S&PのESG評価は人権侵害軽視か

先日、米国23州の司法長官が世界3大格付け機関に対してESG評価を止めるよう警告したという記事を書きました。この中で、S&PグローバルによるESGスコアのおかしさについて指摘しました。
ESGがなぜ利益相反・独禁法違反になるのか | アゴラ 言論プラットフォーム
筆者註:
書簡にある引用元を見たところ、たしかにS&PのESGスコアではシェブロン:28点、エクソン:33点、バレロ:41点、CPC:46点となっています(2026年6月7日現在)。CPCは新疆ウイグル自治区で大規模な石油・ガスの探査および販売事業を展開しているようです。どこが「誰ひとり取り残さない」なのか、大いに疑問が残ります。
そこで、このS&Pのサイトで他社のESGスコアも見てみたところ、大変面白いことが分かりました。はっきり言えば、ESG評価なんて出鱈目もいいところ、というのが結論です。

上記のとおり、石油・ガスなど化石燃料業種の中で米国企業よりも新疆ウイグル自治区内で事業を展開しているCPCの方がESGスコアが高いのはおかしいというのが23州の司法長官による指摘でした。
そこで、ウイグル強制労働防止法(UFLPA)によって輸入差し止めになった太陽光パネルメーカーを調べてみたところ、軒並み70点以上という高評価になっていました。別業種では比較できないと注釈があるので単純比較はできないのでしょうが、それにしてもスコアが高過ぎます。評価基準で人権を軽視していなければこのような結果にはならないはず。
米ウイグル強制労働防止法、太陽光発電製品の輸入差し止めか、メディア報道(中国、米国) | ビジネス短信 ― ジェトロ
米国メディアによると、太陽光発電製品の差し止め事例が相次いでいる。「ウォールストリート・ジャーナル」紙(電子版8月9日)は業界幹部らの話として、いずれも中国の太陽光パネルメーカーのロンジ・グリーンエナジー・テクノロジー、ジンコソーラー、トリナ・ソーラーの3社の製品の輸入が差し止められた、と報じた。

ロンジ:72点
ジンコ:78点
トリナ:64点
他方、上記3社にポリシリコンを供給しているHoshine、DaqoなどUFLPAエンティティリストに掲載されているメーカーについても見てみます。
日本も中国製太陽光発電パネルの輸入を止めるべきだ | キヤノングローバル戦略研究所
米国バイデン政権は24日、ウイグルでの強制労働に関与した制裁として、中国企業5社の製品の輸入を禁止すると発表した(ホワイトハウス発表)。
対象となったのは、
Hoshine Silicon Industry(Shanshan)
Xinjiang Daqo New Energy
Xinjiang East Hope Nonferrous Metals
Xinjiang GCL New Energy Material Technology
XPCC(Xinjiang Production and Construction Corps)である(注:Xinjiangは新疆のローマ字表記でシンジアンと読む)。
UFLPA Entity List | Homeland Security

ホシャイン:19点
ダクォ:24点
GCL:25点
米国政府から輸入禁止措置を受けた点では同じはずですが、なぜかエンティティリストに掲載されている場合はとても低いスコアになっています。
なお、米国の太陽光パネルメーカーであるファーストソーラーは44点なので、ジンコやロンジの70点超えがいかに高得点なのかが分かります。これは化石燃料業種と同じ構図のように見えます。23州の司法長官が怒るのも無理はありません。

ファーストソーラー:44点
他業種について見たところ、主要な日本企業やGAFAMも軒並み60点以下でした。
トヨタ:52点
ホンダ:55点
日産:46点
パナソニック:46点
キヤノン:54点
ソニー:47点
東京電力:51点
中部電力:60点
日鉄:33点
JFE:46点
Alphabet:32点
Apple:33点
Meta Platforms:24点
Amazon:22点
Microsoft:51点
S&Pの評価基準を見たところ、点数配分は不明ですがESGのS(社会性)の中にちゃんと人権、労働慣行の項目があります。なのに強制労働が疑われたり、実際に輸入差し止めという制裁を受けている企業の評価が高いのはなぜでしょうか。とても持続可能な社会や誰一人取り残さない社会につながる評価基準とは思えません。

筆者は5年以上前から繰り返し、ESG評価の中身は出鱈目だと指摘してきました。
- 実はあんまり普通の投資と変わらないESG投資の実態 | アゴラ 言論プラットフォーム
- ESG投資の選定プロセスが企業の生産性を低下させている | アゴラ 言論プラットフォーム
- ESG投資がインデックス投資よりもCO2を排出? | アゴラ 言論プラットフォーム
- ESGの不都合な真実:特集ページ『STOPPING ESG』の紹介 | アゴラ 言論プラットフォーム
- ESGと炭素クレジットの終焉 | 動画 | キヤノングローバル戦略研究所
そもそも業種間で比較できないのであれば投資家にとって何の意味もないはずです。S&PグローバルのESGスコアを参照してESG投資を実践している投資家の方がいらしたらぜひご意見を伺いたいものです。
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