【言論アリーナ・記事2】研究会・もんじゅ、核燃料サイクルの行方
(1)より続く。
【コメント1・ウランは充分あるか?・小野章昌氏】
(小野氏記事「ウランは充分あるか?」)
無資源国日本ではエネルギー安全保障上、原子力しかない。莫大な金をかけて石油備蓄しているが、これは1回使ったら終わりだ。MOX燃料をプルサーマル発電で軽水炉に用いると、その使用済み燃料にまたプルトニウムがたまる。ただウランの使用済み燃料に比べて体積が7分の1くらいなので、効率よくプルトニウムを貯められる。貯まったプルトニウムは日本にとって貴重な資源であり、再処理は維持すべきである。
ウラン資源は確認埋蔵量が重要である。IAEAのレッドブックの最新のものによれば、その量は460 万トンであり、地球温暖化対策としての原子力利用の伸びを考えたら、20 年~30 年で枯渇する計算となる。
たしかに、池田氏の言うように非在来型ウランの調査が進んでいる。しかし現時点でそれがどの程度使えるかは未知数だ。商業化のためには、量、採掘可能性、生産性を明確にしなければならない。リン鉱石のウランの利用は濃度が一般的ウラン鉱床の10分の1であり、ウランだけ取るのは割高である。海水中のウランはリン鉱石のさらに10万分の1であり、膨大な海水を処理することを考えても、あてにするわけにはいかない。
日本にはウラン鉱山の開発利権もなければ技術もない。将来的に中国などとの購入競争に勝てる見通しはない。核燃料サイクルの政策の選択肢は多様性が必要なことはわかるが、その中で絞っていくことが必要である。フランス、ロシア、中国、インドは再処理、高速炉路線で進んでいる。アメリカは参考にならない。資源国で、国土が広いからだ。
【コメント2・日本が保有するプルトニウムでは核武装はできない・河田東海夫氏】
(河田氏記事「日本が保有するプルトニウムでは核武装はできない」)
1・核燃料サイクルについて
再処理をやめると使用済み燃料の最終処分は「直接処分」しかない。直接処分の問題点はガラス固化体に比べて発熱量が大きいこと。その結果廃棄体の埋設間隔を大きくとらねばならず、単位発電量あたりの処分場の面積がガラス固化体にくらべて3倍ほどになる。これは今の日本の30ギガワットの発電規模で羽田飛行場埋立地規模の処分場を30年に1つずつ建設することに相当する。再処理をすれば、同じ広さで80年もつし、高速炉時代には100年以上もつ。kWh当たり1円以下の上乗せの負担で済むのだから、国土の狭い日本では再処理路線は死守すべし。
また、直接処分では長半減期のプルトニウムを一緒に埋設するので、放射性毒性がウラン鉱石並みになるのに10万年かかるが、ガラス固化体は1万年程度で済む。放射性物質管理次第では、1000年に減らせるだろう。
ガラス固化体の最終処分地の選定だけでも日本では難儀しているのに、プルトニウムを埋める直接処分では場所が見つからないであろう。処分の見通しがたたなければ、中間貯蔵を受け入れる地元もない。
核燃料サイクルの再処理を止めれば、結局軽水炉は、直ちに「糞詰まり死」するだろう。
2・軽水炉使用済み燃料のプルトニウムの核兵器への利用について
原子力利用の当初の隠された目的は「日本の核武装に有った」との池田氏の話はあったかもしれない。しかし実際に、原子炉級のプルトニウムは核兵器に使えない
軽水炉の使用済燃料から得られる原子炉級プルトニウムは兵器級のプルトニウムにくらべて、発熱量が何倍も大きいため、ミサイルに搭載可能な本格的な核兵器は作れない。作れるのは、パーツで持ち込んで現場で組み立てて爆発させるような核爆発装置程度だ。
本格的な核武装をするなら、専用のプルトニウム生産炉が必要だ。IAEAで保障措置担当事務局次長を長年務めたブルーノ・ペロー氏は、引退後、すべての品質のプルトニウムを同じ厳しさで管理するのは保障措置上バランスを欠いており、グレード別管理を導入すべきであるという論文を発表している。原子炉級プルトニウムの管理はもう少し緩めてよいとの趣旨だが、現役時代にそれをほのめかしたら、米国から強烈な圧力がかかったという。
【質疑応答】
問1・池田氏は、エネルギー安全保障の観点からの指摘が少なかったが、もう少し説明してほしい。
答(池田)・気候変動問題を考えたら、また日本の無資源という状況を考えたなら、100年は原子力しかないことは事実である。しかしながら、気候変動問題、原子力の核燃料サイクルはUNKNOWNファクターが多すぎる。そんな場合にはオプショを広くとることがセキュリティーにつながる。核燃料サイクルでは、うまくいった場合と、いかなかった場合の両方を考えておく必要がある。
問2・使用済み燃料の直接処分といっても、プルトニウム資源として残しておくという考えもあるのではないか。
答(池田)・今は資源としては使えない。学術会議でも再処理しないで暫定保管と言っている。これは乾式のキャスクによる中間貯蔵と同じことで、オプションとして考えればよい。反対派も納得するのではないか。
問3・原子力のリスクをオプションの中でどう考えればよいのか。
答(池田)・原子力のリスクは一般に言われるほど大きなものではない。過去70年で原子力発電による死者は、チェルノブイリ、福島の事故を含めても、数十人単位だ。一方で石炭では年間30万人の死者が出ているといわれていPM2.5だけで年36万人、火力発電の影響が半分として年20万人である。しかし、多くの人はこのリスクの差を認識しない。政策は合理的に決まらない。
原子力事故があったらそれが極大になる可能性がある。いわゆる「テールリスク」というものだ。リスク回避策は経済学でも、試行錯誤だが選択肢、柔軟性を持つ必要があることはたしかだろう。
関連記事
-
きょうは「想定」「全体像」「共有」「平時と有事」「目を覚ませ」という話をします。多くの人は現象を見て、ああでもない、こうでもないと話します。しかし必要なのは、現象から学び、未来に活かすことです。そうしなければ個々の事実を知っていることは、「知らないよりまし」という意味しかありません。
-
今年も3・11がやってきた。アゴラでは8年前から原発をめぐる動きを追跡してきたが、予想できたことと意外だったことがある。予想できたのは、福島第一原発事故の被害が実際よりはるかに大きく報道され、人々がパニックに陥ることだ。
-
英フィナンシャル・タイムズ7月19日記事。シェールガスで大量の生産が始まった米国から産出の中心である中東へガスが輸出された。エネルギーの流れが変わろうとしている。
-
GEPRを運営するアゴラ研究所は映像コンテンツ「アゴラチャンネル」を放送している。5月17日には国際エネルギー機関(IEA)の前事務局長であった田中伸男氏を招き、池田信夫所長と「エネルギー政策、転換を今こそ--シェール革命が日本を救う?」をテーマにした対談を放送した。
-
判定の仕組みも問題だ。原子力規制委員会の決定は、制度上は5人の委員の合議で決まることになっている。しかし今は島崎氏が地震関係業務を一人で引き受けている。島崎氏はこれまで原子力関係の規制づくり、判定の経験がほとんどない地震学者だ。委員に就任してから、事業者とほとんど対話をせずに規制基準をつくり、そしてその後は自ら判定者となってしまった。日本各地の原発の周辺で意味があるとは思えない「穴掘り」を繰り返している。
-
NRCは同時多発テロの8年後に航空機落下対策を決めた 米国は2001年9月11日の同時多発テロ直後、米国電力研究所(EPRI)がコンピュータを使って解析し、航空機が突入しても安全は確保されると評価した。これで仮に、同時多
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
小島・農水省の中に、遺伝子組み換え作物の栽培の計画を持っている人がいました。ところが民主党政権が成立して、全部つぶれてしまいました。それがそのまま放置されている状況です。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間














