気温の自然変動は大きい 〜地球温暖化は僅かに過ぎぬ

2021年04月30日 12:30
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

batuhan toker/iStock

地球が温暖化しているといっても、ごく僅かにすぎない。気温の自然変動は大きい。

以下、MITの気候学の第一人者リチャード・リンゼンと元NASAで気温計測の嚆矢であるアラバマ大学ジョン・クリスティによる解説を紹介する。

我々が通常目にする「地球温暖化」のグラフは図1のようなものだ。

図1:いわゆる「地球温暖化」のグラフ

データはバークレー大学のもの。空間的には地球全体で平均化され、時間的には前後11年の平均(移動平均という)が施してある。このようなグラフは、「地球温暖化が起きています!」というためによく使われる。

けれども、この縦軸を見ると、じつは地球温暖化は120年で僅か1.2℃に過ぎない。

1.2℃というのは、人間が感じることのできるギリギリの気温差ではなかろうか。筆者には、少なくとも、区別できない。

だが図1では、あまりたいしたことのない気温の上昇が、さも一大事であるかのように見える。

トリックは「平均操作」にある。一つ一つの観測所のデータを見ると、じつは自然変動はものすごく大きい。その時間的な傾向も、観測所ごとに全く異なり、気温が上がるところ、下がるところ、様々である。

図2で、それを端的に見ることができる。「観測所ごと、かつ、季節ごと」の気温の平年からの差分を見ると、プラスマイナス4℃ぐらいあるのはごく普通のことだと解る。言い換えると、例えば、「今年の冬は例年より4℃も寒かった」などということは、頻繁に起きてきた訳だ。

このように、「空間的な平均」を取るのをやめ、「時間的な平均」の期間を短くすると、「120年で1.2℃の地球温暖化」なるものは、人々が感じている日々の気温の変化とは、全く関係のないものだと理解できる。

図2:「観測所ごと、かつ、季節ごと」の気温偏差(黒丸)。黄色四角は地球平均。

最後に、この1.2℃の地球温暖化を、人々が日々感じつつ、しかも何の問題も無く対処している大きな気温差と比較したのが、図3である。

図3:人々が日々感じて対処している気温上昇の大きさと、過去120年の地球温暖化との比較。

ここでは「1.2℃の地球温暖化」は線の太さぐらいしかない。図中に示してある「8時から10時の気温上昇」、「日没から午後までの気温上昇」、「1月から7月の気温上昇」などの方がはるかに大きい。

「1月と7月の平均気温の差」はわりと過ごしやすいロスアンジェルスでも10℃もあり、寒暖の激しいシカゴだと30℃にも達する! 「年間で最も暑い時と最も寒いときの気温差」は、海に近いマイアミでも25℃もあり、内陸のデンバーだと55℃にも達する!

気温の自然変動はとても大きいのだ。

観測される大きな気温差を、地球温暖化のせいにするのは、完全なる間違いだ。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 自民党河野太郎衆議院議員は、エネルギー・環境政策に大変精通されておられ、党内の会議のみならずメディアを通じても積極的にご意見を発信されている。自民党内でのエネルギー・環境政策の強力な論客であり、私自身もいつも啓発されることが多い。個人的にもいくつかの機会で討論させていただいたり、意見交換させていただいたりしており、そのたびに知的刺激や新しい見方に触れさせていただき感謝している。
  • 山梨県北杜市(ほくとし)における太陽光発電による景観と環境の破壊を、筆者は昨年7月にGEPR・アゴラで伝えた。閲覧数が合計で40万回以上となった。(写真1、写真2、北杜市内の様子。北杜市内のある場所の光景。突如森が切り開
  • ウクライナ戦争の帰趨は未だ予断を許さないが、世界がウクライナ戦争前の状態には戻らないという点は確実と思われる。中国、ロシア等の権威主義国家と欧米、日本等の自由民主主義国家の間の新冷戦ともいうべき状態が現出しつつあり、国際
  • 産経新聞によると、5月18日に開かれた福島第一原発の廃炉検討小委員会で、トリチウム水の処理について「国の方針に従う」という東電に対して、委員が「主体性がない」と批判したという。「放出しないという[国の]決定がなされた場合
  • 2050年にCO2ゼロという昨年末の所信表明演説での宣言に続いて、この4月の米国主催の気候サミットで、菅首相は「日本は2030年までにCO2を46%削減する」ことを目指す、と宣言した。 これでEU、米国・カナダ、日本とい
  • 総選挙とCOP26 総選挙真っ只中であるが、その投開票日である10月31日から英国グラスゴーでCOP26(気候変動枠組条約第26回締約国会議)が開催される。COVID-19の影響で昨年は開催されなかったので2年ぶりとなる
  • シンポジウムの第2セッション「原発ゼロは可能か」で、パネリストとして登場する国際環境経済研究所理事・主席研究員の竹内純子さんの論考です。前者はシンポジウム資料、後者は竹内さんが参加した、温暖化をめぐるワルシャワでの国際会議でのルポです。シンポジウムを視聴、参加する皆さまは、ぜひ参考にしてください。
  • 国会事故調査委員会が福島第一原発事故の教訓として、以前の規制当局が電気事業者の「規制の虜」、つまり事業者の方が知識と能力に秀でていたために、逆に事業者寄りの規制を行っていたことを指摘した。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑