再生可能エネルギーの出力制御はなぜ必要か②

gorodenkoff/iStock
(前回:再生可能エネルギーの出力制御はなぜ必要か)
火力をさらに減らせば再生可能エネルギーを増やせるのか
再生可能エネルギーが出力制御をしている時間帯も一定量の火力が稼働しており、それを減らすことができれば、その分再エネの出力を増やすことができるのは事実だ。しかし実際には天候の変化や夕方の再エネ発電量の減少に備え火力等の電源を待機させておく必要がある。

図1 一日の電力需給イメージ
出典:経済産業省
この日の例では、日中の時間帯で揚水発電が水をくみ上げることで再エネの出力制御を極力抑えるようにしているが、夜間に必要となる発電量を昼間に必ずしも貯めきれているわけではない。また、揚水発電の効率は約70%で、つまり3割ほどが目減りしてしまうことにも注意が必要だ。
火力発電については、最小まで絞っていた出力を夕方に向けて急速に増加させると共に、停止していた設備の再起動を組合わせることで太陽光の出力減少に対応している。このように、電力の安定供給は、日中の電気が余った状況から夕方の高需要の時間帯に向けて一気に供給力を増やすことができるかにかかっている。
また、太陽光や風力などの自然変動電源が拡大すると、それ自体が不安定な電源であることに加え、それらが優先給電されることによって火力発電を電力系統から押し出してしまうため、日中の需要の変動や天候の急変等に対応するのに必要となる調整力が不足することも問題となる。
このように再エネ余剰への対応もさることながら、再エネの発電量低下への備えを万全にしておくことが安定供給を維持するうえでとても重要であり、闇雲に火力を停めてしまえば良いというわけではない。
需給バランス維持の問題は、朝昼晩という一日の変化だけでなく、週間や季節間といった長周期の変動にも備える必要がある。
下図に示すように、我が国の太陽光発電の発電量は日によって10倍程度変動する実績となっている。また、風力発電が多いとされる欧州でも、風も吹かない日が10日程も継続し、再エネの発電量が低い状況が続くことがある。
このように、過去の実績でも曇天や夜間、さらに無風の時など再エネの出力がほとんど期待できない時間帯があることが明らかになってきており、自然変動電源の増加に伴い、むしろ火力発電等が担っている予備力・調整力を如何に確保していくのかが問題となっているのである。

図2 太陽光発電の出力変動幅の実績
出典:経済産業省

図3 ドイツの発電実績
出典:経済産業省
(次回につづく)

関連記事
-
熊本県、大分県を中心に地震が続く。それが止まり被災者の方の生活が再建されることを祈りたい。問題がある。九州電力川内原発(鹿児島県)の稼動中の2基の原子炉をめぐり、止めるべきと、主張する人たちがいる。
-
現在経済産業省において「再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題に関する研究会」が設置され、再生可能エネルギー政策の大きな見直しの方向性が改めて議論されている。これまでも再三指摘してきたが、我が国においては201
-
福島原発事故の後で、日本ではエネルギーと原子力をめぐる感情的な議論が続き、何も決まらず先に進まない混乱状態に陥っている。米国の名門カリフォルニア大学バークレー校の物理学教授であるリチャード・ムラー博士が来日し、12月12日に東京で高校生と一般聴衆を前に講演と授業を行った。海外の一流の知性は日本のエネルギー事情をどのように見ているのか。
-
EU農業政策に対する不満 3月20日、ポーランドのシュチェチンで農民デモに遭遇した。主要道路には巨大なトラクターが何百台も整然と停まっており、その列は延々と町の中心広場に繋がっていた。 広場では、農民らは三々五々、集会を
-
(GEPR編集部より)広がった節電、そして電力不足の状況をどのように考えるべきか。エネルギーコンサルタントとして活躍し、民間における省エネ研究の第一人者である住環境計画研究所会長の中上英俊氏に、現状の分析と今後の予想を聞いた。
-
アゴラ研究所では、NHNジャパン、ニコニコ生放送を運営するドワンゴとともに第一線の専門家、政策担当者を集めてシンポジウム「エネルギー政策・新政権への提言」を2日間かけて行います。
-
はじめに 発電用原子炉の歴史はこれまでは大型化だった。日本で初めて発電した原子炉JPDRの電気出力は1.25万キロワットだったが今や100万キロワットはおろか、大きなものでは170万キロワットに達している。目的は経済性向
-
資産運用会社の大手ブラックロックは、投資先に脱炭素を求めている。これに対し、化石燃料に経済を依存するウェストバージニア州が叛旗を翻した。 すなわち、”ウェストバージニアのエネルギーやアメリカの資本主義よりも、
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間