今週のアップデート=最適な温暖化対策とは? — 選択肢としての原子力(2013年4月15日)
今週のアップデート
GEPRの運営母体であるアゴラ研究所は映像コンテンツである「アゴラチャンネル」を提供しています。4月12日、国際環境経済研究所(IEEI)理事・主席研究員の竹内純子(たけうち・すみこ)さんを招き、アゴラ研究所の池田信夫所長との対談「忘れてはいませんか?温暖化問題–何も決まらない現実」を放送しました。
現状の対策を整理し、何ができるかを語り合いました。議論で確認されたのは、温暖化問題では「地球を守れ」などの感情論が先行。もちろんそれは大切ですが、冷静な対策の検証と合意の集積が必要ではないかという結論になりました。そして温暖化問題に向き合う場合には、原子力は対策での選択肢の一つとして考えざるを得ない状況です
同じく、竹内純子さんの寄稿記事です。英国エコノミスト誌が取り上げ、世界中で話題になっている記事の紹介です。温暖化が予想よりも進んでいないことを示しています。
元電力会社勤務の石井陽一郎氏からの投稿を紹介します。公開資料から、自然エネルギーと原子力の関係を分析しています。
今週のリンク
1)注意すべき問題
英誌エコノミスト
英経済誌の3月30日公表の記事。原題は「A sensitive matter」。竹内純子さんの寄稿で紹介されました。温暖化が、予想よりも進行していないという事実を紹介しています。
2)福島第1原発:1号でも漏水 判断に甘さ露呈 2号移送最優先、汚染し続ける可能性も
毎日新聞
4月14日記事。福島第一原発の事故処理で汚染水の漏洩が問題になっています。冷却等に使う汚染水のタンクから、土壌への漏洩が確認されています。汚染水そのものも、処理で切れずにたまっている状況。事故から2年、繰り返される東電の失態は、批判されなければなりません。
3)ドイツの電力輸出、第1四半期で2倍に、安い石炭火力発電
プラッツ
エネルギー通信社の4月12日記事。原題は「German power exports double in Q1 on cheap coal, carbon」。日本ではドイツの電力輸出が、再生可能エネルギーによるものとされます。しかし、この記事によれば石炭火力の増設によるものです。またドイツは、負荷調整のため輸出に電力を使っている面もあります。参考として。「海外の論調から「ドイツの風力発電による負荷で、東欧諸国が停電の危機」」
4)米国防総省分析「北朝鮮の核は米国に到達可能」
ニューヨークタイムズ
同紙11日記事。原題は「Pentagon Finds Nuclear Strides by North Korea」。北朝鮮をめぐる緊張が高まっています。同国は保有する核兵器の使用を周辺諸国に、「無慈悲な業火が焼き尽くす」などの文言で示唆し、脅迫しています。この記事ではCIAなど米国の諜報機関のトップの10日の議会証言を紹介。北朝鮮は弾道ミサイルに搭載できるだけの小型化にほぼ成功し、それは米国に届くが、ミサイルを誘導して特定のターゲットに正確に命中させる能力(信頼性)はまだ低いと分析しています。
5)福島県内における大規模な内部被曝調査の結果–福島第一原発事故7−20カ月後の成人および子供の放射性セシウムの体内量(日本語妙訳)(英語要旨)
日本学士院紀要
東京大学理学部の早野龍五教授らによる研究、調査チームの報告。原発事故後の内部被ばくが、ほとんど観察されないという内容です。これは福島県民の皆さんが冷静に対応して被ばくを避けたことも影響しているのでしょう。不必要な恐怖に困惑するのではなく、このような情報を参考にしながら、冷静に放射能汚染に向き合うべきでしょう。
関連記事
-
スティーブン・クーニン著の「Unsettled」がアマゾンの総合ランキングで23位とベストセラーになっている。 Unsettledとは、(温暖化の科学は)決着していない、という意味だ。 本の見解は 気候は自然変動が大きい
-
米国シェールガス革命に対する欧州と日本の反応の違いが興味深い。日本では、米国シェールガス革命によって日本が安価に安定的に燃料を調達できるようになるか否かに人々の関心が集中している。原子力発電所の停止に伴い急増した燃料費負担に苦しむ電力会社が行った値上げ申請に対し、電気料金審査専門委員会では、将来米国から安いシェールガスが調達できることを前提に値上げ幅の抑制を図られたが、事ほど左様に米国のシェールガス革命に期待する向きは大きい。
-
原子力発電は「トイレの無いマンション」と言われている。核分裂で発生する放射性廃棄物の処分場所が決まっていないためだ。時間が経てば発生する放射線量が減衰するが、土壌と同じ放射線量まで減衰するには10万年という年月がかかる。
-
政府は電力改革、並びに温暖化対策の一環として、電力小売事業者に対して2030年の電力非化石化率44%という目標を設定している。これに対応するため、政府は電力小売り事業者が「非化石価値取引市場」から非化石電源証書(原子力、
-
合理性が判断基準 「あらゆる生態学的で環境的なプロジェクトは社会経済的プロジェクトでもある。……それゆえ万事は、社会経済的で環境的なプロジェクトの目的にかかっている」(ハーヴェイ、2014=2017:328)。「再エネ」
-
経済産業省は再生可能エネルギーの振興策を積極的に行っています。7月1日から再エネの固定価格買取制度(FIT)を導入。また一連のエネルギーを導入するための規制緩和を実施しています。
-
スウォーム(swarm)とはウジャウジャと群れる・・・というイメージである。 スウォームについては、本稿「AIナノボットが核兵器を葬り去る」にて論じたことがある。 今回はスウォームのその後の開発展開とその軍事的意味合いに
-
現在の日本のエネルギー政策では、エネルギー基本計画(2014年4月)により「原発依存度は、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」こととなり、電力事業者は今後、原発の新増設が難しくなりました。原発の再稼動反対と廃止を訴える人も増えました。このままでは2030年以降にベースロード電源の設備容量が僅少になり、電力の供給が不安定になることが懸念されます。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間