【図解】オール与党で脱炭素万歳は今や日本だけ

Leontura/iStock
先進諸国はどこも2050年ネットゼロ(CO2排出実質ゼロ)目標を掲げてきた。だがこんな目標はそもそも実現不可能であるのみならず、それを実現すべく実施された政策は電気代高騰などを引き起こして極めて不人気になり、移民問題に次いで重要な選挙の争点になってきた。
共和党が政権をとった米国はもちろんのこと、欧州でも、ネットゼロ目標の撤回を公然と要求したり、あるいはネットゼロ目標の撤回までは求めていなくても、それを達成しようとする規制や税には反対するなどの「反対派」の勢力が増えてきた。
そのシェアを、下院(一院制の場合は上院。日本についてだけ衆参両院合計)の議席数シェアと、直近の世論調査の支持率シェアで、日米欧間で比較したのが下図だ。

これを見ると、欧州の大国では、すでにことごとく反対派が与党ないし最大野党になっていることが分かる。ジョルジャ・メローニ首相が率いるイタリア、最近になって保守党のケミ・ベーデノック党首がネットゼロに公然と疑義を唱え始めた英国、マリーヌ・ルペンが前党首だった国民連合が最大野党であるフランス、右派AfDの躍進が著しいドイツである。
ハンガリー、ポーランド、オランダ、オーストリア、ノルウェーなどでもネットゼロについての世論は二分されている。
対照的に、日本の国会ではこの反対派はごく僅かである。ネットゼロの撤回を公言する会派は参政党(参議院 2席)・日本保守党(衆議院 3席)の計5席で、衆参合算で0.7%にとどまる。政党支持率も今のところ2%前後のようだ。
日本では脱炭素は道徳的なものと位置付けられていて、それに経済的な疑義を挟むことは許されないという雰囲気が形成されている。そしてその陰では、2030年には年間30兆円に上る経済損失をもたらすと試算されているグリーントランスフォーメーション(GX)実行計画がオール与党体制で推進されている。
米国でも欧州でも、理不尽な負担には耐えられない、とする国民の声が上がり、ネットゼロ推進派と反対派が拮抗するに至っている。
周回遅れながら、日本がオール与党体制を脱して、脱炭素の是非について国会で真剣な論戦をする日は何時になるのだろうか?
■
関連記事
-
15日の報道、既視感があります。 エムケイ、EVハイヤー「CO2ゼロ」に 100円追加で排出枠 タクシー大手のエムケイ(京都市)は12月から、電気自動車(EV)を使い、温暖化ガス排出が実質ゼロのハイヤーの運行を始める。利
-
日米のニュースメディアが報じる気候変動関連の記事に、基本的な差異があるようなので簡単に触れてみたい。日本のメディアの詳細は割愛し、米国の記事に焦点を当ててみる。 1. 脱炭素技術の利用面について まず、日米ともに、再生可
-
東京電力福島第一原子力発電所の事故は、想定を超えた地震・津波により引き起こされた長時間の全交流電源の喪失という厳しい状況下で炉心溶融に至ったものです。 それでも本来事故以前から過酷事故対策として整備してきていた耐圧強化ベ
-
ペロブスカイト太陽電池は「軽くて曲がる太陽光パネル」として脚光を浴びてきた。技術開発は進んでおり、研究室レベルではセルの変換効率は26.7%に達したと報告された。シリコン型太陽電池と層を重ねたタンデム型では28.6%にも
-
ロシア軍のウクライナ攻撃を「侵攻」という言葉で表現するのはおかしい。これは一方的な「武力による主権侵害」で、どうみても国際法上の侵略(aggression)である。侵攻という言葉は、昔の教科書問題のときできた言い換えで、
-
総選挙とCOP26 総選挙真っ只中であるが、その投開票日である10月31日から英国グラスゴーでCOP26(気候変動枠組条約第26回締約国会議)が開催される。COVID-19の影響で昨年は開催されなかったので2年ぶりとなる
-
福島県で被災した北村俊郎氏は、関係者向けに被災地をめぐる問題をエッセイにしている。そのうち3月に公開された「東電宝くじ」「放射能より生活ごみ」の二編を紹介する。補償と除染の問題を現地の人の声から考えたい。現在の被災者対策は、意義あるものになっているのだろうか。以下本文。
-
本年11月の米大統領選の帰趨は予測困難だが、仮にドナルド・トランプ氏が勝利した場合、米国のエネルギー・温暖化政策の方向性は大きく変わることは確実だ。 エネルギー温暖化問題は共和党、民主党間で最も党派性の強い分野の一つであ
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間
















