種の絶滅は気候変動のせいでは無かったことをデータで確認

Neil Aldridge/iStock
「気候変動によって多くの生物が絶滅している」という印象が広く流布されている。しかし、これまでのところ、種の絶滅の主な原因は生息地の喪失などであり、気候変動では無かったことは、生態学においては常識となっている。
今回紹介する論文は、そのことをデータではっきりと示したものだ。
米国アリゾナ大学などの研究者は、英国王立学会に掲載した最新の論文で、IUCN(国際自然保護連合)のデータベースを用いて、過去500年間に確認された約900種の絶滅の理由を体系的に分析した※1)。
絶滅原因は時代と場所によって大きく異なってきたことが示されている。
論文にある下図は、絶滅原因の変遷を時系列で示したものである。上半分の(a)は1500年以来、100年ごとに見たものである。下半分の(b)は、1800年以降を10年ごとに見たものである。

まず上半分の(a)を見てみよう。
これを見ると、1500年代では、侵入種(invasive species)が絶滅の主因であったことがわかる。人間の移動とともに持ち込まれたネズミや捕食動物、病原体が、特に島嶼の固有種に壊滅的な影響を与えた。
その後、1600年代から1700年代にかけては、乱獲(exploitation)が最も主な要因になった。過剰な採取、狩猟、伐採などのことである。
そして1800年代からは、生息地の喪失・劣化が主要な要因に加わった。農地拡大、都市化、鉱山開発などによって、生物の生息環境そのものが失われたり、劣化していった。
絶滅理由には、地域による違いもあった。島嶼部では侵入種が圧倒的な絶滅要因であったのに対し、大陸部や淡水域では生息地喪失が支配的であった。島では独自な進化を遂げた固有種が多く、侵入種の影響が極端に大きくなる。一方、河川や湖沼では、ダム建設や水質悪化などによる生息地への圧力が多くの種を追い詰めてきた。
では、気候変動はどう位置づけられるのか。図5の(b)を見てみよう。「気候変動(climate change)」という項目が示されている。これには、長期的な気温変化だけでなく、干ばつや洪水などの異常気象(extreme weather)も含まれており、幅広い定義になっていることに注意が必要である。
注目すべきは、人為的な温室効果ガス排出が増加し続けた過去200年間において、「気候変動」による絶滅は有意に増加したとは言えない、という結果になっていることである。
著者らは、将来において気候変動が重大な脅威になり得る可能性を否定してはいない。しかし少なくとも、実際に確認された過去の絶滅の主因は、侵入種、乱獲と生息地喪失であり、気候変動はごくマイナーな要因に過ぎなかった。
過去の事実を冷静に整理することは、将来の政策を考えるうえで不可欠である。絶滅の原因は単一ではなく、時代と場所によって変化してきた。そして、気候変動は主要な要因というには程遠かった。
このことを理解せず、すべてを気候変動の問題として一括りにするならば、かえって有効な種の多様性対策を妨げることになるだろう。
例えば太陽光発電、風力発電、バイオエネルギーなどの再生可能エネルギーは、気候変動対策にはいくらかなるかもしれないが、広大な面積を開発することになり、生息地の喪失をもたらすという負の側面がある。このため、その推進はかえって生物多様性にとってマイナスかもしれない。
※1)IUCNのデータベースでは、絶滅をもたらした脅威・原因が挙げられている。複数ある場合には、これを按分して図を作成した。例えばある種が絶滅した脅威・原因が、侵入種、生息地破壊、 気候変動となっていた場合、それぞれに3分の1ずつ計上して図を作成した。
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