エアコン2027年問題:省エネ規制強化は撤回すべきだ

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以前、筆者も書いたエアコンの「2027年問題」が話題になっている。
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2027年4月から家庭用エアコンの省エネ基準が引き上げられるため、安価なエアコンが市場から消えるのではないか、という懸念である。
政府は、現在使っているエアコンが使えなくなるわけではなく、また基準を満たさない製品の製造・出荷が一律に禁止されるわけでもない、と説明している。理由は、制度上ではメーカーに対し、年度ごとの出荷製品全体で基準値を満たすことを求めるものであり、つまり、高効率機と低効率機を含めた平均で評価されるから、ということだ。
27年4月からエアコンの新たな省エネ基準がスタート!エアコンについて知っておくべきポイントは?(資源エネルギー庁)
だがメーカーが出荷製品全体で基準を満たさなければならない以上、低価格・低効率のスタンダード機を売り続けることには圧力がかかる。政府自身も、省エネ性能の向上に伴い、エアコンの販売価格が上がる可能性を認めている。
実際のところ、消費者はすでに反応している。日本冷凍空調工業会によれば、2026年5月の家庭用エアコン国内出荷台数は約130万台で前年比124.3%、2026年度累計でも前年比126.5%となっている。2027年問題への関心が需要の前倒しを招いているもようだ(日本冷凍空調工業会)。
省エネ機を買いたい人が買うのは結構なことである。だが問題は、政府が規制によって消費者の選択肢を狭め、コストを強いること、更には購入を諦めさせてしまうことである。
前述の解説サイトで、政府は、2027年度基準のエアコンに買い替えれば、6畳用では年間約2,760円、14畳用では年間約12,600円の光熱費が安くなると試算している。平均使用年数を約14年とすれば、6畳用では累計約4万円、14畳用では約18万円の節約になるという。
だがこの数字から分かるのは、小型エアコンでは価格差を回収しにくい、という実態だ。6畳用で年間2,760円しか節約できないなら、本体価格が4万円上がれば、平均使用年数とされる14年間使い続けてようやく回収できるかどうかである。
実例として、ある民間の販売サイトは、パナソニックの6畳用で、基準未達87%のJシリーズが工事費込み124,890円、基準達成100%のCシリーズが206,400円とし、年間電気代差は約2,697円としている。この例だと価格差は81,510円で、投資回収には30年もかかることになる。これは事実上、回収不能、つまり損をするということだ。
ワンルームの単身者、高齢者、若者、低所得者、賃貸住宅などの住民にとって、初期費用の増加は重くのしかかる。
それに、以上の試算はいずれもJISに基づく標準的な使用条件による試算であるが、留守が多かったり、冷房をあまり使わない家庭ならば、投資回収にかかる年数はさらに長くなる。
東京都の「東京ゼロエミポイント」では、エアコンの買替えに対して通常は数千円から2万円台、15年以上使用した古いエアコンから高効率機へ買い替える場合は最大7万円、高齢者・障害者向けの高効率エアコン購入では8万円の支援がある(東京ゼロエミポイント)。
国も住宅省エネ2026キャンペーンのリフォーム補助で、高効率エアコンを補助対象に追加し、52,000円/箇所の補助額を設けている。ただしこれは、家電量販店でエアコンだけを単体購入する人向けの全国一律補助ではなく、一定の要件を満たすリフォーム工事の一部としての補助である(みらいエコ住宅2026事業〖公式〗)。
だが補助金の財源は税金であり、国債であり、支給のための行政コストもかかる。規制で製品価格を押し上げ、その一部を補助金で戻すというのは、国民全体から見れば二重の負担である。しかも補助金を受け取れる人と受け取れない人が生まれる。申請手続きに対応でき、初期費用を用意でき、そもそも買替えに踏み切れる余力のある人に支援が偏りやすいという問題もある。
政府がすべきことは、規制強化ではなく、情報提供である。すでに省エネ型製品情報サイトでは、現在販売されている家電製品の省エネ性能がデータベース化され、トップランナー基準に基づく省エネ基準達成率などが示されている(省エネ型製品情報サイト)。
販売店の協力のもと、これをさらに充実させればよい。購入価格、年間電気代、標準使用年数での総費用、使用頻度別の投資回収年数などを、消費者に分かりやすく表示すれば十分である。
電気代を重視する人は高効率機を選べばよい。初期費用を重視する人は安価な機種を選べばよい。住まい方の違いによって、合理的な選択は異なって当然である。
今般の規制強化によって、安価なエアコンが市場から消えて、エアコンを買えなくなる人々が増えることになりそうだ。それは気の毒なことであるのみならず、熱中症などの健康被害をもたらすことになる。
省エネによって消費者が本当に得をするなら、政府が強制しなくても消費者は選択する。政府は省エネ規制強化を撤回すべきだ。そして、消費者が自分の生活実態に合わせて判断できるよう、電気代などの情報提供をするに留めるべきである。
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