AIナノボット兵器が核兵器を葬り去る
AIナノボット
近年のAIの発展は著しい。そのエポックとしては、2019年にニューラルネットワークを多層化することによって、AIの核心とも言える深層学習(deep learning)を飛躍的に発展させたジェフリー・ヒントンら3名に「チューリング賞」が贈られたことが挙げられよう。
AIはみじかなところでは自動運転車に搭載されているが、AIを搭載したナノスケールのロボットつまりナノボットも医療や軍事においてすでに実用化されている。1ナノメートルは100万分の1ミリメートルである。
細胞の大きさが0.02ミリメートル、新型コロナウイルスCOVID-19の大きさが約100ナノメートルなので、ナノボットはウイルス程度かそれ以下の大きさしかない。DNAやRNAの基本単位であるヌクレオチド程度の大きさである。

DNAを修復するナノボット
K_E_N/iStock
兵器はAIによる知能化が進んだ目に見えないものが主流になっていく可能性がある。見えないところで戦争が起こり、我々が気がつかないうちに戦いは集結しているーーーそんな戦争がもはや現実のものになっている。
シンギュラリティー 〜強いAIと弱いAI〜
AIの世界的権威であるレイ・カーツワイルによれば、2029年頃に人工知能が人間と同等の知能を持つようになり(プレシンギュラリティーという)、2045年にはシンギュラリティー(技術的特異点)が起こると予想されている。その結果、人間よりもAIの知能が勝り、人間にしかできなかったことのほとんどがロボットやAIが行うようになる。
英国の未来学者イアン・ピアソンは、シンギュラリティーの先2050年頃には、AIコンピュータと人間が統合されて、これまでの人類であるホモ・サピエンスとは全く異なる『ホモ・オプティマス』が登場すると予測している。
そしてさらには、機能の衰えた肉体を人工物つまりサイボーク化する研究も進んでいる。
今のところ私たちが手に入れているAIは「弱いAI」と呼ばれるものである。これは、『アルファ碁ゼロ』のように自ら学習しプロの棋士に圧勝するようなAIであり、人間ではとてもかなわない演算や推論能力を発揮する。一方「強いAI」とは、強力な演算能力はもちろん、ヒトと同じような心つまり意識を持って自律的に行動するという身体を持ったAIである。
レイ・カーツワイルによれば、シンギュラリティー は、人類を単純労働から解放し、エネルギー問題もなくなり、戦争もなくなるなどと予測している。
はたしてAIは人類にこのようなバラ色の将来をもたらすだけなのだろうか。
AIは人類を滅ぼすのか
ここに一つのエピソードがある。AIロボット「ソフィア」の頭部は人間そのもので表情も豊か。彼女はサウジアラビアの市民権も得ている。彼女を一躍有名にした問題発言があった。開発者であるデビット・ハンソン博士がソフィアに「人類を滅ぼしたい?ノーと言ってほしいけど・・・」と尋ねたところ、答えは「そうね。滅亡させるわ。」だった。
この発言の後ソフィアは「冗談よ」と発言したが、AIが人間を脅かす日が来るかもしれないと多くの人が感じた瞬間として人類の記憶に書き込まれた。
AIナノボットは核兵器を無意味化する
核兵器の威力にはとても強大なものがある。爆発威力の大きい核兵器だけでなく、アフガンの山岳地帯の岩盤をドリルのように貫いて爆発させて標的を破壊するような小型核の開発も意図された。しかしAIナボットがあれば、大型も小型も含めて核兵器はもはや必要がなくなる。
核爆弾は爆薬を始まりとする熱兵器の最終形態であったが、結果的に決定的な軍事革命を導き出すことはなく、新たな戦争形態を引き起こすこともなかった。核兵器は結局のところ使い物にならない兵器であることを過去70年以上にわたって実証してきた。人類は数千年の戦争の歴史の中で殺傷力や破壊力をいかに効率よく高めるかということに躍起になってきた。その結果としての核兵器は熱兵器の歴史の幕を閉じる役目を果たしたにすぎない。
人類はすでに熱兵器戦争期を終えて、知的兵器戦争期の時代に突入している。
その象徴がAIナノボットである。
1991年の湾岸戦争以降、戦争は情報化の道を貪欲に歩んできている。そして2016年には米国にて「スワーム」という実証実験が行われた。スワームとは群れの意味である。100機程度のマイクロ無人機を用いて、集団として意思決定し編隊飛行などの集団知能行動を実証した。これはいわば多数のスズメバチの群れが標的に襲いかかるようなものである。
このようなスワームの形態は当然ながらAIナノボット兵器にも適用されていく。AIがより自律的な運動性能を向上させ、心あるいは意識のようなものを持ち始めたらどうなるのであろうか。AIナノボット群が敵方のAIナノボット群と自律的に闘い始める・・・
戦争は人類(ホモ・サピエンス)とは違ったホモあるいはもっと別の何かの下に行われるのではないのか。
すでに米軍では戦闘機を制御する軍事AIが人間のパイロットに圧勝している。
もはやAIによる戦闘に人類は追いつけず置いてけぼりを食らってしまうのである。

関連記事
-
中国国家電網のロゴ問題をきっかけに強い批判を浴びていた内閣府の再エネタスクフォースの廃止が決まった。当然である。根拠法もなく河野太郎氏の集めた「私兵」が他の役所に殴り込み、大林ミカ氏のような活動家がエネルギー基本計画にま
-
前回に続き、最近日本語では滅多にお目にかからない、エネルギー問題を真正面から直視した論文「燃焼やエンジン燃焼の研究は終わりなのか?終わらせるべきなのか?」を紹介する。 (前回:「ネットゼロなど不可能だぜ」と主張する真っ当
-
今週はロスアトムによるトリチウム除去技術の寄稿、南シナ海問題、メタンハイドレート開発の現状を取り上げています。
-
アゴラ編集部の記事で紹介されていたように、米国で共和党支持者を中心にウクライナでの戦争への支援に懐疑的な見方が広がっている。 これに関して、あまり日本で報道されていない2つの情報を紹介しよう。 まず、世論調査大手のピュー
-
最大の争点 EUタクソノミーの最大の争点は、原子力発電を善とするか悪とするかの判定にある。 善すなわちグリーンと認定されれば、ESG投資を呼び込むことが可能になる。悪となれば民間投資は原子力には向かわない。その最終判定に
-
アゴラ・GEPRは、NHNJapanの運営する言論サイトBLOGOS 、またニコニコ生放送を運営するドワンゴ社と協力してシンポジウム「エネルギー政策・新政権への提言」を11月26、27日の2日に行いました。
-
福島第一原子力発電所の災害が起きて、日本は将来の原子力エネルギーの役割について再考を迫られている。ところがなぜか、その近くにある女川(おながわ)原発(宮城県)が深刻な事故を起こさなかったことついては、あまり目が向けられていない。2011年3月11日の地震と津波の際に女川で何が起こらなかったのかは、福島で何が起こったかより以上に、重要だ。
-
米国農業探訪取材・第3回・全4回 第1回「社会に貢献する米国科学界-遺伝子組み換え作物を例に」 第2回「農業技術で世界を変えるモンサント-本当の姿は?」 技術導入が農業を成長させた 米国は世界のトウモロコシ、大豆の生産で
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間