地球の平均気温が急降下 温暖化はこのまま消滅するのか?
人工衛星からの観測によると、2021年の3月に世界の気温は劇的に低下した。

MicroStockHub/iStock
報告したのは、アラバマ大学ハンツビル校(UAH)のグループ。元NASAで、人工衛星による気温観測の権威であるロイ・スペンサーが紹介記事を書いている。
図の縦軸は測定した気温である。1991年から2020年までの平均をゼロとしてそこからの差で示してある。青丸が毎月の観測値、赤い線は前後13カ月の移動平均である。気温測定の対象は地球全体の地上から高度9000m付近までの大気(これは対流圏下部と呼ばれる)。
地上の観測所は都市化などの影響を受けやすいが、衛星による観測はそのような誤差が混入しないという利点がある。また、地上付近だけではなく、大気圏全体を測定した方が、地球温暖化の観測としてはより適切になる。
さて図を見ると、2021年3月の気温は-0.01度だった。つまり地球の気温は1991年から2020年までの平均にほぼ戻った! ということだ。
これは2021年2月の値+0.20度からの大幅な低下だった
この大幅な気温の低下は、進行中の「ラニーニャ現象」の影響によると見られている。2016年以来これまで「エルニーニョ現象」で高い気温が続いていたのが、一気に反転した。ちなみにエルニーニョ・ラニーニャとは、南米沖の海面温度が数年程度の間隔で変動する、というものだ。エルニーニョだと地球は暑くなり、ラニーニャだと寒くなることが知られている。
今後、この傾向が定着して、2000年代に一貫してそうだったように、地球全体の気温は低いまま推移するのか。それとも上昇に転じるのか。
この低温傾向が今年末にイギリスで開催される国連会議COP26まで続くようだと、温暖化に関する国際政治にも影響を与えるだろう。引き続き注目されるところである。

関連記事
-
東京電力に寄せられたスマートメーターの仕様に関する意見がウェブ上でオープンにされている。また、この話題については、ネット上でもITに明るい有識者を中心に様々な指摘・批判がやり取りされている。そのような中の一つに、現在予定されている、電気料金決済に必要な30分ごとの電力消費量の計測だけでは、機能として不十分であり、もっと粒度の高い(例えば5分ごと)計測が必要だという批判があった。電力関係者とIT関係者の視点や動機の違いが、最も端的に現れているのが、この点だ。今回はこれについて少し考察してみたい。
-
眞鍋叔郎氏がノーベル物理学賞を受賞した。祝賀ムードの中、すでに様々な意見が出ているが、あまり知られていないものを紹介しよう。 今回のノーベル物理学賞を猛烈に批判しているのはチェコ人の素粒子物理学者ルボシュ・モトルである。
-
小泉進次郎環境相が「プラスチックが石油からできていることが意外に知られていない」と話したことが話題になっているが、そのラジオの録音を聞いて驚いた。彼はレジ袋に続いてスプーンやストローを有料化する理由について、こう話してい
-
笹川平和財団が発表した「プルトニウム国際管理に関する日本政府への提言」が、原子力関係者に論議を呼んでいる。これは次の5項目からなる提言である。 プルトニウム国際貯蔵の追求:「余剰」なプルトニウムを国際原子力機関(IAEA
-
中国の台山原子力発電所の燃料棒一部損傷を中国政府が公表したことについて、懸念を示す報道が広がっている。 中国広東省の台山原子力発電所では、ヨーロッパ型の最新鋭の大型加圧型軽水炉(European Pressurized
-
米国の元下院議長であった保守党の大物ギングリッチ議員が身の毛がよだつ不吉な予言をしている。 ロシアがウクライナへの侵略を強めているのは「第二次世界大戦後の体制の終わり」を意味し、我々はさらに「暴力的な世界」に住むことにな
-
今春、中央環境審議会長期低炭素ビジョン小委員会がとりまとめた報告書では、長期の脱炭素化に向けた施策の中核としてカーボンプライシングを挙げている。この問題については、今後、国内的にも様々な議論が行われることになるだろう。そ
-
アメリカでは地球温暖化も党派問題になっている。民主党系は「温暖化は深刻な脅威で、2050年CO2ゼロといった極端な温暖化対策が必要だ」とする。対して共和党系は「それほど深刻な問題ではなく、極端な対策は必要ない」とする。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間