2050年CO2ゼロでも、0.01℃も下がらないし豪雨は1mmも減らない
2050年にCO2をゼロにすると宣言する自治体が増えている。これが不真面目かつ罪作りであることを前に述べた。
本稿では仮に、日本全体で2050年にCO2をゼロにすると、気温は何度下がり、豪雨は何ミリ減るか計算しよう。
すると、気温は0.01℃も下がらず、豪雨は1mmも減らないことが分かる。
つまり日本が2050年までにCO2をゼロにするかどうかは、日本の防災には殆ど全く関係が無い。自治体にせよ、政府にせよ、このことをきちんと理解し、住民にも説明すべきである。それ無くして「2050年CO2ゼロ」を安易に宣言してはならない。
1 計算方法
計算方法は以前述べたが、以下におさらいをしよう。
気温上昇は、TCRE= 1.6(℃/兆トンC)という係数を使って、累積の排出量を用いて以下のように計算できる。この方法は、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change:IPCC)報告によるものだ。
気温上昇(℃)= 1.6(℃/兆トンC)×累積CO2排出量(兆トンCO2) (1)
降水量は、気温1℃が上がると水蒸気量が増え、引いては降水量が6%増えるというクラウジウス・クラペイロン関係を用いる。
降水量増加(%) = 気温上昇(℃)×6 (%/℃) (2)
2 計算手順
式(1)(2)を用いて2050年について計算すると、表のようになる。順に説明しよう。
まずAはTCREである。TCREは1兆トンCあたりで1.6℃である。
BはCO2排出量が現状(=10億トン)から2050年まで30年間にわたり横ばいで推移したと仮定した場合の累積の排出量である。
Cは、その時の2050年における気温上昇を式(1)を用いて計算したもの。備考のところで、3.67で割っているのは、TCREがトンCあたりで定義されているので、トンCO2あたりに直すためである。CO2の分子量が44、 Cの分子量が12なので、3.67で割っている。
Dは、2050年にCO2をゼロにした場合の気温低下である。2021年から直線的にCO2をゼロにするとなると、今後30年間の平均でのCO2の排出削減量はBの半分になるから、気温低下DはCの半分になる。
Eは、式(2)を用いて、1日で500mmの豪雨の降水量が、Dの気温低下によって、どれだけ減少するかを計算したものである。
3 計算結果とその意味
表から、日本全体で2050年にCO2ゼロを達成することによる気温の低下(D)は0.0065℃であり、つまり0.01℃にもならないことが分かった。またこのときの豪雨の減少(E)は0.196mmであり、つまり1mmにもならないことが分かった。
なぜこのように僅かなのか。理由は2つある。
第1は、温暖化は緩やかな変化だからだ。過去にも温暖化は起きてきたが、同じく緩やかであった。台風、豪雨、猛暑の何れにも、殆ど温暖化の影響は無かった。
第2は、日本の排出量は世界の内で僅かだからだ。図を見ると、日本の排出は世界の3%に過ぎないことが分かる。
関連記事
-
前回、非鉄金属産業の苦境について書いたが、今回は肥料産業について。 欧州ではエネルギー価格の暴騰で、窒素肥料の生産が7割も激減して3割になった。 過去、世界中で作物の生産性は上がり続けてきた。これはひとえに技術進歩のお陰
-
GEPRの運営母体であるアゴラが運営するインターネット放送の「言論アリーナ」。6月25日の放送は「原発はいつ再稼動するのか--精神論抜きの現実的エネルギー論」をまとめました。
-
そもそも原子力水素とは何か 原子力水素とは、原子力をエネルギー源として製造される水素のことをいう。2050カーボンニュートラル実現のためには運輸、産業、果ては発電においても水素を利用することがキーポイントなるといわれてい
-
ポーランドの首都ワルシャワから、雪が降ったばかりの福島に到着したのは、2月2日の夜遅くでした。1年のうち、1月末から2月が、福島においては最も寒い季節だと聞きました。福島よりもさらに寒いワルシャワからやって来た私には、寒さはあまり気にならず、むしろ、福島でお目にかかった皆さんのおもてなしや、誠実な振る舞いに、心が温められるような滞在となりました。いくつかの交流のうち特に印象深かったのが、地元住民との食の安全に関する対話です。それは福島に到着した翌朝、川内村で始まりました。
-
地球温暖化予測に使う気候モデルは、上空(対流圏下部)の気温も海水面温度も高くなりすぎる、と言う話を以前に書いた。 今回は地上気温の話。米国の過去50年について、観測値(青)とモデル計算(赤)の夏(6月から8月)の気温を比
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンク「GEPR」(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
3.11から7年が経過したが、我が国の原子力は相変わらずかつてない苦境に陥っており、とくに核燃料サイクルやバックエンド分野(再処理、プルトニウム利用、廃棄物処分など)では様々な困難に直面している。とりわけプルトニウム問題
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間