「気候変動で飢えたシロクマ」は誤報で訂正済み
今回も前回に続いて英国シンクタンクの動画から。
大手の環境雑誌ナショナル・ジオグラフィックが、飢えてやせ細った、ショッキングなシロクマの映像を見せて、気候変動の影響だ、気候緊急事態だ、とした。この映像は25億回も再生され、また新聞・雑誌でも多く取り上げられた。
だが動物学者のスーザン・クロックフォードは、シロクマがケガをしたりガンになったりして餓死するのはよくあることで、この一頭だけで気候変動のせいにするのは間違いだ、と指摘した。
本当に気候変動のせいならば、他にも瘦せ細っているシロクマが居そうなものだが、別にそんなことは報告されていないからだ。
さすがにナショナル・ジオグラフィックも誤りを認め、訂正記事を出した。
要するに、このシロクマが瘦せているのは気候変動のせいだという因果関係については、言い過ぎ(went too far)でした、ということだ。
なのだが、その後が言い訳がましくて、「気候変動になるとこのようなことが起こると言いたかった」のだそうだ。
ちなみに、この訂正記事の後半には、「海氷が無くなるとシロクマが死ぬことについては科学が確立している」と書いてあるが、これも嘘であることも、スーザン・クロックフォードの著書”Fallen Icon(堕ちた偶像)” の8章に詳しく書いてあり、動画でも説明してある。そのようなシミュレーションはあったが、過去数年の海氷の減少期に、シロクマはまったく減らなかったのだ。
前回のセイウチといい、今回のシロクマといい、とにかく動物の悲惨な映像を見せて、全然因果関係の無い気候変動のせいにするという方法は、科学を無視して気候危機という感情を煽る「悲劇ポルノ(tragedy porn)」だ、とクロックフォードは糾弾している。
グレタ・ツゥーンベリも、アッテンボローに影響されてショックを受け、環境運動に目覚めたと言っている。つくづく、罪作りな所業である。
■
関連記事
-
ドイツ・憲法裁判所の衝撃判決 11月15日、憲法裁判所(最高裁に相当)の第2法廷で、ドーリス・ケーニヒ裁判長は判決文を読み上げた。それによれば、2021年の2度目の補正予算は違法であり、「そのため、『気候とトランスフォー
-
政府「不測時における食料安全保障に関する検討会」のとりまとめが発表された。 もし食料不足になったら? 対策の報告書まとまる 農水省 その内容は、不測の事態によって食料が不足するときに、政府が食料の配給をしたり、価格を統制
-
環境税の導入の是非が政府審議会で議論されている。この夏には中間報告が出る予定だ。 もしも導入されるとなると、産業部門は国際競争にさらされているから、家庭部門の負担が大きくならざるを得ないだろう。実際に欧州諸国ではそのよう
-
1.ネットゼロ/カーボンニュートラル 東京工業大学先導原子力研究所助教の澤田哲生氏が、ネットゼロ/カーボンニュートラルの意味について説明している。 ゼロカーボンはいばらの道:新たなる難題 引用すると、 ネットゼロ/カーボ
-
先日3月22日の東京電力管内での「電力需給逼迫警報」で注目を浴びた「揚水発電」だが、ちょっと誤解している向きもあるので物語風に解説してみました。 【第一話】原子力発電と揚水発電 昔むかし、日本では原子力発電が盛んでした。
-
GEPR編集部より。このサイトでは、メディアのエネルギー・放射能報道について、これまで紹介をしてきました。今回は、エネルギーフォーラム9月号に掲載された、科学ジャーナリストの中村政雄氏のまとめと解説を紹介します。転載を許諾いただきました中村政雄様、エネルギーフォーラム様に感謝を申し上げます。
-
この原稿はロジャー・ピールケ・ジュニア記事の許可を得た筆者による邦訳です。 欧州の天然ガスを全て代替するには、どれだけの原子力が必要なのか。計算すると、規模は大きいけれども、実行は可能だと分かる。 図は、原子力発電と天然
-
太陽光や風力など、再生可能エネルギー(以下再エネ)を国の定めた価格で買い取る「固定価格買取制度」(FIT)が7月に始まり、政府の振興策が本格化している。福島原発事故の後で「脱原発」の手段として再エネには全国民の期待が集まる。一方で早急な振興策やFITによって国民負担が増える懸念も根強い。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間