莫大な再エネ開発補助金は大掃除が必要だ

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公的資金の費用対効果をしっかり検証を
高市総理は2025年9月の自民党総裁選の立会演説会で、太陽光発電(メガソーラー)と関連補助金制度について「釧路湿原に太陽光パネルを敷き詰めるようなやり方はおかしい」という趣旨の発言とともに、「補助金制度の大掃除をして本当に役に立つものに絞り込む」との姿勢を示した。これはメガソーラーや風力発電をはじめとする再エネ系補助金全般の抜本的見直し・縮減を意味する。
また、2025年11月25日には補助金等の適正化を進めるため、内閣官房の行政改革・効率化推進事務局に租税特別措置・補助金見直し担当室が設置され、2026年2月5日までformで意見募集を行っている。
高市総理はだいぶ本気モードらしい。大掃除が必要な補助金提供先を紹介する。
1970年代の石油ショック以前、日本の火力発電は燃料のほぼすべてを石油に依存していた。石油ショックにより石油供給が途絶すると、電力供給はたちまち逼迫した。これを契機に、新たな発電方式の開発を目的として「新エネルギー総合開発機構(後の新エネルギー・産業技術総合開発機構、以下NEDO)」が設立された。
NEDOは、新エネルギーおよび省エネルギー技術の研究開発を目的とする組織であり、自ら製品を販売したり、発電所を建設・運営したりする主体ではない。
エネルギー関連の新技術は、以下の段階を経て導入されることが多い。

このうちNEDOが担うのは①~③であり、④の実用化・事業化は電力会社、地方自治体、メーカーなどが担う(事業スキームによってはこの限りではない)。
たとえば風力発電の場合、風況調査や環境調査から風車建設、初期導入段階での発電実績データ取得までをNEDO主導で行い、その後、設備を電力会社や自治体に売却し、運転・保守は引き継がれる。
地方自治体が風力発電の導入を希望する場合でも、風況調査や初期導入コストの一部補助をNEDOが担い、建設後は自治体が運営するという流れが一般的である。NEDOは、研究開発成果を事業化・社会実装まで導く「イノベーション・アクセラレーター」を自らの役割として掲げており、実践もしている。一見すると合理的な役割分担に見えるが、実はこの分業構造こそが問題なのである。
NEDOはステップ④の事業化が成功するか否かについて、財務的な責任を負わない(設備の撤去費用まで含めて黒字化されて成功とみなす)。仮に事業化が失敗し事業者に損失が生じても、NEDO自身が事業者の損失を負担するルールはない。この仕組みが、投入された公的資金が有効に使われたのか検証されることなく、新エネルギー開発に多額の税金が投入され続ける要因の一つになっている。
NEDOの事業執行規模(委託・補助等)は極めて大きい
NEDOの全体予算を正確に把握するのは容易ではない。単年度予算に加え、グリーンイノベーション基金事業など、最長10年にわたる特定政策基金事業が存在するためである。
2023年(令和5年)の予算額データを紹介する(参照)。
① 単年度の予算
表1はNEDOのサイトで公開されている2023年度(令和5年度)の予算である。1,464億円でも、十分大きな金額であるといえる。

表1 2023年度NEDOの予算額
② 複数年にわたる基金の予算(累計規模)
表2は、2023年度にNEDOで実施中の特定政策基金事業の一覧である。注意すべき点は、これは2023年度の単年度予算ではなく、約10年程度をかけて実施される事業全体の予算であるということである。

表2 2023年度にNEDOで実施中の特定政策事業
③ 決算の数字
次に、決算の数字を見てみる。表3は、NEDOが公表している2022年度〜2024年度の財務諸表のうち、行政コスト計算書から「損益計算書上の費用合計」を抽出したものである(参照)。
近年は毎年のように金額が増え続けており、2024年度には1.4兆円規模の費用を支出していることが読み取れる。

表3 NEDOの財務諸表の行政コスト計算書から
損益計算書上の費用合計(委託費・補助事業費等を含む“費用合計”)
公認会計士で東京都議会議員のさとうさおり氏が独自に集計した「令和5年度補助金ランキング」においても、NEDOは補助金支出額で突出したトップとなっている(独自の集計のため、私の資料との整合性確認は行えていない)。
「グリーン」「再エネ」「脱炭素」といった現在の流行語が並ぶNEDOの事業には、巨額の税金が投じられていることが見て取れる。
福島沖浮体式洋上風力発電実証事業という「失敗例」
2012年から2022年にかけて、資源エネルギー庁の委託事業として「福島沖浮体式洋上風力発電システム実証研究事業」が実施された。事業費は総計669億円(撤去費約65億円を含む)にのぼる。
【参照】資源エネルギー庁「福島沖での浮体式洋上風力発電システム実証研究事業総括委員会最終報告書」
この事業では、福島県いわき市沖に2MW、5MW、7MWの浮体式風力発電機と洋上変電所が建設された。プロジェクトは丸紅を中心とするコンソーシアムが受注し、風車製造は2MW/5MWが日立製作所(ギア式)、7MWが三菱重工業(油圧式)を担当した(当時は日本メーカーも自前で風車の製造・建設を行っていた)。

図1 洋上風力着床式・浮体式説明
NEDOサイトより
洋上風力は、海底に基礎を固定する着床式と、海上に基礎を浮かせて係留する浮体式に大別される。浮体式洋上風力は技術的難易度が高く、当時の欧州でも主流は着床式であった。しかし、日本近海は浅瀬が少ないため、着床式では導入量が限られるという理由から、実績の乏しい浮体式に一足飛びで挑戦する判断がなされた。
ここでは「福島沖での浮体式洋上風力発電システム実証研究事業総括委員会最終報告書」の内容を確認する。
実証試験では、ケーブル断線、海洋生物付着による沈下、台風による設備破損など、数多くのトラブルが発生した。研究段階でトラブルが起きること自体は想定内だとしても、それを解決するための改修は、海底ケーブルの固定を強化するなど、いずれもコスト増に直結するものであった。
また、風車基礎が漁礁となって魚の繁殖に有益である、離底網で取れるヤリイカは混獲が少なく商品価値が高い漁獲ができる、といった漁礁効果や漁業への副次的効果については詳細に記載されている(P.40〜P.55)。一方で、検証期間中に風車発電機がどれだけの電力量を発電したかを示す数値やグラフは記載されていなかった。
設備利用率は提示されており、2MW機で31.1%、5MW機で26.2%、7MW機では1.9%に過ぎなかった。7MW機については、油圧式ギアが実験開始早々に故障し、抜本的な設計変更が必要で実験継続が困難と判断されたことから、このような極端に低い数値となった(P.67〜P.70)。
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このように、実際に発電した電力量(kWh/MWh)ベースでの売電収入など、“事業採算”としての整理は乏しく、主に設備利用率や費用面の記述が中心であった。そのため、発電事業としての採算性・事業性を検証するには、明らかにデータが不足しているといえる。
唯一、発電コストに言及した記載としては、(P.65「維持管理費」)の項目に報告されている。
(維持管理費)
平成29年度報告書において、福島沖で浮体式洋上風力発電所を開発する上での発電コストの将来目標値とした36円/kWhを達成するために、必要となる維持管理費の削減案を検証した。
平成29年度の維持管理費の将来価格低減について、本実証研究事業における5MW設備の維持管理費用である4.3万円/kW/年から1.9万円/kW/年まで削減可能性があることが示唆された。検討結果については以下のとおりである。
- 作業効率化および風車メーカーで行っていた運転維持管理を発電事業者にて内製化することで、メンテナンス費用を削減できること。
- 洋上の施工技術を改善することで、大規模修繕費用の削減ができること。
- 今後、浮体式洋上風力の案件増加に伴う適切なリスク評価による保険料削減。
- 新造の単胴船を採用した場合の費用削減。
※ 報告書の記載をそのまま引用(太字は筆者)
まず、発電コストの将来目標値36円/kWhは、2025年現在ではとても勝負にならない高額な電気代である。つまり、この研究時点では36円/kWhを大幅に上回る発電単価であったことがわかる。さらに、費用削減の検討結果については、事業に適用するための具体的な手法はいずれも発電事業者側に委ねられる形となっており、実現するには非常に厳しい内容ばかりである。
最終的に、福島沖に建設された風車は売却されることなく、税金を用いて解体された。その後、日本の各メーカーは風車の自社製造から全て撤退し、風車は主にヨーロッパのメーカーから調達するしか選択肢がなくなった。
次の標的は「次世代地熱発電」
メガソーラーや洋上風力への批判が高まる中、NEDOは次の柱として次世代地熱発電を掲げている。とりわけ「超臨界地熱」「クローズドループ」および「EGS(Enhanced Geothermal Systems)」が注目されている。
NEDOの計画によると、2040年までに約1.4GW、2050年に約7.7GWの実現を目指すという、かなり野心的な目標を設定している。
【参照】「資源エネルギー庁 次世代型地熱推進官民協議会中間取りまとめ」P.23
「超臨界地熱」発電について見てみる。現在実用化されている地熱発電所の地熱井は一般に数千メートル級であり、貯留層はおおむね1,000〜3,000m程度の深さである。超臨界地熱は、深度約5,000mに存在する高温高圧の流体を利用する構想であるが、掘削コスト、井戸本数、還元井の問題を考えれば、商用化のハードルは極めて高い。
2025年現在、実用化されている地熱発電所は大型のものでも1機あたり約50MW程度である。1機の地熱発電に用いる井戸は1本では済まず、10本程度の井戸を掘削し、全てを同時に使用するのではなく、順番に休ませながら使用している。これは、常時蒸気を噴出させ続けると地熱貯留層の蒸気圧が低下してしまうためであり、ガス田や油田などと同様に、休ませながら資源を取り出しているのである。
したがって、超臨界地熱発電の営業運転を行うには、深度5,000m級の井戸を複数本掘削しなければならない。1本あたりのコストすら不明瞭な現状では、相当のコストアップとなることは容易に想像できる。また、地熱発電の場合、還元井の存在も忘れてはならない。発電タービンを回した蒸気は放出するのではなく、還元井を通じて地下の同一帯へ戻している。したがって、蒸気を取り出す井戸だけではなく、還元井も同様の深度まで掘削しなければならない。
もう1つの「クローズドループ」については、岩盤に熱は存在するものの蒸気貯留層がないため、高温高圧の蒸気を直接取り出すことができない。そのため、図2のように深部地層内で水平に長い井戸を複数本掘り進め、さらに先端部分で折り返してループ状にする。そのパイプ内に水を注入し、地熱で加熱した後に地上へ回収する仕組みである。地上で熱を取り出した水は再び注入され、同じ水を循環させることから「クローズドループ」と呼ばれる。

図2 クローズドループ地熱発電の説明
中部電力のサイトより
しかし、図2を見ればわかるように、地中深くで長大かつ複雑な掘削技術が求められる。水平掘削技術は油田などで実績はあるものの、これほど高度な掘削が実現可能なのかについては慎重な文献調査など机上検討を十分に行った上で、実機検証の可否を判断すべきである。
現時点では大規模な予算執行は見られないが、特定政策基金を活用すれば兆円規模の支出も可能である。福島沖洋上風力の7MW機のように、建設してもほとんど発電せず、最終的に税金で撤去されるという事態を繰り返さないようにしてもらいたい。
再エネ開発資金を検証し、無秩序な税金投入はやめよ
「再エネの普及」「持続可能な社会の実現」といった理念を掲げた事業では、その予算執行の費用対効果についてほとんど検証されることなく、税金が投入されているように感じる。今後も「次世代地熱発電」「系統用蓄電池」「レアアースの海底資源調査」など、事業性が疑われる事業に多額の税金が投入され、一部の研究受託者に流れていく構造が繰り返されるのではないか。
再エネ研究開発に投入される資金を、減税や他の政策分野へ振り向けることこそ、日本経済の持続的発展につながるのではないか。
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