セ・リーグが「脱炭素ナイター」開催=グリーンウォッシュナイターです

John Scott Leigh III/iStock
太陽光発電でナイターって。。
JERAとセ・リーグ、太陽光発電で照明「脱炭素ナイター」開催へ…阿部慎之助監督「ファンの皆さんと一緒に取り組んでいきたい」 : 読売新聞
発電大手JERAとプロ野球セントラル・リーグ6球団は9日、エネルギーの脱炭素化など環境負荷の低減を啓発する「灯セ、みんなで。」プロジェクトを始めると発表した。
(中略)
企業とプロ野球チームが社会変革という価値を創出するための新たなスポーツ協賛の取り組みで、照明に必要な電力を太陽光発電で賄う「脱炭素ナイター」などを開催する。福島県いわき市のJERAの太陽光発電所を活用し、26年は6球団が1試合ずつ主催試合で脱炭素ナイターを行う。
中身を見たところ、案の定。。
【「JERAクリーンエネルギーで灯セ、ナイター」の仕組み】
- JERAのグループ会社であるJERA Crossが本プロジェクト向けの太陽光発電所(愛称:「JERA×セ・リーグみんなのソーラーパーク」 )を用意し、この発電所から生み出される環境価値をバーチャルPPAという仕組みを活用して、各球団が取得します。
- バーチャルPPAで取得した環境価値を使用して、試合で必要となる電力のCO2排出量を実質的にゼロにする仕組みです。
「環境価値」=炭素クレジット、「CO2排出量を実質的にゼロ」=カーボンオフセット、です。
何度でも繰り返しますが、炭素クレジット・カーボンオフセットはすべてグリーンウォッシュです。大気中のCO2を1グラムも減らさないため「実質」などと言って誤魔化す必要があります。
電気は「同時同量」が大原則なのです。環境価値を生み出したとされる太陽光発電由来の電気は、その瞬間に家庭や工場などですでに消費済み。プロ野球のナイトゲームであればその瞬間に発電された電気(主に火力発電)を使用しています。それでもナイターを脱炭素と称するのであれば、過去に遡って当該太陽光発電所、またはその電気を利用したはずの家庭や工場において、オフセット分と同量のCO2排出量を計上しなければなりません。
こうした炭素クレジットの問題点はややこしいのですが、こちらの動画で平易に解説しています。ぜひご覧ください。
なお、この動画で筆者は炭素クレジットの欺瞞をプロ野球にもたとえていました(偶然です)。今後、「脱炭素ナイター」と称した球団は、1年間リハビリでシーズンを棒に振ったにもかかわらず、ホームラン王を獲った選手にお金を支払って俺がホームラン王だと名乗るようなものです。ファンも全球団もこんなこと絶対に許しませんよね。
前回紹介した通り、カーボンオフセットを利用して「カーボンニュートラル」と称し2023年に販売を開始したApple Watchが、2025年夏にドイツの裁判所からグリーンウォッシュ判決を受けAppleは広告をすべて削除しました。この他、炭素クレジットによる詐欺まがいの事例を上記動画ではたくさん紹介しています。
■
昨今、JリーグやプロバスケットボールNBLなど他のプロスポーツ、そしてエンターテインメント業界でもグリーンウォッシュが蔓延しています。
10/4(土)神戸戦【サステナブルDAY】カーボンオフセットの実施について | URAWA RED DIAMONDS OFFICIAL WEBSITE
10月4日(土)ヴィッセル神戸戦【MATCH PARTNER DHL】(17:00キックオフ・埼玉スタジアム)において、埼玉県内の共同住宅等に設置された太陽光発電の環境価値(CO2削減量)をグリーン電力証書等として取りまとめ、浦和レッズに提供いただくことで、当該試合にて排出されるCO2を実質ゼロとする、カーボンオフセットを実施しますのでお知らせいたします。
この試合は17:00キックオフ。もちろん試合中にお日様は照っていないので、埼玉県内の共同住宅等に設置された太陽光発電所で10トン分のCO2排出を計上しない限りグリーンウォッシュとなります。
さて、以下はJリーグとNBLでJ-クレジットを利用したという事例。
LIXIL | LIXIL × SDGs NEXT STAGE | 活動報告一覧 | J1リーグ試合のサポーター移動で発生した約500tのCO₂をカーボンオフセット!
当日ご来場いただいた、37,079人のサポーターの移動時に発生した約500tのCO₂を「建て得みらいクラブ」のJ-クレジットでカーボンオフセットしました。
【10/4(土)秋田戦】「LIXIL Presents GREEN COURT OPENING GAME」開催! | サンロッカーズ渋谷
試合開催日に青山学院記念館にて使用する電力創出や、観戦来場のためのお客様の移動により発生するCO₂を、LIXILが事業活動を通じて創出した「J-クレジット」を利用してオフセットすることで、カーボンオフセット試合を開催します。
残念ながら、J-クレジットを利用したクラブは「もっと(実態以上に)排出削減した“ことにしたい”クラブ」となります。クラブのスタッフもサポーターも、愛するクラブがこんな呼び方をされて平気なのでしょうか。
続いて、音楽フェスでも。
ap bank fes ’25 at TOKYO DOMEが実現したカーボンニュートラル音楽イベントの新たな挑戦 – サードニュース
本フェスでは、事後に算定したCO2排出量が1,017t-CO2であることがわかりました。事前に算定した894t-CO2と比較して、約14%の増加が見られました。
(中略)
今回のフェスでは、薄い電力での運営がなされており、東京ドームではRE100に準拠した再生可能エネルギーを使用しました。また、ラオスの水力発電プロジェクトから得られたカーボンクレジットも活用し、排出された全てのCO2をオフセットしました。これにより、「ap bank fes ’25」は完全なカーボンニュートラルな形で実施されたのです。
完全なグリーンウォッシュの形で実施された音楽イベントです。
RE100準拠の再エネ発電事業者とラオスの水力発電所に対して、1,017トン分のCO2排出量を加算したのであれば「実質CO2ゼロ」「カーボンニュートラル」と言えます。もちろんそんな手当は行っていないはず。
このRE100由来の電気やラオスの炭素クレジットは無償なのでしょうか。そんなはずはない。必ず追加費用が発生しています。そのクレジット購入費用は88,000人が支払ったチケット代で賄われているのです。それでも、きっと観客は「エコだからいい」「地球温暖化防止に貢献してフェスを楽しめたのだから満足」と思っているのでしょう。しかし、実際には大気中のCO2を1グラムも減らしていないということを88,000人の皆さんが知ったらどんな気持ちになるでしょうか。極めて罪深い行為だと思います。
他方、脱炭素の欺瞞を拡散し続けてきた欧州では変化の兆しが。
UEFA(欧州サッカー連盟)は2021年に策定した持続可能性戦略の中で「2040年ネットゼロ」を宣言しましたが、2026年2月に更新された同戦略では「2040年ネットゼロ」が削除されました。NPBもJリーグもNBLも、UEFAを参考にしてほしいものです。
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