人工説隠蔽のコロナと嘘だらけの脱炭素はよく似ている

2021年06月29日 07:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

malirka/iStock

1.コロナ人工説への弾圧と変節

コロナウイルスが武漢研究所で人工的に作られ、それが流出したという説が俄かに有力になってきた。

かつては、コロナ人工説は「科学の否定」であり「陰謀論」だという意見がCNNなどのリベラル系が優勢な世界のメディアを支配した。

フェイスブックなどのSNSはそれを虚偽情報だとして削除した。

最も権威ある医学誌ランセットでも27名の有力な科学者の署名による意見広告で人工説は科学的ではないと断じた。

国連機関WHOも武漢研究所への現地調査の結論として人工説を否定した。

人工説を当初から唱えていた有力な科学者はいた。トランプ政権も人工説を唱えた。だが彼らは科学を無視する陰謀論者だとして、メディアやSNSに攻撃され、時には脅迫を受けた。

だが「人工説が正しいのではないか」という疑念をもった多くの人々のたゆまぬ努力により、立場は逆転した。

ニューヨークタイムズもフェイスブックも立場を変えた。しかし、かつて自分たちが人工説を否定し検閲したことへの反省は全く見られない。見事な手のひら返しだ。

以上の経緯は多くの方がすでにまとめている。例えば、ニューヨークタイムズの手のひら返しについては山口敬之氏、フェイスブックの変節については大原浩氏、ランセットが人工説を「非科学、陰謀論」としたことは朝香豊氏の記事を、独立な科学者による真相究明の努力は鎌田慈央氏の記事を参照されたい。

2.温暖化懐疑論への弾圧と・・変節?

以上の話は筆者が専門にしている温暖化問題と実によく似ている。

いま先進国はいずれも2050年にCO2ゼロだ、脱炭素だと宣言しているが、実はそんな極端な目標を支持するような科学的知見はどこにもない。

気候変動が起きていて災害が激甚化してという説が流布されているが、そもそも災害の激甚化なるものが統計的に観測されていない。

だが地球は「気候危機」にあって「脱炭素」が必要だという意見は、

  • リベラルメディア(CNN、NHKなど)
  • SNS(フェイスブックなど)
  • 学界組織(ランセット、ネイチャーなど)
  • 国連機関(UNEP、UNDPなど)

の連合軍によって強力に流布されている。コロナ人工説を否定したのと同じ顔ぶれだ。

気候危機など存在しないという意見は、

  • 多くの独立な科学者
  • 米国共和党(トランプ大統領が例外なのではない)

によって支持されてきたが、「科学を無視している」として弾圧され、検閲を受けている。これまた、コロナ人工説を唱えたのと同じ顔ぶれだ。

だがいま、脱炭素を目指すと莫大な経済的負担が生じることが明らかなるにつれ、人々は反発する気持ちを高めてきた。スイスでは国民投票で脱炭素法が否決され、英国では与党保守党の元ブレクジット大臣が政権に公然と反旗を翻した

このため、気候危機なる「科学」にも疑いの目が向けられ、嘘だらけの脱炭素政策の実態が暴かれる日は近いと見る。

その時が至れば、メディアはまた一斉に変節するのだろうか。

クリックするとリンクに飛びます。

「脱炭素」は嘘だらけ

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • エネルギー戦略研究会会長、EEE会議代表 金子 熊夫 GEPRフェロー 元東京大学特任教授  諸葛 宗男 周知の通り米国は世界最大の核兵器保有国です。640兆円もの予算を使って6500発もの核兵器を持っていると言われてい
  • JBpressの私の記事を「中国語に訳したい」という問い合わせが来た。中国は内燃機関で日本に勝てないことは明らかなので、EVで勝負しようとしているのだ。それは1980年代に日本に負けたインテルなどの半導体メーカーが取った
  • 気候科学の第一人者であるMITのリチャード・リンゼン博士は、地球温暖化対策については “何もしない “べきで、何かするならば、自然災害に対する”強靭性 “の強化に焦点を当て
  • 政府が「2030年温室効果ガス46%削減」という目標を発表したことで、責任を感じた?小泉環境相が、「2030年までに太陽光発電の規模を2000万kW積み増して、1億800万kW以上にする」という方針を提示した。 太陽光発
  • 政府が2017年に策定した「水素基本戦略」を、6年ぶりに改定することが決まった。また、今後15年間で官民合わせて15兆円規模の投資を目指す方針を決めたそうだ。相も変わらぬ合理的思考力の欠如に、頭がクラクラしそうな気がする
  • カリフォルニア州の電気代はフロリダよりもかなり高い。図は住宅用の電気料金で、元データは米国政府(エネルギー情報局、EIA)による公式データだ。同じアメリカでも、過去20年間でこんなに格差が開いた。 この理由は何か? 発電
  • 政府のグリーン成長戦略では、2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにすることになっています。その中で再生可能エネルギーと並んで重要な役割を果たすのが水素です。水素は宇宙で一番たくさんある物質ですから、これが
  • 2025年5月22日、米下院はトランプ大統領が「One Big Beautiful Bill(ビッグ・ビューティフル・ビル)」と呼ぶ歳出・歳入一括法案を、賛成215、反対214(棄権1)で可決した。 本法案の柱は、大規模

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑