地表とCO2は赤外線のキャッチボールをしない!

FGorgun/iStock
地球温暖化は、大気中のCO2が地表から放射された赤外線を吸収し、吸収したその赤外線を地表に向かって逆放射し、その逆放射された赤外線を地表が吸収して温まり、地表がふたたび赤外線を放射して、大気中のCO2がその赤外線を吸収するために起こると説明されている。これは地表とCO2の赤外線のキャッチボールに例えられることもある。
太陽は高温の物体(約6000K)である。物体からは赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線など、あらゆる種類の電磁波が放射される。これを黒体放射という。地球の温度は太陽よりも低い(約300K)から、エネルギーの小さい電磁波が放射される。地球からは、波数が0cm-1から約2500cm-1のあらゆる種類の赤外線が放射される。
一方、大気に含まれるCO2は物体ではなく気体の分子である。分子のエネルギーはとびとびの値になっていて、CO2は667cm-1付近のごく限られた波数の赤外線しか吸収しない。その結果、キャッチボールで例えると、地表からはあらゆる種類のボールが投げられるけれども、CO2はごく限られた種類のボールしか受け取ることができない※1)※2)。
地表から投げられて、CO2が受け取ることのできなかったボール(赤外線)はどうなるだろうか。多くのボールは宇宙へと飛んでいく。大気の主成分であるN2、O2などの分子はボールを受け取ることができないからである。この場合には、大気のエネルギーは増えないから、地球温暖化を心配する必要はない。
地表から投げられて、CO2が受け取ったボールはどうなるだろうか。CO2は受け取ったボールを投げることもある。地表に向かって投げれば、地表の温度は少し上がる。しかし、CO2は物体ではなく気体の分子だから、ボールを投げるときにはあらゆる方向に投げる。多くのボールは宇宙に飛んでいき、地表が投げたボールに比べて、地表が受け取るボールはほとんどない。
CO2が投げたボールの多くは宇宙へと飛んでいくが、その途中で別のCO2が受け取ることもある。しかし、CO2同士がキャッチボールをしても大気の温度は変わらない。なぜならば、大気の温度はN2、O2などの分子の並進エネルギー(空間を移動する分子の運動エネルギー)を反映し、並進エネルギーが増えなければ、大気の温度は上がらないからである。
CO2は受け取ったボールを投げずに分子の振動エネルギーに変換して、N2、O2などの分子に並進エネルギーとして渡すこともある。この場合には、大気の温度が少し上がる。しかし、N2、O2などの分子の並進エネルギーがCO2に振動エネルギーとして渡されることもある。この場合には、N2、O2などの分子の並進エネルギーが減るので、大気の温度が少し下がる。
冬の寒い日に、部屋の中の大気を温めるためにCO2を撒く人はいない。ほとんどの人はコタツやストーブやエアコンなどの暖房器具を使う。暖房器具を使うと、部屋の中の大気の温度はすぐに上がって暖かくなる。N2、O2などのあらゆる大気分子は、赤外線を吸収しなくても、熱エネルギーによって並進エネルギーが直ちに増えるからである※1)※2)。
■
※1)中田宗隆「分子科学者がやさしく解説する地球温暖化Q&A 181―熱・温度の正体から解き明かす」丸善出版(2024)
※2)中田宗隆「スペクトル解析のための分子物理化学―温室効果ガスは本当に砂上の楼閣か―」東京図書出版(2026)
関連記事
-
はじめに:なぜ善意の政策が混乱を生むのか 近年、欧州を中心に移民政策を巡る混乱が続いている。人道や多様性を掲げたはずの政策が、なぜ社会分断や治安悪化を招いてしまったのか。この問いに対し、感情論やイデオロギーではなく、構造
-
ESGだネットゼロだと企業を脅迫してきた大手金融機関がまた自らの目標を撤回しました。 HSBC delays net-zero emissions target by 20 years HSBCは2030年までに事業全体
-
高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉決定を受けて、7日に政府の「高速炉開発会議」の初会合が開かれた。議長の世耕弘成経済産業相は冒頭で「高速炉の開発は必要不可欠だ」と述べた。これは高速増殖炉(FBR)に限らず広く高速炉(FR)を開
-
日本国内の報道やニュースクリップ等々を見ると、多くの人は気候変動対策・脱炭素は今や世界の常識と化しているような気になってしまうだろう。実際には、気候変動対策に前のめりなのは国連機関・英米とそれに追随するG7各国くらいで、
-
EUのエネルギー危機は収まる気配がない。全域で、ガス・電力の価格が高騰している。 中でも東欧諸国は、EUが進める脱炭素政策によって、経済的な大惨事に直面していることを認識し、声を上げている。 ポーランド議会は、昨年12月
-
4月12日は、ハンガリーの総選挙。現職であるオルバン・ヴィクトル首相(フィデス党)が苦戦している。オルバン首相のことは何年も前から注目しているが、EUの首脳の中では抜群に秀でた凄腕、愛国心と国民を守るという気概に満ちた不
-
原子力発電施設など大規模な地域社会の変容(これを変容特性と呼ぶ)は、施設の投資規模、内容にまず依存するが(これを投資特性と呼ぶ)、その具体的な現れ方は、地域の地理的条件や開発の意欲、主体的な働きかけなど(これを地域特性と呼ぶ)によって多様な態様を示す。
-
5月23日、トランプ大統領は、 “科学におけるゴールドスタンダードを復活させる(Restoring Gold Standard Science)”と題する大統領令に署名した。 日本語(機械翻訳)は
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間
















