中東危機でアジアは石炭回帰:日本も石炭をフル活用すべきだ

磯子火力発電所
J-POWERグループHPより
中東発のエネルギー危機を受けて、世界、とくにアジア太平洋諸国で、石炭への回帰が加速している。以下、主に報道ベースであるが、紹介しよう。なお情報源リンクは長くなるのでこちらを参照されたい。
第1に、既存の石炭火力の稼働率を引き上げたり、稼働制限を緩和したり、燃料調達を確保する動きがある。
日本では、液化天然ガス(LNG)の供給不安に対応するため、相対的に低効率な石炭火力の稼働制限を一時的に緩和する方針が報じられた。すなわち、発電効率が42%以下の石炭火力については、脱炭素政策の一環として、設備利用率を50%に抑える仕組みが導入されてきたが、その制約を1年間に限り停止することで、LNG火力の燃料消費を年間50万トン程度節約することが狙いとされる。
しかし、このような小出しの政策を実施する一方で、排出量取引制度の本格導入を進めるなど、相変わらず脱炭素政策を進めている、という矛盾した状態にある。
韓国の政府・与党は、中東危機を受けて、環境対策として課していた石炭火力の発電制限を解除し、同時に原子力発電の利用率も引き上げる方針を示した。韓国は発電におけるLNG火力の比率が高く、カタールなど中東からのLNG供給に不安が生じたことで、電力供給と電気料金への影響が懸念されている。そこで石炭火力と原子力の割合を増やし、LNGへの依存を下げる対応が取られている。
台湾は、中東戦争によるLNG供給制約を受け、エネルギー安全保障のため石炭火力発電を増やすと報じられている。台湾電力は、麦寮石炭火力発電所の1号機と3号機の出力を5月から引き上げる。
フィリピンは近年、CO2対策としてLNG火力の導入を進めてきたが、中東危機でLNG価格が急騰すると、政府は電力価格の抑制のため石炭火力発電を増やす方針を示した。さらに、インドネシアから石炭の安定供給についての確約を得たとも報じられている。なおフィリピンは、今回のエネルギー危機を受けて国家非常事態を宣言している。
タイでも、LNGを節約するために、国内最大級の石炭火力発電所の発電量を増やしていると報じられている。
バングラデシュでも、LNG供給難を受けて、石炭火力発電を増やすほか、インドからの電力輸入を増やす動きも出ている。
スリランカでは、国内電力の大きな割合を担うラクビジャヤ石炭火力発電所向けに、30万トンの緊急の石炭調達が承認された。
第2に、中国やインドのように、もともと石炭火力と国内炭をエネルギー安全保障の柱として維持・拡大してきた国が、それを活用している。
中国では、2025年に約8000万キロワット規模の石炭火力が新たに稼働したとされる。これは、2021年の電力不足以降、ピーク需要対応とエネルギー安全保障を目的として多数の石炭火力が認可された結果である。さらに中国の国内石炭生産は、すでに世界最大規模でありながら、なお高水準を維持している。
なお中国では、石炭は発電だけでなく、化学製品や液体燃料の原料としても重要である。中東危機によって石油化学原料の供給が不安定化すると、国内炭を原料に化学品を作る石炭化学産業があらためて注目を集めている。
インドも同じく、石炭を電力安定供給の柱としてきた。インドの発電の約4分の3は石炭火力である。中東危機を受けて、夏季の電力需要増大を前に、インド政府は輸入炭を使用するグジャラート州のムンドラ石炭火力発電所400万キロワットを筆頭に、15件の輸入炭使用の石炭火力発電所について、4月から6月までフル稼働させるよう指示した。さらに、石炭火力各社に対して、不要な停止を避け、保守点検中の設備については早期の戦列復帰を図り、全力での運転に備えるよう求めた。
以上のような諸国の石炭回帰を支えるのは、域内の石炭輸出国である。
インドネシアは、アジアで最大の一般炭輸出国であり、中国、インド、ベトナム、フィリピンなどに大量の石炭を輸出している。
オーストラリアも、日本や韓国が使う、火力発電用の高品位な一般炭の主要供給国である。LNG価格が上昇し、日本や韓国でガスから石炭への燃料転換が意識されると、オーストラリア産高品位炭への需要も高まっており、これを反映して価格も上昇した。
脱炭素政策の下で、ここ数年、石炭火力は悪者扱いされてきた。しかし、中東危機が示したことは、石炭火力が依然として電力の安定供給にとって極めて重要な手段であるということである。
日本も石炭火力発電をフル活用することで、発電用のLNGや石油を節約できる。LNGも石油も量が不足し、価格が高騰するなかにあって、石炭火力は安価な電力を供給する重要な手段である。
日本の生命線「石炭」を破壊する排出量取引制度は導入を中止せよ
いまのエネルギー危機において、石炭火力を活用しないのは全く愚かなことだ。脱炭素政策は廃止すべきである。
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