「石野前連合」という悪夢:劣化政党の末に来る最悪の無責任体制

2025年07月02日 06:45
アバター画像
東京工業大学原子炉工学研究所助教 工学博士

石野前連合とは、石破ー野田ー前原連合のことである。

ここのところ自由民主党だけでなく、立憲民主党も日本維新の会もなんだか〝溶けはじめて〟いるようである。

いずれの場合も党としての体をなしていない。自民党は裏金問題から解脱できないまま無間地獄を彷徨っているようである。

こないだの都議選は惨憺たる結果であったが、自業自得だ。それに輪をかけて毛叱らないというかハシタナイのは、無所属と銘打ちながら当選するやいなやさっさと自民党に入党した輩が結構いたことである。

私の住まいは目黒選挙区であったが、投票したいと思う候補者がいなかった。しかも、無所属ポスターの世襲議員が当選後即座に自民に入党していた。選挙民も随分とバカにされたもんだ。

石野前連合

国会末期のなんちゃって党首討論——とりわけ野田 vs 石破、および前原 vs 石破の討論は空疎な空論であった。

私はすでにこの三人がどうしようもない〝お友達〟であることを説いた。

野田と石破はガブ飲み友達でともにキャンディーズのみきちゃんの大ファン、前原と石破は鉄道マニア、政界テッチャン仲間である。

石破首相とトランプ大統領:『ブウ・ドン』関係の幕開けか、それとも迷走か?

https://agora-web.jp/archives/250119074114.html

このお友達3人は〝いつか一緒に政権をつくりたい〟と思うお仲間であることを忘れてはならない。

年収の壁引き上げを潰した2人の重罪人

維新の共同代表・前原氏は、自民党にすり寄り、維新が喧伝する教育無償化と引き換えに補正予算への賛成を打診した。つまり、これによって「年収の壁」引き上げの要求を反故にしようとしているわけである。教育無償化に必要な予算は約6,000億円にすぎず、「年収の壁」を178万円に引き上げた場合の税収減に比べれば、そのコストは約10分の1に抑えられる。財務省にとっては、破格に安い“取引”と言えるだろう。

もう一人の「重罪人」は、立憲民主党の野田佳彦元首相である。立憲民主党は、困窮する庶民の味方と思われていたが、今回の「年収の壁」引き上げ問題には一切言及せず、静観を決め込んだ。庶民、とりわけ若者の間では、強い不信感や苛立ちが広がっており、立憲はその支持層を急速に失い、凋落しつつある。仮にこの件に立憲民主党が真剣に取り組んでいれば、大型減税はとうの昔に実現していたはずである。

国会終盤の党首討論を見ても、野田氏と前原氏の姿勢は実に腑抜けで、選挙民を愚弄しているとしか思えない。

最大野党である立憲民主党が、「不信任」という伝家の宝刀を抜かないなどという所作は、本来あり得ないはずである。

国防の劣化

三者三様にかなりの右派であり、国防意識は高いと見る。野田氏も前原氏ももともとは自民党入りを望んでいたが、いずれの選挙区も世襲議員などの自民伝統の悪癖に阻まれ公認はえられなかった。

国防のことでいえば石破は自称軍事オタクらしいし、それこそ総裁選の頃は、〝アジア版NATOの創設〟や〝日米地位協定の見直し〟に意欲をみせる風を装っていた。あれらの主張はどこにいったのか、最近ではトント耳にしない。ライフワークじゃなかったのか?

議論好きなんだろう——だったらトランプ大統領に論戦をいどめば良かったじゃないか。

そして、石破は今回のNATO総会への出席と言う絶好の機会を逃した。逃したというよりサボった。絶好の論戦の機会を目前にして、不戦敗、まるで敵前逃亡のような無様なありさまだ。

こんな輩に、国防、ましてやアジア版NATO、地位協定見直しなんてちゃんちゃら可笑しい。

国防の意思の具現化は、構成的な軍事力をいかにして国家システムに実装するかじゃないのか。

トランプ大統領が日本の防衛費をGDP比3.5%に引き上げよとか、「米国は日本を守らない」とかプレッシャーをかけてきている——NATO総会こそ関税の問題のみならず、防衛問題をトランプと腹を割って論じる絶好の機会だった。

日本はロシア、中国、そして北朝鮮という厄介な国々のみならず、今やならず者国家然としてきた米国と隣接している。防衛費はイスラエル並みのGDP比5%越えでもいいのではないか。いざ有事となって制空権を掌握されてからでは遅い。中国の最新鋭戦闘機(J-20A)は西側のそれを凌駕する性能を有しているらしいぞ・・・

NATO総会をサボったのは国家存亡の根幹に関わることから逃げた訳で、一国の総理として無責任極まりないと私は深く憂慮する。

今街中には来たる参議院選のポスター用看板が立ち並んでいる。7月3日告示である。

自民党の支持率はどんどん下がってきている。進次郎米の軽佻浮薄パフォーマンスが、大手メディアの後押しもあって自民党を浮揚させるかに見えたが、儚い夢であった。むしろ、進次郎の馬鹿さ加減が随所に露呈してきて、総理大臣不適格の烙印を押されつつある。選挙対策委員長の木原誠二氏は焦りに焦りまくっているようである。

自民党の凋落の先には、政界のガラガラポンから石野前連合政権さえ誕生の芽があるのではないかと思う。よしんばそのようなことが起こったとして、その先には今の自公政権よりも酷い無責任体制が私たちを待ち構えているように見える。

This page as PDF
アバター画像
東京工業大学原子炉工学研究所助教 工学博士

関連記事

  • 2025年までに1000億ドルに成長すると予測されるバッテリー産業だが、EVの「負債」について複数の報告書で取り上げられていた。 (前回:「2035年の新車販売はEV!」への邁進は正しい選択なのか?①) グリーンエネルギ
  • 小泉元首相の「原発ゼロ」のボルテージが、最近ますます上がっている。本書はそれをまとめたものだが、中身はそれなりの知識のあるゴーストライターが書いたらしく、事実無根のトンデモ本ではない。批判に対する反論も書かれていて、反原
  • 河野太郎氏の出馬会見はまるで中身がなかったが、きょうのテレビ番組で彼は「巨額の費用がかかる核燃料サイクル政策はきちんと止めるべきだ」と指摘し、「そろそろ核のゴミをどうするか、テーブルに載せて議論しなければいけない」と強調
  • 前2回(「ごあいさつがわりに、今感じていることを」「曲解だらけの電源コスト図made by コスト等検証委員会」)にわたって、コスト等検証委員会の試算やプレゼンの図について、いろいろ問題点を指摘したが、最後に再生可能エネルギーに関連して、残る疑問を列挙しておこう。
  • 小泉純一郎元総理(以下、小泉氏)は脱原発に関する発言を続けている。読んでみて驚いた。発言内容はいとも単純で同じことの繰り返しだ。さらに工学者として原子力に向き合ってきた筆者にとって、一見すると正しそうに見えるが、冷静に考えれば間違っていることに気づく内容だ。
  • IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 以前、IPCC報告の論点㉙:縄文時代の北極海に氷はあった
  • 大阪市の松井市長が「福島の原発処理水を大阪に運んで流してもいい」と提案した。首長がこういう提案するのはいいが、福島第一原発にあるトリチウム(と結合した水)は57ミリリットル。それを海に流すために100万トンの水を大阪湾ま
  • 岸田首相肝いりのGX実行会議(10月26日)で政府は「官民合わせて10年間で150兆円の投資でグリーン成長を目指す」とした。 政府は2009年の民主党政権の時からグリーン成長と言っていた。当時の目玉は太陽光発電の大量導入

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑