2028年蛍光灯禁止が一人暮らし老人の財布を直撃する

stocksnapper/iStock
正さんは一人暮らしのお年寄りである。ただひたすら正直に生きてきた。今日、電気屋に久しぶりに入ると、水銀規制のために、「2027年末で蛍光管は製造も輸入も禁止される」と書いてあった。これは大変なことになりそうだ。家に帰って、どうなるか考えてみた。
家は戸建てで、こじんまりとしているが、天井に埋め込み式の蛍光灯のある部屋が三つある。居間と寝室と仏間である。あと外には物置があって、その天井にも蛍光灯が埋め込みでつけられている。これをすべてLEDに替えるとなると、照明器具ごと取り替えなければいけないとのことだ※1)。結構な工事費になりそうだ。

図 用語についての説明
蛍光灯とは、蛍光灯用の照明器具(蛍光灯器具)に、蛍光管(ランプ)を嵌めて使うもの。
一般的に言えば、照明とは、照明器具に、照明管(ランプ)を嵌めて使うもの。
よく考えると、我が家はもともと蛍光灯をあまり使っていない。普段は居間で暮らしているけれども、早寝早起きなので、夜遅くまで電気をつけているようなこともない。それに日中は室内も明るいので、蛍光灯はつけていない。寝室は寝る前に少しつけるだけだし、仏間もほとんど照明をつけている時間はない。物置に至っては、一体、年に何時間つけているのだろうか。LEDになると省エネになるというが、いったいどれぐらい電気代が浮くというのだろうか。
そもそも、うちにある蛍光灯はいずれもかなり効率のいいものをつけているので、もともと光熱費は少なく、それをLEDに替えたところで、ほとんど節約になりそうにない。
どうやら、照明器具を取り替えて工事をしてもらうとなると、10万円はかかるようだが、電気代の節約分で取り返せるのだろうか。計算してみると、100年経っても取り返せない(文末「投資回収年数の計算」参照)。
私は健康な限りここで暮らしたいとは思うけれども、正直言っていつまでこの暮らしが続けられるか、それほど自信はない。まあせいぜい10年ぐらいだろうか。すると9万円の損になる。こんな、絶対に取り返せない出費を、なぜしなければいけないのだろうか。
だいたい、なぜ壊れてもいない、それなりにデザインも気に入ってつけた蛍光灯を捨てなければならないのか。この方がよっぽどもったいない。
新しい照明器具をつけるにしても、やっぱり部屋のデザインに合った、それなりの品のいいものにしたい。だがそうするとますますお金がかかることになる。仏間ではお坊さんにお経をあげてもらうこともあるし、寝室には子供や孫が遊びに来て泊まることもある。やはりあまり不細工な部屋にはしたくない。だがそんなことを言うと、もっとお金がかかってしまうのだろうか。
蛍光管の製造と輸入は禁止だが、流通は禁止しないというから、買いだめしておけば、蛍光管が何本か切れても、しばらくは今の蛍光灯器具が使えるのかもしれない。けれども、一体何本買いだめをすればいいのか。それに蛍光灯器具の修理だって、そのうち誰もできなくなるだろう。そうすると、やはり蛍光灯器具ごと取り替えるというのが現実的な選択になってしまう。
前述の経産省の特設ホームページを見ると、LEDは蛍光灯より効率が良いから電気代の節約になってお得です、と書いてある。もし新築の家に照明をつけるなら、トータルでみてLEDの方が良いのかもしれない。だが、すでに立派な蛍光灯器具が付いていて、しかも使用時間が少ないならば、いまさらLEDにしても、何も良いことは無い。
それにしても、なぜこんなひどい規制が出来たのだろう。水銀規制だというが、庶民の暮らしを何だと思っているのだろうか。役所は何をやっているのか。正さんはさらに調べることにした。
(つづく)
投資回収年数の計算
蛍光灯 → LED 切替えの投資回収計算
前提
- 初期費用(器具+工事+出張):100,000円
- 電力単価:30円/kWh
- 消費電力差(高効率蛍光灯 → LED):15W = 0.015 kW
点灯時間
- 居間:毎日 5 時間
- 寝室:毎日 30 分(0.5 時間)
- 仏間:週 1 時間
- 物置:月 1 時間
電気代削減額は
| 場所 | 使用頻度 | 年間使用時間 (h) | 削減電力 (kW) | 年間削減電力量 (kWh) | 年間電気代削減額 (円) |
| 居間 | 5h × 365日 | 1,825 | 0.015 | 27.38 | 821 |
| 寝室 | 0.5h × 365日 | 182.5 | 0.015 | 2.74 | 82 |
| 仏間 | 1h × 52週 | 52 | 0.015 | 0.78 | 23 |
| 物置 | 1h × 12か月 | 12 | 0.015 | 0.18 | 5 |
| 合計 | 2,071.5 | 31.07 | 931 |
投資回収年数は
- 年間電気代削減額合計:931円/年
- 初期費用:100,000円
- 投資回収年数=100,000÷931=107年
■
※1)既存の蛍光灯器具を使用したまま蛍光管(ランプ)をLED管に交換する方法は、器具との組み合わせによっては発煙・発火等の事故につながるおそれがあるため、安全性の観点から、業界団体は蛍光灯器具ごとの交換を推奨している。
蛍光灯器具をLED化する際はまるごと照明器具交換を推奨します(一般社団法人日本照明工業会)
■
関連記事
-
(GEPR編集部より)サウジアラビアの情勢は、日本から地理的に遠く、また王族への不敬罪があり、言論の自由も抑制されていて正確な情報が伝わりません。エネルギーアナリストの岩瀬昇さんのブログから、国王の動静についての記事を紹介します。
-
ここ数回、本コラムではポストFIT時代の太陽光発電産業の行方について論考してきたが、今回は商業施設開発における自家発太陽光発電利用の経済性について考えていきたい。 私はスポットコンサルティングのプラットフォームにいくつか
-
「万感の書を読み、万里の道を行く」。士大夫の心構えとして、中国の格言にこのような言葉がある。知識を吸収し、実地で確かめることを推奨しているのだろう。私は旅行が趣味だが、この言葉を知って旅をするごとに、その地域や見たものの背景を一層考えるようになった。
-
福島第一原発事故後、日本のエネルギー事情は根本的に変わりました。その一つが安定供給です。これまではスイッチをつければ電気は自由に使えましたが、これからは電力の不足が原発の停止によって恒常化する可能性があります。
-
今年5月、全米科学アカデミーは、「遺伝子組み換え(GM)作物は安全だ」という調査結果を発表しました。これは過去20年の約900件の研究をもとにしたもので、長いあいだ論争になっていたGMの安全性に結論が出たわけです。 遺伝
-
EUのEV化戦略に変化 欧州連合(EU)は、エンジン車の新車販売を2035年以降禁止する方針を見直し、合成燃料(e-fuel)を利用するエンジン車に限って、その販売を容認することを表明した。EUは、EVの基本路線は堅持す
-
ロシアからの化石燃料輸入に依存してきた欧州が、ロシアからの輸入を止める一方で、世界中の化石燃料の調達に奔走している。 動きが急で次々に新しいニュースが入り、全貌は明らかではないが、以下の様な情報がある。 ● 1週間前、イ
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 これまで筆者は日本の水素政策を散々こき下ろし、そのついでに「水素を燃やすのが勿体ないならば、その水素を原料に大量のエネルギーを使って合成するアンモニアを燃やすのは更に勿体ない、
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間















