活断層だけに注目する安全対策は無意味 — シンポジウム報告
活断層という、なじみのない言葉がメディアに踊る。原子力規制委員会は2012年12月、「日本原電敦賀原発2号機直下に活断層」、その後「東北電力東通原発敷地内の破砕帯が活断層の可能性あり」と立て続けに発表した。田中俊一委員長は「グレーなら止めていただく」としており、活断層認定は原発の廃炉につながる。しかし、一連の判断は妥当なのだろうか。
民間有識者からなる日本エネルギー会議は25日、「活断層とは何か」というシンポジウムを開催した。活断層をめぐる理解を深め、それが原子力プラントにどのように影響するのかについて、論点を整理した。内容を報告する。

有馬 朗人(ありま あきと)氏
シンポジウムのポイント−「リスクはそれだけではない」
日本エネルギー会議の発起人代表であり核物理学者、元東大総長でもある有馬朗人氏が冒頭講演、そしてまとめを行った。科学者としての冷静な視点からの指摘に、シンポジウムの議論のポイントがある。
「活断層のあるなしと、黒白は簡単につけられるものではないようだ。そもそも原発のリスクは活断層だけではない。また日本全国には、活断層の上に、新幹線、高速道路、工業プラントなどがたくさんある。原発だけではなく、総合的な工学的防災を検討すべきではないだろうか」。
「東日本大震災以降、予測、防災の力の及ばないところのあった科学への信頼が落ちてしまった。残念ながらこれは実績を重ねることでしか再構築できないだろう。『原子力の安全な利用』という同じベクトルを再確認し、国、事業者、学会が力を合わせて問題を解決して行くべきだ」
この正論は規制委員会には届くのだろうか。
活断層をめぐる誤解–存在が危険とは限らない
その後、専門家の講演と討議が行われた。
活断層とは「地殻運動を繰り返した断層であり、今後もなお活動するべき可能性のある断層」を言う。これまでの基準では10万年動かない断層とされたが、今後40万年に厳しくしようと言う意向だ。ところが、10万年以降は、明確な痕跡が見つけられず、おそらく明確には分からないそうだ。
山崎晴雄首都東京大学教授が「断層、そして活断層とは何か?」という講演を行った。「活断層には誤解がある」と山崎教授は指摘した。俗信として「活断層の上は強い地震動に襲われる」「活断層が動くと地表にずれが生じる」というものがある。ところがそうとは限らないという。
前者については地盤構造で揺れの姿は違うし、後者についてはこれまでの地震ではずれよりも火災や建造物の倒壊などによる被害が大きい。「マスコミ情報などの恐怖に振り回されず、何ができるのかを考える事が対策に必要だ」と山崎教授は述べた。
東京大学岡本孝司教授は「活断層は原子力発電のリスクの一つであり、他にもリスクはたくさんある。本来原発の安全性を高めるという目的であれば、すべてのリスクを総合的に評価し、それに対し工学的見地やマネジメントの視点などからどのように対策を講じて行くかを考えて行くのが筋。活断層だけに注目しすぎると他のリスクへの対応がおろそかになり、結果として原子力の安全性は間違いなく低下する」と指摘した。
広島大学の奥村晃史教授は以前、原子炉の耐震審査に関わった。「事業者による詳細な調査データをベースにした科学的な議論だった。そこには癒着やなれ合いなどはなく、相当緊張感を伴うハードなものであった。それにもかかわらず、現在の規制委員会は過去の積み重ねを一切無視、排除し断片的な情報を基に判断を下そうとしている。これを看過することはできない。規制者は事業者を信頼することから始めなければ決して安全は向上しない」。
規制委員会の行動への疑問—冷静にリスクの洗い出しを
専門家の話をまとめると、事業者の意見を聞かずに活断層を認定して、原子炉を廃炉に持ち込もうとする、現在の規制委員会の対応には問題がある。規制委員会は昨年秋に発足した。福島原発事故の前に、適切な規制で防止のできなかった原子力安全・保安院を改編する形で、独立行政委員会として始まった。しかし現在まで打ち出されている政策では、電力事業者の意見を聞かず、一方的に通達を押し付ける高圧的な態度が目立つ。
今回の専門家の意見から分かったのは、活断層だけが原発のリスクではないことだ。安全を総合的に考え、その中で活断層を考えるという直しい方向に、規制委員会は転換することが必要ではないだろうか。
原子力規制委員会は原子力発電所の新安全基準の骨子を今月末にも公表する。そこでは事業者と協調して安全を確保する適切な規制を打ち出す事を望みたい。
アゴラ研究所フェロー ジャーナリスト 石井孝明
(2013年1月28日掲載)
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