アフリカから化石燃料を奪う欧州の偽善
英独仏を含む欧州7か国が、海外における化石燃料事業への公的支援を段階的に停止する、と宣言した。
だが、もちろんアフリカには経済開発が必要であり、化石燃料はそのために必須だ。このままでは、先進国の偽善によって、貧困からの脱出が出来なくなる。

hadynyah/iStock
悲痛な叫びのような論文が学術誌Natureに掲載された。書いたのはビジャヤ・ラマチャンドランで、現在は米国ブレークスルー研究所に所属している。
概要は以下の通り:
- アフリカは世界人口の17%だがCO2排出は僅か4%に過ぎない
- エチオピア人は年間で130キロワット時しか電力を消費していない。これは米国人の4日分しかない。
- 電力不足がアフリカの経済開発を妨げている。食料は高価で、雇用は不足している。
- グリーン電力だけでは道路、学校、住宅などを開発できない。
- 天然ガス資源は豊富に存在するが開発されていない。
- 天然ガスを開発すれば、それを原料として肥料も生産できて、食料供給も増える。
- 化石燃料利用の禁止は再生可能エネルギーの成長をむしろ阻む。風力・太陽光発電を導入すると、出力の変動によって送電網が不安定になるので、化石燃料による火力発電が必須になる。
ラマチャンドランは、持続可能な開発のためには化石燃料が必要であり、それをアフリカから取り上げることは「不公正の極み」である、と述べている。
日本は欧米に同調することなく、アフリカを始め、貧しい国々の化石燃料開発を支援すべきだ。
もしも日本や欧米がそっぽを向けば、アフリカ諸国は中国に頼ることになり、権威主義的な傾向を強めるだろう。これはアフリカの人々の将来にとっても、そして日本や欧米にとっても、望ましくない未来ではなかろうか。

関連記事
-
はじめに 国は、CO2排出削減を目的として、再生可能エネルギー(太陽光、風力、他)の普及促進のためFIT制度(固定価格買取制度(※))を導入し、その財源を確保するために2012年から電力料金に再エネ賦課金を組み込んで電力
-
前回に続き、最近日本語では滅多にお目にかからない、エネルギー問題を真正面から直視した論文「燃焼やエンジン燃焼の研究は終わりなのか?終わらせるべきなのか?」を紹介する。 (前回:「ネットゼロなど不可能だぜ」と主張する真っ当
-
評価の分かれるエネルギー基本計画素案 5月16日の総合資源エネルギー調査会でエネルギー基本計画の素案が了承された。2030年の電源構成は原発20-22%、再生可能エネルギー22-24%と従来の目標が維持された。安全性の確
-
福島の原発事故から4年半がたちました。帰還困難区域の解除に伴い、多くの住民の方が今、ご自宅に戻るか戻らないか、という決断を迫られています。「本当に戻って大丈夫なのか」「戻ったら何に気を付ければよいのか」という不安の声もよく聞かれます。
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 前回、論点㉔で、地域ごとに見ると気温は大きく変動してきた
-
国際環境経済研究所のサイトに杉山大志氏が「開発途上国から化石燃料を奪うのは不正義の極みだ」という論考を、山本隆三氏がWedge Onlineに「途上国を停電と飢えに追いやる先進国の脱化石燃料」という論考を相次いで発表され
-
2/27から3/1にかけて東京ビッグサイトにおいて太陽光発電の展示会であるPV expoが開催された。 ここ2年のPVexpoはFIT価格の下落や、太陽光発電市場の縮小を受けてやや停滞気味だったが、今年は一転「ポストFI
-
前回の投稿においてG20エネルギー移行大臣会合の合意失敗について取り上げたが、その直後、7月28日にチェンナイで開催されたG20環境・気候・持続可能大臣会合においても共同声明を採択できす、議長サマリーを発出して終了した。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間