国連、福島事故の人体への健康被害を確認せず — 海外の論調から
原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCAR)は現在、福島で起こった原発事故の評価、また放射線の人体への影響をめぐる議論を重ねている。海外の報道WNN(World Nuclear News)の記事「UN approves radiation advice」を参考に、それをまとめる。これは米国の原子力情報を提供するニュースサイト。
12月の12年12月10日の報道によれば、同月にまとめられた暫定報告書で、同委員会は福島については事故から放出された放射性物質によって、健康影響は予想されないことを確認した。これはWHO(世界保健機関)や東大の調査を参考にしている。また地球上の放射線の自然被曝量(年1—13mSv)のレベルで長期被曝しても、健康に影響しない可能性が高いとしている。
今後数ヶ月以内に、国連総会などの決議を経て、勧告を正式に採択する見通しだ。
福島事故、健康への影響は見つからず
WNNによれば、12月の討議では福島をめぐり同委員会のウォルフガング・ワイス委員長が「観察可能な健康への影響はみつかっていない」と、報告した。6人の作業員が、緊急事態に取り組む間に合計250mSv以上被曝した。また170人は100mSv以上であった。これらの人から健康被害派出ていないし、事故、ならびにそれ以降に死亡した6人の原発作業員の死因に放射線は関係ないとしている。
原発事故では、ヨウ素131の偶発的放出による甲状腺ガンのリスクがある。これは短期間で影響がなくなるものの、子供と若い人々の甲状腺に吸収されることがあり、甲状腺がんの誘因となる。これはチェルノブイリ事故で、主要な健康被害をもたらした。
2011年に日本の当局は、これを含む食物と水の消費を抑制して、福島県の子供たちを守った。日本の子供が受けたと考えられる被曝は最大で35mSvという。アルゼンチンのUNSCEAR代表、ヘラルド・ディアス・バルトロメ氏は、チェルノブイリ事故後に子どもが受けた被曝量と比較し「安心を与えるもので、このよい知らせは強調されなければならない」と、指摘した。
また同委員会は、100mSv以下の低線量被曝について、健康被害の発生の可能性は少ない物であるが、統計の少なさゆえに確定できないという。
独立した国際的な専門家集団であるUNSCEARは1955年以来定期的に会合を開き、原爆生存者とチェルノブイリ事故の影響の研究を通して、放射線の知見を集め、国連加盟諸国に勧告してきた。
(2013年1月21日掲載)
関連記事
-
(GEPR編集部)この報告は、以下の日本学術会議臨床医学委員会放射線防護・リスクマネジメント分科会の審議結果を取りまとめ公表された、「子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題―現在の科学的知見を福島で生かすために―」の要旨
-
トリチウムを大気や海に放出する場合の安全性については、処理水取り扱いに関する小委員会報告書で、仮にタンクに貯蔵中の全量相当のトリチウムを毎年放出し続けた場合でも、公衆の被ばくは日本人の自然界からの年間被ばくの千分の一以下
-
「ドイツが余剰電力を望まない隣国に垂れ流し、今年の冬には反目が一層深まるであろう」「東欧が停電の危機にある」。米系経済通信社のブルームバーグが、ドイツの風力発電の拡大で近隣諸国が悪影響を受けている状況を10月26日に伝えた。記事は「ドイツの風力発電による負荷で、東欧諸国が停電の危機」(Windmills Overload East Europe’s Grid Risking Blackout)。
-
地球が将来100億人以上の人の住まいとなるならば、私たちが環境を扱う方法は著しく変わらなければならない。少なくとも有権者の一部でも基礎的な科学を知るように教育が適切に改善されない限り、「社会で何が行われるべきか」とか、「どのようにそれをすべきか」などが分からない。これは単に興味が持たれる科学を、メディアを通して広めるということではなく、私たちが自らの財政や家計を審査する際と同様に、正しい数値と自信を持って基礎教育を築く必要がある。
-
昨年の福島第一原子力発電所における放射性物質の流出を機に、さまざまなメディアで放射性物質に関する情報が飛び交っている。また、いわゆる専門家と呼ばれる人々が、テレビや新聞、あるいは自らのブログなどを通じて、科学的な情報や、それに基づいた意見を発信している。
-
石炭火力発電の建設計画が次々に浮上している。電力自由化をにらみ、経済性にすぐれるこの発電に注目が集まる。一方で、大気汚染や温室効果ガスの排出という問題があり、環境省は抑制を目指す。政府の政策が整合的ではない。このままでは「建設バブルの発生と破裂」という、よくあるトラブルが発生しかねない。政策の明確化と事業者側の慎重な行動が必要になっている。
-
事故を起こした東京電力の福島第一原子力発電所を含めて、原子炉の廃炉技術の情報を集積・研究する「国際廃炉研究開発機構」(理事長・山名元京大教授、東京、略称IRID)(設立資料)は9月27日までの4日間、海外の専門家らによる福島原発事故対策の検証を行った。27日の最終会議の一部が、報道陣に公開された。
-
池田・全員の意見で「エネルギーと安全保障は密接に絡み合っている」ということが一致しています。よく「命さえあれば、お金がなくても大丈夫」と言われますが、現実には違います。お金がなければ命を維持するためのエネルギーもつくれません。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間















