米国共和党は気候危機説などウソだと知っている

Douglas Rissing/iStock
よく日本では「トランプ大統領が変人なので科学を無視して気候変動を否定するのだ」という調子で報道されるが、これは全く違う。
米国共和党は、総意として、「気候危機説」をでっちあげだとして否定しているのだ。
そしてこれは「科学を無視しているから」などではない。「科学をよく知っているから」こそである。
米国の議会公聴会では、共和党が招聘した科学者も証言をする。そこで「ハリケーンの激甚化など起きていない」とか、「数値モデルによるシミュレーションは過去の再現すら出来ない」といったことをはっきりと、データを示して証言する。
だから共和党の議員はみな、気候危機説などウソだとよく分かっている。日本の政府御用学者が、データを隠し、気候危機を煽り、脱炭素の説教をして、オールドメディアも国会議員もみなそれを信じ込んでいるのとは対照的だ。
米国の科学者の証言は、これまでも何度もまとめられてきたけれども、現在進行形で、共和党系の有力なシンクタンクであるヘリテージ財団が一連の委託報告書を発表している。
そこから少しだけ紹介しよう。
ほとんどのコンピューター気候モデルは、過去50年間について、地球の気温上昇の速さが観測よりも速い。つまり「温暖化しすぎ」である(図)。公共政策は、気候の影響を誇張する気候モデルではなく、気候の観測結果に基づくべきである。
Global Warming: Observations vs. Climate Models

図 過去の地球の平均気温(1979-2022)。
気候モデルの平均(赤)は観測値(青)よりもはるかに気温上昇が速い。
(なおこの気温には、後述のように、都市熱も混入しているので、両者の差は本当はもっと大きい)。
IPCCは世界規模で気温が上昇していることの検出と、その原因が何かについて「科学的に決着がついた」と主張しているが、この議論はまだ満足に解決されていない。産業化以降の気温の変化には、都市熱が少なからず混入している。また地球温暖化の原因が、ほとんど太陽活動の変化といった自然現象によるものなのか、ほとんどがCO2排出などによる人為的なものなのか、あるいはその両方が混在しているのか、まだ確定できていない(この内容については、論文共著者である田中博先生と私の動画および講演資料があるのでご覧ください)。
共和党は、本気で、バイデンの進めてきたグリーンディールを廃して、パリ気候協定からは離脱する。
「愚かな脱炭素を止めろ」とは、国務長官に指名された有力者、マルコ・ルビオ上院議員のテレビ「フォックス・ニュース」における発言だ。
日本人も、データに学んで気候危機説がウソであることを理解し、「愚かなグリーン・トランスフォーメーション(GX)」を止めねばならない。
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