某国営放送、気候変動による死亡数が増大とフェイク
英国国営放送(BBC)で内部監視の役目を受け持つEditorial Complaints Unit (ECU)は、地球温暖化に関するBBCのドキュメンタリー番組が、気候変動について誤った報道をしたと判定した。

VV Shots/iStock
番組「ワイルド・ウェザー」の中で、BBC気候エディターのジャスティン・ローワットは、「気候変動による異常気象のために、世界中で死亡者数が増加している」と述べた。だがECUは、これは誤りだとした。
ECUのホームページを見てみよう。まず念のため原文:
翻訳すると:
ECUの見解では、「死者数は世界中で増加しており、さらに悪化するという予測もある」という番組冒頭の表現は、異常気象による死者の割合が増加しているという印象を与える恐れがある。 実際には、世界気象機関(WMO)の最近の報告書にあるように、過去50年間に気象災害(洪水、嵐、干ばつなど)の数は大幅に増加したにもかかわらず、早期警報と災害管理の改善により、こうした災害による死亡者数は減少しています。
そう、災害による世界の死亡者数は激減している。例えばここで言及しているWMO報告に図を見てみよう:

図 災害による死亡者数
世界計、報告ベース(WMO報告より)
ちなみに、この判定文でECUは「気象災害の数は大幅に増大」と述べているが、以前書いたように、これは報告件数が増えたというだけであり、気象自体が激甚化したという証拠にはならない。その意味で、このECUの判定文自体も科学的に適切とはいえない。
なお、この番組が放送されたのは2021年11月初めで、英国グラスゴーで開催された国連気候会議COP26と同時期であった。明らかにCOP26に影響すべく作成された番組である。それが今頃になってフェイク認定されたが、もちろん、COP26はとうの昔に終わっている。
■

関連記事
-
前回お知らせした「非政府エネルギー基本計画」の11項目の提言について、3回にわたって掲載する。まずは第1回目。 (前回:強く豊かな日本のためのエネルギー基本計画案を提言する) なお報告書の正式名称は「エネルギードミナンス
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 今回のIPCC報告では、新機軸として、古気候のシミュレー
-
ドイツ東部の都市、ライプツィヒに引っ越して、すでに4年半が過ぎた。それまで38年間も暮らしたシュトゥットガルトは典型的な西ドイツの都市で、戦後、メルセデスやポルシェなど自動車産業のおかげで急速に発展し、裕福になった。 一
-
サプライヤーへの脱炭素要請は優越的地位の濫用にあたらないか? 企業の脱炭素に向けた取り組みが、自社の企業行動指針に反する可能性があります。2回に分けて述べます。 2050年脱炭素や2030年CO2半減を宣言する日本企業が
-
第7次エネルギー基本計画の政府検討が始まった。 呆れたことに、グリーントランスフォーメーション(GX)の下にエネルギー基本計画を置いている。つまり脱炭素を安全保障と経済より優先する訳だ。そして、GXさえすれば安全保障と経
-
この度の選挙において希望の党や立憲民主党は公約に「原発ゼロ」に類する主張を掲げる方針が示されている。以前エネルギーミックスの観点から「責任ある脱原発」のあり方について議論したが、今回は核不拡散という観点から脱原発に関する
-
先週、3年半ぶりに福島第一原発を視察した。以前、視察したときは、まだ膨大な地下水を処理するのに精一杯で、作業員もピリピリした感じだったが、今回はほとんどの作業員が防護服をつけないで作業しており、雰囲気も明るくなっていた。
-
2024年3月18日付環境省報道発表によれば、経済産業省・環境省・農林水産省が運営するJ-クレジット制度において、クレジットの情報を管理する登録簿システムやホームページの情報に一部誤りがあったそうです。 J-クレジット制
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間