エネルギー基本計画に「電気代を下げる」公約を明記すべきだ
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日本経済新聞12月9日のリーク記事によると、政府が第7次エネルギー基本計画における2040年の発電量構成について「再生可能エネルギーを4~5割程度とする調整に入った」とある。
このような重要な数字に関する議論が、これまで非公開で進められ、しかもリーク記事という形で最初に公の場に出てきて、しかもこれが、これまた具体的な文案がまだ1文字も公開されていないエネルギー基本計画案に書きこまれて、1週間後の今月17日にはお飾りの審議会で了承されてしまう様相である。このプロセスはまったく酷い。
発電量構成に話を戻すと、リーク記事によれば、再エネが4~5割程度、原子力が2割程度、火力などが3~4割程度、となっている。
再エネは現状では2割程度(23年度に22.9%)なのだが、この約半分は昔からある水力発電であり、残りの約半分にあたる1割程度が太陽光・風力発電である。
今後の大幅な増大を見込まれているのも太陽光・風力発電だから、政府のいう「4~5割程度」というのは、太陽光・風力発電を現状の3~4倍程度にする、という意味になる。
これは問題だらけだ。太陽光・風力発電は、お天気任せなので、いくら建設しても、火力発電を無くすことはできない。日射がなくても、風が止んでいても、電気は必要だからだ。このため太陽光・風力発電は、本質的に、火力発電に対して二重投資になる。
だからこそ、太陽光・風力発電を大量導入すると、電気料金が大変に高くなる。ドイツの電気料金は欧州の中で最も高い。カリフォルニア州の電気料金は、フロリダ州の倍もする。
再エネ利権にまみれた政府と与党は、このままエネルギー基本計画を策定する構えのようだ。ならば、野党はどう戦えばよいか。
電気料金を抑制することを、エネルギー基本計画に書きこむべきだ。電気料金は、大震災前の2010年水準(キロワットアワー当たりで産業用14円、家庭用21円)に比べて、大幅に高騰していて、2022年には産業用28円、家庭用34円となっている。
この電気料金を、大震災前の2010年の水準に戻す、と明記すべきだ。再エネ大量導入を止め、原子力を再稼働すれば、これは達成できる。
電気料金の目標が明記してあれば、エネ基本計画に再エネ導入の数字目標が書きこまれてしまっても、今後、それを具体化する実施段階において、電気料金上昇につながる愚かな再エネ補助金や再エネ導入規制を止めることができる。
政府が2023年5月に制定したグリーントランスフォーメーション(GX)法では、今後10年間で150兆円ものGX投資をする、としている。
投資といえば聞こえはよいが負担をするのは国民だ。150兆円といえば国民1人あたり120万円で、3人家族ならば360万円になる。実質的な大増税である。しかもこれでどの程度CO2が減るのかも定かでない。政府はグリーン成長をするというが、太陽光や風力に投資しても生産性が低いので経済成長などするはずがない。
先の衆院選で国民民主党は「手取りを増やす」という公約で指示を集めた。いまこそ民主党は「電気代を下げる」という公約を掲げ、国民の生活を守るために再エネ利権と戦うべきだ。
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