環境運動に屈し学問の自由を失った大学を憂う叫び

2022年01月09日 07:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

オランダの物理学者が、環境運動の圧力に屈した大学に異議を唱えている。日本でもとても他人事に思えないので、紹介しよう。

グウス・ベルクート博士
CLINTELより

執筆したのは、デルフト工科大学地球物理学名誉教授であり、オランダ王立芸術・科学アカデミー会員のグウス・ベルクート博士。「助けてくれ、私たちの大学に何が起こっているのか」という公開書簡が11月22日にオランダの主要日刊紙Da Telegraafに掲載された。

近年、私たちの大学におかしなことが起こっている。

教授たちは、教える内容に細心の注意を払わなければならない。活動家のイデオロギーにそぐわない科学的な結果を発表すると、彼らの生活は困難になり、クビになる危険性さえある。

いわゆる「コンセンサス」に参加することが、圧倒的に安全なのだ。

理事会は教授を守らず、それどころか、活動家の後ろに固まっている。

アムステルダム大学は、すべての学生が 覚醒(”woke “)すべきだと考えている。もはや、才能を伸ばすことは考えていない。代わりに、白人で異性愛者で真面目な学生に、ひたすら罪悪感を抱かせている。なにしろ、彼らの祖先は血にまみれており、彼らは新しい世代を抑圧しているのだから。

ナイメーヘンのラドバウド大学は、気候活動家に屈し、すべての学生に持続可能性の物語を教えなければならないと決めた。気候危機がその中心だ。だが、それが科学的に正しいかどうかは、ここでは問題では無くなった。

私の出身大学であるデルフト工科大学は、最近、「気候大学」というおしゃれなラベルを採用した。この大学でも、太陽電池パネルや風車、バイオマス発電所で解決しなければならない人為的な気候危機があると学生に教え込んでいる。批判は許されない。しかし、私は理事会に言いたいが、大学は偏りのない知識の交換のための聖域でなければならないのではないか? デルフト工科大学では、全員がイデオロギー的な拘束を受けているとしたら、議論はどれほど自由なのか? このような大学に自分の子供を通わせたいと思うか?

更に、デルフト工科大学は、EUのエネルギー政策を主導したとして、Timmermans EU副委員長に名誉博士号を授与した。しかし、氏はそのエネルギー政策で計り知れないダメージを与えている。彼はバイオマス発電所の偉大な擁護者だが、これは大規模な伐採によって長年にわたり固有の生態系を破壊した。氏はまた、風車で持続可能性が達成できると信じている。デルフト工科大学のような技術系大学の人々は、本当は、このような政策が技術的にも科学的にも無意味であることをよく知っている。

大学は、科学の発展にとって不適切な方向に進んでいる。科学と政治の利害関係が強く絡み合っている。その結果、批判的思考や真実の探求は、もう何年も前から、出発点ではなくなってしまった。

理事会が念頭に置くべきことは、大学とは、新しいアイデアが生まれて育つ繁殖地であらねばならぬ、ということだ。そのためには、新しい考え方が歓迎され、学生が才能を発揮できるような、刺激的な研究・教育環境が必要だ。

悪いアイデアを排除するために必要なことは、論を立てること、意見を交わすこと、検証を行うことだ。決して、創造的な心を封じ込めてはいけない。

クリックするとリンクに飛びます。

「脱炭素」は嘘だらけ

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPRはサイトを更新しました。
  • 気候危機説を否定する内容の科学的知見をまとめた気候作業部会(Climate Working Group, CWG)報告書が2025年7月23日に発表された。 タイトルは「温室効果ガス排出が米国気候に与える影響に関する批判
  • 日本経済新聞は、このところ毎日のように水素やアンモニアが「夢の燃料」だという記事を掲載している。宇宙にもっとも多く存在し、発熱効率は炭素より高く、燃えてもCO2を出さない。そんな夢のようなエネルギーが、なぜ今まで発見され
  • 福島第1原子力発電所の事故以降、メディアのみならず政府内でも、発送電分離論が再燃している。しかし、発送電分離とは余剰発電設備の存在を前提に、発電分野における競争を促進することを目的とするもので、余剰設備どころか電力不足が懸念されている状況下で議論する話ではない。
  • 「2020年までに地球温暖化で甚大な悪影響が起きる」とした不吉な予測は多くなされたが、大外れだらけだった。以下、米国でトランプ政権に仕えたスティーブ・ミロイが集めたランキング(平易な解説はこちら。但し、いずれも英文)から
  • 山梨県北杜市(ほくとし)における太陽光発電による景観と環境の破壊を、筆者は昨年7月にGEPR・アゴラで伝えた。閲覧数が合計で40万回以上となった。(写真1、写真2、北杜市内の様子。北杜市内のある場所の光景。突如森が切り開
  • 連日、「化石燃料はもうお仕舞いだ、脱炭素だ、これからは太陽光発電と風力発電だ」、という報道に晒されていて、洗脳されかかっている人も多いかもしれない。 けれども実態は全く違う。 NGOであるREN21の報告書に分かり易い図
  • 九州電力の川内原発の運転差し止めを求めた仮処分申請で、原告は最高裁への抗告をあきらめた。先日の記事でも書いたように、最高裁でも原告が敗訴することは確実だからである。これは確定判決と同じ重みをもつので、関西電力の高浜原発の訴訟も必敗だ。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑