米国左派、脱炭素の為に中国と敵対せず融和を主張
米国の「進歩的」団体が、バイデン政権と米国議会に対して、気候変動に中国と協力して対処するために、米国は敵対的な行動を控えるべきだ、と求める公開書簡を発表した。
これは、対中で強硬姿勢をとるべきか、それとも気候変動問題を優先して融和すべきか、という民主党内の意見の対立の表れである、とPoliticoが報じた。

MicroStockHub/iStock
書簡を出したのはFriends of the Earth U.S.、Union of Concerned Scientists、などの40以上の団体である。以下、概要を書く。
バイデン政権とすべての国会議員に対し、米中関係において支配的な敵対的アプローチを避け、代わりに多国間主義、外交、中国との協力を優先して、気候危機という人類生存の脅威に対処することを求める。
米中の新たな冷戦に終止符を打つことは、私たちの地球の未来にほかならない。
気候危機に立ち向かい、米国でも中国でも、日々働く人々のためのグローバル経済を構築するためには、競争から協力へと移行しなければならない。
Politicoのインタビューでは、書簡に署名した団体の一つであるJust Foreign Policyのエグゼクティブ・ディレクター、エリック・スパーリングは、「バイデン政権の反中キャンペーンが継続、拡大するならば、彼の気候変動に関するアジェンダ全体が危険にさらされる可能性がある」と語る。
またFriends of the Earth U.S.の気候・エネルギープログラムのディレクターであるカレン・オレンスタインは、「気候に関する中国との協力は、人権問題に関して中国や米国を免責するものではない。しかし、人権問題等が、ワシントンが北京と協力して地球規模の気候変動問題に強く取り組むことに影響を与えるべきではない。“気候緊急事態”には協力が必要だ」としている。
これら進歩的団体は、香港やウイグルでの人権抑圧にも関わらず、「気候非常事態」に対処するために、中国と敵対すべきではない、と説く。
だが筆者は全く納得できない。人権抑圧よりも脱炭素を優先しなければならないというほど強固な科学的知見など、どこにも存在しないからだ。
苛政は虎よりも猛し。
仮に幾らかCO2による気候変動で被害が起きるとしても(今のところその兆候は全く無いが)、自由、民主といった基本的人権を護ることの方が遥かに重要だ。
■

関連記事
-
以前から、日本政府が10月31日に提示した「2035年にCO2を60%削減という目標」に言及してきたが、今回はその政府資料を見てみよう。 正式名称はやたらと長い:中央環境審議会地球環境部会2050年ネットゼロ実現に向けた
-
総裁候補の原発観 今の自民党総裁選をリードしているとされる河野太郎氏は、〝原発再稼働容認に転換〟とも伝えられたが注1)、今も昔も強烈かつ確信的な反原発の思想の持ち主である。河野氏の基本理念は核燃料サイクル注2)を止めるこ
-
オランダの物理学者が、環境運動の圧力に屈した大学に異議を唱えている。日本でもとても他人事に思えないので、紹介しよう。 執筆したのは、デルフト工科大学地球物理学名誉教授であり、オランダ王立芸術・科学アカデミー会員のグウス・
-
人間社会に甚大な負の負担を強いる外出禁止令や休業要請等の人的接触低減策を講ずる目的は、いうまでもなく爆発的感染拡大(すなわち「感染爆発」)の抑え込みである。したがって、その後の感染者数増大を最も低く抑えて収束させた国が、
-
海は人間にとって身近でありながら、他方最も未知な存在とも言える。その海は未知が故に多くの可能性を秘めており、食料庫として利用しているのみならず、たくさんのエネルギー資源が存在している。
-
刻下の日本におけるエネルギー問題(電力供給問題)が中小企業に及ぼす負の影響について、安定供給・価格上昇・再生可能エネルギー導入・原発再稼働などの側面から掘り下げてみたい。
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンク「グローバルエナジー・ポリシーリサーチ(GEPR)」は、12年1月1日の開設から1周年を経過しました。読者の皆さまのご支援、ご支持のおかげです。誠にありがとうございます。
-
あまり報道されていないが、CO2をゼロにするとか石炭火力を止めるとか交渉していたCOP26の期間中に中国は石炭を大増産して、石炭産出量が過去最大に達していた。中国政府が誇らしげに書いている(原文は中国語、邦訳は筆者)。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間