今週のアップデート — 福島の除染、見えない解決(2013年6月10日)
今週のアップデート
1)福島の除染「1ミリシーベルト目標」の見直しを(上)— 意味はあるのか
2)福島の除染「1ミリシーベルト目標」の見直しを(下)— パニックが政策決定に影響
福島の1ミリシーベルトの除染問題について、アゴラ研究所フェローの石井孝明の論考です。出だしを間違えたゆえに、福島の復興はまったく進みません。今になっては難しいものの、その見直しを訴えています。以前書いた原稿を大幅に加筆しました。
今週のリンク
朝日新聞6月9日記事。米電力会社サザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)社がサンオノフレ原発廃炉を決めました。原因の一つが三菱重工製の配管の問題という指摘が出ています。三菱への損害賠償の検討もあるそうです。また現地紙のロサンゼルスタイムズが、この問題で評価が出る一方、1100人分の雇用が失われる危険も述べています。「Activists praise San Onofre closure, but 1,100 layoffs expected」
産経新聞6月7日記事。海底に分布しているとされる凍るメタンの固まり「メタンハイドレート」はエネルギー源として注目されています。太平洋側で試掘されていましたが、日本海側でも存在が確認されています。予算の都合で調査が遅れていたとされますが、ようやく進捗がありました。どのようになるかは不透明で、結果判明は先になりそうながら、結果を期待したいです。
3)「成長戦略第三弾スピーチ」首相官邸
安倍首相が6月5日に発表した成長戦略の第三弾ではエネルギー改革が取り上げられました。「電力自由化」が電力価格低下と創造者を生むとしています。しかし、この改革には成果の点で確実な成果が現在の計画で見込めません。成長に結びつくかは疑問だ。
読売新聞6月8日社説。フランスのオランド大統領が来日し、原子力産業を持つ日仏が、官民での協力、技術協力を重ねる原子力のパートナーシップを深めることに合意しました。(「日仏共同声明」外務省ホームページ、4ページ)それを評価する記事です。
5)米国の福島事故後の原発安全対策費 総額で36億ドル規模に(英語)
エネルギー通信社プラッツの6月6日記事。原題は「US nuclear plant operators estimate $3.6 bil in post-Fukushima costs」。
米国の福島事故後の原発の改善・改良費として、稼働中の102基分を合計すると、ほぼ36億ドル(約3600憶円)になるとの推計が米政府から出ました。米原子力安全委員会の該ドラインに基づき、今後3〜5年間をかけて所要の改良改善措置を、各原子炉で行うことになる。この中には、洪水や地震対策、その他災害の程度などに関するエンジニアリング調査の実施も含まれます。対策費が数兆円に達した日本に比べて、金額が少ないようにも思えますが、この速さは日本が参考にすべきでしょう。
関連記事
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
東京都の資料「2030年カーボンハーフに向けた取り組みの加速」を読んでいたら、「災害が50年間で5倍」と書いてあった: これを読むと、「そうか、気候変動のせいで、災害が5倍にも激甚化したのか、これは大変だ」という印象にな
-
文藝春秋の新春特別号に衆議院議員の河野太郎氏(以下敬称略)が『「小泉脱原発宣言」を断固支持する』との寄稿を行っている。その前半部分はドイツの電力事情に関する説明だ。河野は13年の11月にドイツを訪問し、調査を行ったとあるが、述べられていることは事実関係を大きく歪めたストーリだ。
-
実は、この事前承認条項は、旧日米原子力協定(1988年まで存続)にもあったものだ。そして、この条項のため、36年前の1977年夏、日米では「原子力戦争」と言われるほどの激しい外交交渉が行われたのである。
-
この原稿はロジャー・ピールケ・ジュニア記事の許可を得た筆者による邦訳です。 欧州の天然ガスを全て代替するには、どれだけの原子力が必要なのか。計算すると、規模は大きいけれども、実行は可能だと分かる。 図は、原子力発電と天然
-
高浜3・4号機の再稼動差し止めを求める仮処分申請で、きのう福井地裁は差し止めを認める命令を出したが、関西電力はただちに不服申し立てを行なう方針を表明した。昨年12月の申し立てから1度も実質審理をしないで決定を出した樋口英明裁判官は、4月の異動で名古屋家裁に左遷されたので、即時抗告を担当するのは別の裁判官である。
-
(前回:再生可能エネルギーの出力制御はなぜ必要か) 火力をさらに減らせば再生可能エネルギーを増やせるのか 再生可能エネルギーが出力制御をしている時間帯も一定量の火力が稼働しており、それを減らすことができれば、その分再エネ
-
エネルギー、原発問題では、批判を怖れ、原子力の活用を主張する意見を述べることを自粛する状況にあります。特に、企業人、公職にある人はなおさらです。その中で、JR東海の葛西敬之会長はこの問題について、冷静な正論を機会あるごとに述べています。その姿勢に敬意を持ちます。今回は、エネルギー関係者のシンポジウムでの講演を記事化。自らが体験した国鉄改革との比較の中でエネルギーと原子力の未来を考えています。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間