今週のアップデート — 原子力の小型化と安全対策(2012年10月15日)
今週のコラム
1)日本では福島原発事故、先進国では市民の敬遠によって、原発の新規設置は難しくなっています。また使用済み核燃料と、棄物の問題は現在の技術では解決されていません。しかし世界全体で見れば、エネルギー不足の解消のために、途上国を中心に原発の利用や新設が検討されています。
原子力についてどのような考えを持とうと、この現実をめぐる原こうした世界の動きを知り、自らの仕事や社会活動の中で、その情報を活かすべきでしょう。
日本で構想されている、小型、安全性を高めた「4S」原発について発案者の服部禎男氏に寄稿いただきました。「超小型原子炉への期待−事故可能性が極小の原子力利用法の提案」。まだ構想段階ですが、各国が関心を寄せています。
ただし現在は、核物質の拡散への警戒から、各国政府は核物質の管理を強化しています。小型原発は核の拡散を促す危険もあります。その開発と実現までには、乗り越えるべき課題が数多くあります。
2)GEPR編集部は「海外の論調から「放射能よりも避難が死をもたらす」−福島原発事故で・カナダ紙」を提供します。カナダの経済紙「フィナンシャルポスト」に掲載されたエネルギー研究者のコラム「Evacuation a worse killer than radiation」の紹介です。
3)GEPRの提携するNPO法人国際環境経済研究所の澤昭裕所長の論考「原発再稼動の現場(大飯原発を例にして)」を紹介します。澤所長は、行政の混乱を指摘する一方、関西電力の努力によって大飯原発などでの安全対策工事が進んでいることを指摘しています。
今週のリンク
1)「小型炉の研究開発動向」。日本エネルギー経済研究所の紹介コラム。最近の小型原子炉研究の動向をまとめています。
2)「ビル・ゲイツ、東芝が開発する次世代小型原子炉(進行波炉)」
NAVERにまとられた、小型原発の情報リンク集です。
3)「原子力規制委:ストレステスト「審査しない」…田中委員長」
毎日新聞9月24日記事。原子力規制委員会の田中俊一委員長は就任直後のインタビューで、これまで法的根拠なく行われたストレステストについて、原発再稼動の基準にしない考えを示しました。
毎日新聞はこの記事で、他紙と異なりその情報を中心に記事をまとめました。そのためにこの記事はエネルギー関係者に波紋を広げています。この基準のテストの実施を求めることで原発が止まったのに、手続きが白紙に戻りかねないためです。今回寄稿した澤氏の論考でも言及されています。澤氏のコラムを参照してください。
4)「米国の太陽光発電ファイナンスを再想像する」(日本語版)(英語版)。ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンス社がまとめたリポートです。
欧米では、財政事情が悪化したために、再生可能エネルギーへの太陽光の支援策が縮小しています。米国の金融界は太陽光の資金提供事業に乗り出しています。分散、小口化、証券化などを使ったものです。日本では今、自然エネルギーの支援策が拡充されているものの、将来縮小に向かうでしょう。そのために、この情報は日本の金融機関、また購入者にも参考になるでしょう。
5)「放射能よりも避難が死をもたらす」(Evacuation a worse killer than radiation)
カナダ経済紙のフィナンシャルポストコラム。GEPRは今回、このコラムの要旨を紹介しました。

関連記事
-
ロシア軍のウクライナ攻撃を「侵攻」という言葉で表現するのはおかしい。これは一方的な「武力による主権侵害」で、どうみても国際法上の侵略(aggression)である。侵攻という言葉は、昔の教科書問題のときできた言い換えで、
-
北朝鮮の国防委員会は2013年1月24日、国連安全保障理事会の制裁決議に反発して、米国を核兵器によって攻撃することを想定した「高い水準の核実験」を実施すると明言した。第三回目となる核実験。一体、高い水準とは何を意味するのだろうか。小型化、高濃縮ウラン、同時多数実験をキーワードに解読する。
-
はじめに 日本の放射線利用では不思議なことが起きている。胸部エックス線検査を受けたことが無い人はいないだろうし、CT(Computed Tomography)やPET(陽電子放射断層撮影)も広く知られ実際に利用した人も多
-
・本稿では先月に続いて2020年度に迫ったFIT法の抜本改正をめぐる議論の現状を紹介したい。具体的には、5月30日、6月10日にそれぞれ開かれた第14回・第15回再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会
-
福島第一原子力発電所の事故に伴う放射性物質の流出により、食品の放射能汚染がにわかにクローズアップされている。事故から10日あまりたった3月23日に、東京都葛飾区にある金町浄水場で1kgあたり210ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたことが公になるや、首都圏のスーパーマーケットに置いてあったミネラルウォーターがあっという間に売り切れる事態に発展した。
-
国家戦略室が策定した「革新的エネルギー・環境戦略」の問題を指摘する声は大きいが、その中でも、原子力政策と核燃料サイクル政策の矛盾についてが多い。これは、「原子力の長期利用がないのに再処理を継続することは、矛盾している」という指摘である。
-
7月21日、政府の基本政策分科会に次期エネルギー基本計画の素案が提示された。そこで示された2030年のエネルギーミックスでは、驚いたことに太陽光、風力などの再エネの比率が36~38%と、現行(19年実績)の18%からほぼ
-
CO2濃度が増加すると海洋が「酸性化」してサンゴ礁が被害を受けるという意見があり、しばしば報道されている。 サンゴは生き物で、貝のように殻を作って成長するが、海水中のCO2濃度が高まって酸性化してpHが低くなると、その殻
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間