都民は3000億円をかけて0.0003℃気温を下げて嬉しいのだろうか

2025年03月02日 06:50
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

Free art director/iStock

東京都の令和7年度予算の審議が始まった。

「世界のモデルとなる脱炭素都市」には3000億円もの予算が計上されている。

内容は、太陽光パネル、住宅断熱、電気自動車、水素供給などなど、補助金のオンパレードだ。

どれもこれも、高価だから、補助金を付けて導入を図るという訳だ。

ところで、年間3000億円もかけて、気温はどれだけ下がり、大雨の降水量はどれだけ減るのか?

IPCCによれば1兆トンのCO2排出で0.5℃気温が上がるとされている(TCRE関係という)から、この関係を使えば簡単に計算できる。

だが東京都都議会で上田議員がいくら質問しても役人は回答しなかったので、今回は、役人よりマシかと思って、AIであるChatGPTに計算させてみた。

メガトン(百万トン)とギガトン(十億トン)を取り間違えたり、CO2とCを取り違えたり、東京都と日本を間違えたり、いろいろ問題はあったが、都度、直してやると、最後は正解が出てきた(必ず、CO2削減の効果が大きく出る方向で間違えていたのは、わざとでは無いと信じてやりたい)。

AIとのやりとりの全容はこちら(英語のうえに、長いので、AIマニア向け)

結論を言うと、東京都が2050年にCO2ゼロにしても、気温低下は僅かに0.00035℃だ。

これによる降水量の低下は最大で0.0000245%しかない。

東京で過去でもっとも一日の雨量が多かったのは1958年の狩野川台風で、雨量は417mmだった。

2050年にCO2をゼロにすると、これが0.0001mmだけ減ることになる。

つまり、2050年の気温を0.0003℃下げて、狩野川台風級の400ミリの大雨を0.1ミクロンだけ減らすために、東京都民は令和7年度だけで3000億円をかける訳だ。

これのどこが都民ファーストなのだろうか?

なおちなみに、AIは「これは僅かな値ですが、世界全体の努力の一部です」などと役人風の補足も忘れずつけてくる。ウェブ上に出回っている役人文書を見て覚えたのであろう。

なおこの補助金行政には、分配の問題もある。

補助金を受け取るのは、大きな持ち家のある人、最新の大型家電を購入する人、電気自動車を購入する人などだ。つまりは世間的に言えばお金持ちである。

持ち家もなく、滅多に大型家電を買うこともなく、高価な電気自動車など買えない庶民には、何も恩恵が無い(CO2が僅かに減ることが物凄く嬉しいならば話は別だが..)。

3000億円もばらまくのなら、都民に返して欲しいと思うのが普通だろう。東京都人口は1400万人なので、一人2万円も負担していることになる。

都民は、本当にこの「世界のモデルとなる脱炭素都市」なる政策を望んでいるのだろうか?

都政は、都民に情報をきちんと提供し、判断を仰ぐべきだ。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 1. COP28の開催 11月30日から約2週間、UAEのドバイで開催されたCOP28には、90,000人近い関係者がプライベート・ジェットなどで駆けつけた。 11月21日のライブ「She Changes Climate
  • GEPRを運営するアゴラ研究所は映像コンテンツ「アゴラチャンネル」を放送している。5月17日には国際エネルギー機関(IEA)の前事務局長であった田中伸男氏を招き、池田信夫所長と「エネルギー政策、転換を今こそ--シェール革命が日本を救う?」をテーマにした対談を放送した。
  • 「もんじゅ」の運営主体である日本原子力研究開発機構(原子力機構)が、「度重なる保安規定違反」がもとで原子力規制委員会(規制委)から「(もんじゅを)運転する基本的能力を有しているとは認めがたい」(昨年11月4日の田中委員長発言)と断罪され、退場を迫られた。
  • 国際エネルギー機関IEAが発表した脱炭素シナリオ(Net Zero Scenario, NZE)。これを推進するとどのような災厄が起きるか。 ルパート・ダーウオールらが「IEAネットゼロシナリオ、ESG、及び新規石油・ガ
  • 1.太陽光発電業界が震撼したパブリックコメント 7月6日、太陽光発電業界に動揺が走った。 経済産業省が固定価格買取制度(FIT)に関する規則改正案のパブリックコメントを始めたのだが、この内容が非常に過激なものだった。今回
  • 2月26日付のウォールストリートジャーナル紙の社説は再エネ導入策による米国の電力網不安定化のリスクを指摘している。これは2月に発表された米国PJMの報告書を踏まえたものであり、我が国にも様々な示唆をあたえるものである。
  • このような一連の規制が、法律はおろか通達も閣議決定もなしに行なわれてきたことは印象的である。行政手続法では官庁が行政指導を行なう場合にも文書化して根拠法を明示すべきだと規定しているので、これは行政指導ともいえない「個人的お願い」である。逆にいうと、民主党政権がこういう非公式の決定を繰り返したのは、彼らも根拠法がないことを知っていたためだろう。
  • 前回予告したように、エネルギー・環境会議コスト等検証委員会での議論の問題点を考えてみよう。もともと低すぎるではないかとの批判が強かった原子力発電のコストを再検証しつつ、再生可能エネルギーの導入を促進するために、再生可能エネルギーのコストを低めに見積もるという政策的結論ありきで始まったのだろうと、誰しもが思う結果になっている。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑