村洋太郎氏、安全保障アナリストの小川和久氏などの専門家が出席。多様な観点から問題を考えます。聴講は無料、ぜひご参加ください。詳細は上記記事で。
-
アゴラ研究所の運営するエネルギー研究機関のGEPRはサイトを更新しました。 1)【アゴラシンポジウム】成長の可能性に満ちる農業 アゴラは12月に農業シンポジウムを行います。石破茂自民党衆議院議員が出席します。詳細はこのお
-
先日、朝日新聞の#論壇に『「科学による政策決定」は隠れ蓑?』という興味深い論考が載った。今回は、この記事を基にあれこれ考えてみたい。 この記事は、「世界」2月号に載った神里達博氏の「パンデミックが照らし出す『科学』と『政
-
処理水の放出は、いろいろな意味で福島第一原発の事故処理の一つの区切りだった。それは廃炉という大事業の第1段階にすぎないが、そこで10年も空費したことは、今後の廃炉作業の見通しに大きな影響を与える。 本丸は「デブリの取り出
-
JBPress11 月25日。池田信夫氏寄稿。東電問題をめぐる解決策。
-
よく日本では「トランプ大統領が変人なので科学を無視して気候変動を否定するのだ」という調子で報道されるが、これは全く違う。 米国共和党は、総意として、「気候危機説」をでっちあげだとして否定しているのだ。 そしてこれは「科学
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間