気候危機の誤情報を国連事務総長が流布する

runeer/iStock
最近、自然災害を何でも気候変動のせいにするますます政治家が増えているが、これが一番深刻だ。
国連トップのグテーレス事務総長が述べている(筆者訳):
洪水、干ばつ、熱波、暴風雨、山火事は悪化の一途で、驚くべき頻度で記録を破っている。ヨーロッパの熱波。パキスタンの大洪水。中国、ソマリア、米国で長く深刻な干ばつ。
これら災害の新たな規模は、全く、自然現象ではない。これは人類の化石燃料中毒の対価だ。異常気象による災害は、過去50年間で5倍になった。
Our climate is heating rapidly. Floods, droughts, heatwaves, extreme storms and wildfires are going from bad to worse, breaking records with ever alarming frequency. Heatwaves in Europe. Colossal floods in Pakistan. Prolonged and severe droughts in China, the Horn of Africa and the United States.
There is nothing natural about the new scale of these disasters. They are the price of humanity’s fossil fuel addiction. The number of weather, climate and water-related disasters has increased by a factor of five over the past 50 years.

国連グテーレス事務総長
Wikipediaより
米国のロジャー・ピールキー・ジュニア教授が、これを猛然と批判している:
完全な誤情報。公的な場で、かかる重要機関による、かくも明白で酷く間違った主張は類例が無い。なお悪いことに、この誤情報を正当化したのは世界気象機関(WMO)で、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)を設立した機関だ。

ロジャー・ピールキー・ジュニア教授
米国の議会公聴会での証言時の写真(米国政府資料)
異常気象による災害が50年で5倍になったというのは、以前説明した下図に基づく言説だ。この「災害の報告件数増加」は気候変動によるものではなく、この間の世界の経済成長に伴って災害の報告件数が増えたためであることは、以前詳しくのべた通りだ。

このグテーレス事務総長の発言は、国連の「科学の下の団結(United in Science)」という報告書のリリースに当たってのもの。何という皮肉か、とピールキーは嘆いている。筆者も完全に同意する。
いま、公の場で気候危機説に少しでも疑いを挟むと弾圧の対象になる。ロジャー・ピールキー・ジュニア氏は何度も酷い目に逢っている。
だがその一方で、気候危機説を唱えてさえいれば、このような重要人物が明白な誤情報を流布することが許されるというのは、深刻な事態だ。
日本の政治家やメディアが同じことをしないよう、せいぜい目を光らせるとしよう。
■
『キヤノングローバル戦略研究所_杉山 大志』のチャンネル登録をお願いします。
関連記事
-
(前回:米国の気候作業部会報告を読む⑥:気候モデルは過去の再現も出来ない) 気候危機説を否定する内容の科学的知見をまとめた気候作業部会(Climate Working Group, CWG)報告書が2025年7月23日に
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンク、GEPR はサイトを更新しました。
-
大阪市の松井市長が「福島の原発処理水を大阪に運んで流してもいい」と提案した。首長がこういう提案するのはいいが、福島第一原発にあるトリチウム(と結合した水)は57ミリリットル。それを海に流すために100万トンの水を大阪湾ま
-
1.はじめに 雑誌「選択」の2019年11月号の巻頭インタビューで、田中俊一氏(前原子力規制委員会(NRA)委員長)は『日本の原発はこのまま「消滅」へ』と題した見解を示した。そのなかで、日本の原子力政策について以下のよう
-
きのう放送した言論アリーナでは、杉山大志さんと有馬純さんとともに地球温暖化を経済問題として考えた。今後、地球温暖化が起こることは確実で、その一部が人為的な原因によるものであることも確実だが、そのリスクははっきりしない。I
-
4月16日の日米首脳会談を皮切りに、11月の国連気候変動枠組み条約の会議(COP26)に至るまで、今年は温暖化に関する国際会議が目白押しになっている。 バイデン政権は温暖化対策に熱心だとされる。日本にも同調を求めてきてお
-
1.メディアの報道特集で完全欠落している「1ミリシーベルトの呪縛」への反省 事故から10年を迎え、メディアでは様々な事故関連特集記事や報道を流している。その中で、様々な反省や将来に語り継ぐべき事柄が語られているが、一つ、
-
RAFとはドイツ赤軍のことだ。当初は、第1世代の首謀者2名の名をとって「バーダー・マインホフ・グループ」と呼ばれていたが、日本赤軍に感化されて改称したという。 1960年代終わりから活動を開始し、1970年代の初めには、
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間


















