高騰する東京の電気料金の現状:なぜ大阪とこんなに違うのか?

2024年07月27日 06:35
アバター画像
エネルギー問題に発言する会 元日立製作所

privetik/iStock

はじめに:電気料金の違い

物価上昇の動きが家計を圧迫しつつある昨今だが、中でも電気料金引上げの影響が大きい。電気料金は大手電力会社の管内地域毎に異なる設定となっており、2024年4月時点の電気料金を東京と大阪で比べてみると、表1のようになっている。同様に、両地域での発電に伴うCO2の排出率(排出係数)の比較も表1の通りである。

東京 大阪 東京/大阪
標準家庭電気料金(円/kWh) 41.05 28.51 1.44
CO2排出係数(kg-CO2/kWh) 0.451 0.309 1.46

表1 電気料金とCO2排出係数の比較(東京、大阪) (※1、※2)

表1を見て明らかなのは、東京の家庭は大阪に比べて、1.5倍の電気料金を支払い、1.5倍のCO2を排出しているということである。高い料金を支払っていながら、脱炭素活動に逆行しているということなのだ。

何故こういうことになってしまったのか? 背景となる電力会社の電源構成を調べてみよう。

電力会社毎の電源構成

東京は東京電力管内であり、大阪は関西電力管内である。両電力の電源構成は図1、図2のようになっている。

図1 東京電力の電源構成(※3)

東電では、火力(LNG+石炭)が73%、水力+再エネなどの脱炭素電源が27%の構成であり、化石燃料の価格高騰をまともに受けて電気料金が高くなるとともに、CO2排出はほとんど削減できていない。

図2 関西電力の電源構成(※3)

関電では、火力(LNG+石炭など)が45%、脱炭素電源である原子力が20%、水力+再エネなどが35%の構成であり、化石燃料価格の高騰の影響を受けつつも、原子力の寄与で電気料金の維持、CO2排出抑制ができている。

関電の脱炭素電源化率55%は、東電の27%の2倍にまで進展している。

ちなみに、全国大手電力10社の電気料金は?と調べると、図3のようになっている。

図3 電力10社の電気料金比較(※1)

つまり、原子力の再稼働を達成した電力会社(関西、九州)の管内は電気料金が安く、原子力再稼働を達成できていない電力会社(東京、北海道、東北、中国など)の管内は電気料金が高いということである。

取るべきアクションは?

電力会社の地域によって電気料金に1.5倍もの相違が出てくるのは、政治が政策として電源構成のバランスを取ろうとしているか否かに掛かっている。

東京では、政治的影響力を持つ議員を初め、一般家庭の人々も含めて、東電に対して原子力の再稼働を促進できるようなサポートをしきれていないため、依然として発電量の3/4を火力に依存する状態を脱出することができず、高い料金を課せられることになっている。

日本国内は、今や、電力管内毎に民意によって電源構成を選択していると言ってよく、その結果として得られる電気料金を消費者が負担するという形になってきている。原子力を含めて電源選択した地域は安い電力を享受でき、原子力を取り入れない選択をした地域は高い電力を甘んじて受ける、というわけだ。

東京の家庭としては、東電での原子力再稼働をリクエストする意思を表明して、物価高騰、CO2排出を抑える動きを作っていくべきではないだろうか。

【参考資料】

※1)1kWhの電気代は今いくら?全国の目安単価を詳しく解説します
※2)東電、関電のHPより、 CO2排出係数の公表値 (2021年度)
※3)大手電力10社の電源構成の違いと、特徴 新電力比較サイト(管理人:石井元晴 2024年6月7日更新)

This page as PDF
アバター画像
エネルギー問題に発言する会 元日立製作所

関連記事

  • 東京都は保有する水力発電所からの電力を平成21年度(2009年)から10年間の長期契約で東京電力に販売しているが、この電力を来年度から入札により販売することにした。3月15日にその入札結果が発表された。(産経新聞3月15日記事「東京都の水力発電、売却先をエフパワーに決定」)
  • 昨年夏からこの春にかけて、IPCCの第6次報告が出そろった(第1部会:気候の科学、第2部会:環境影響、第3部会:排出削減)。今回から、環境影響(impact)を取り扱っている第2部会報告を読んでいこう。 まず今回は「政策
  • 米ホワイトハウスは、中国などCO2規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税を課す「国境炭素税」について、支持を見合わせている(ロイター英文記事、同抄訳記事)。(国境炭素税について詳しくは手塚氏記事を参照) バイデン大統領は
  • 「GDPの2%」という防衛費騒動の陰で、それよりも巨額な3%の費用を伴う脱炭素の制度が、殆ど公開の場で議論されることなく、間もなく造られようとしている。これは日本を困窮化するかもしれない。1月末に始まる国会で守るべき国民
  • 経済産業省は4月28日に、エネルギー源の割合目標を定める「エネルギーミックス」案をまとめた。電源に占める原子力の割合を震災前の約3割から20−22%に減らす一方で、再エネを同7%から22−24%に拡大するなど、原子力に厳しく再エネにやさしい世論に配慮した。しかし、この目標は「荒唐無稽」というほどではないものの、実現が難しい内容だ。コストへの配慮が足りず、原子力の扱いがあいまいなためだ。それを概観してみる。
  • 「再エネ100%で製造しています」という(非化石証書などの)表示について考察する3本目です。本来は企業が順守しなければならないのに、抵触または違反していることとして景表法の精神、環境表示ガイドラインの2点を指摘しました。
  • スペイン政府の初動説明:停電の概要と初期分析 2025年4月28日に発生したスペインおよびポルトガルにおける広域停電から2週間が経過し、スペインのサラ・アーゲセン環境移行大臣が初めて公に説明を行いました。発表内容は以下の
  • 原発事故に直面して2年が経過した福島の復興をめぐって、何ができるのか。それを考える前提として、まず現状を知る事ではないでしょうか。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑