世界各国で開発が進むSMRのアキレス腱

2022年02月26日 07:00
澤田 哲生
東京工業大学原子炉工学研究所助教 工学博士

onepony/iStock

今SMR(Small Modular Reactor: SMR)が熱い。

しかし、SMRの概念図を見て最初に思ったのは、「これって〝共通要因〟に致命的に弱いのではないか」ということだ。

SMRは小型の原子炉を多数(10基程度)同一の建屋内に配備する。

共通要因とは、共通の原因で故障や事故に至ることをいう。SMRは同じ型のものを工場で多量に生産する。設計や製造でどこかに不備が潜り込んでいれば、その不備はどの原子炉にも共有される。

自動車で時々リコールが起こるが、まあそういうことである。

図はNuScale社が提案するSMRのポンチ絵であるが、共通の入れ物である建屋そして巨大なプールの中に同じモジュール炉(出力7.7万kW)が、4基(30.8万kW)、6基(46.2万kW)、12基(92.4万kW)、という3つのオプションが用意されている。小型といっても1モジュールは高さ23mで直径は4.5m、重さは800トンもある。結構デカイのである。

ちなみに福島第一原子力発電所の原子炉6基の総出力は469.6万kWであったので、このSMRだと61基が必要になる。

なぜ、巨大なプール(10m x 100m x 25m程度)が必要なのかといえば、万が一、炉心の冷却剤がなくなった場合に、過熱して溶けそうになった炉心を冷やす水を供給するためである。それによってシビアアクシデントを防止する。

福島第一原子力発電所のシビアアクシデントは、想定外の大きな津波という自然の現象つまり〝共通要因事象〟によって引き起こされ、複数基の原子炉が全電源喪失という同じ事態に陥ってほぼ同様の事故に進展していった。

SMRの場合は例えばこの巨大なプールは安全の要諦である〝止める・冷やす・閉じ込める〟の最後の砦のような役目を担っている。巨大なプールに蓄えられた水は、炉心が溶けるといったシビアアクシデントが起こるような事態に及んだ際に、過熱した炉心をひたすために各モジュール内に冷却水を注入するためにある。

しかし、プールが巨大地震などで破損するという“単一の故障”でプール水がなくなれば、すべてのモジュールが冷却できなくなる―――単一の故障が共通の要因となって複数の原子炉に同じ事故をもたらすのである。つまり、この最後の砦が致命的な事態を引き起こす共通要因にもなりうるということである。

ただし、この見方には異論もある。そもそもSMRのモジュールを含む巨大プールは全体が地下に埋め込まれるので地震の揺れの影響を受けにくくプールの大規模破損は起こりにくいという。その一方で、大規模破損は起こらないとしても、地震による長周期振動でプール水には〝スロッシング(液体の表面が大きくうねる現象)〟が発生し、大量のプール水を失う可能性があるという見方もある。

いずれにしても、巨大地震や巨大津波に襲われればこの砦自体が機能を失って、果ては崩壊しかねないという危機を孕んでいる。

重大な事故はいつも想定外のことを原因として起こってきた。

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澤田 哲生
東京工業大学原子炉工学研究所助教 工学博士

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