「再エネ100%」表示も企業行動指針に反する

BrianAJackson/iStock
「再エネ100%で製造しています」という(非化石証書などの)表示について考察する3本目です。本来は企業が順守しなければならないのに、抵触または違反していることとして景表法の精神、環境表示ガイドラインの2点を指摘しました。
さらに、各社が自主的に策定している企業行動指針注1)も順守できていません。1月10日付記事で大手企業50社の企業行動指針について調査した結果を示しましたが、各社の行動指針には「顧客対応」「消費者課題」「コミュニケーション」などの項目があり、この中で「虚偽広告をしない」「誇大広告をしない」「不当表示をしない」旨の宣言があります。
通常の購入電力で製造しており現実にはCO2を排出しているのに、カーボンオフセットによって「再エネ100%」と表示することは企業行動指針に明確に反する宣伝行為と言えます。
3回にわたって述べてきた内容をまとめると、「再エネ100%」表示はハードローである景表法の精神に抵触しており、ソフトローである環境表示ガイドライン、ならびに企業が自ら策定し宣言している行動指針に対しては明確に反しています。
非化石証書やJ-クレジットは国が認めている制度だから問題ないという姿勢は思考停止と言わざるを得ません。狭義の法令違反さえ避ければよいのであれば、そもそも行動指針なんてものを策定しわざわざ外部に宣言する必要はないはずです。
これは企業倫理の問題なのです。「この製品は再エネ100%(つまりCO2排出ゼロ)です」と子供の目を見て言えるのでしょうか。消費者や顧客に優良誤認を与えないよう、企業や広告主など情報を発信する側には高い倫理観と節度が求められます。
そもそも、CSRやサステナビリティは企業が利益最優先、ビジネス最優先にならないために配慮しなければならいものとして生まれました。企業は儲けるためなら何をやってもよいのではなく、公害防止や人権保護、競争法など様々なルールや規範に則ってビジネスを行わなければなりません。
脱炭素は環境配慮、サステナビリティの一環のはずですが注2)、いまや利益最優先、ビジネス最優先のための錦の御旗となり産業界全体が様々なルールを無視して暴走しているように筆者には感じます。その結果、サプライチェーンにおける下請けいじめ、強制労働やジェノサイドへの加担、消費者・顧客に対する誇大広告などが蔓延する社会になってもよいのでしょうか。
最後に、企業担当者には分かりやすいと思いますので、前々回記事で整理した表を再掲します。自社の脱炭素への取り組みがこれらに反していないか、これらに反してまで進めなければならないものなのか、虚心坦懐に見直してみることをおすすめします。

表1 脱炭素施策と順守事項の整理
■
注1)行動憲章、CSR規範、サステナビリティポリシー、コードオブコンダクト、ESG憲章、など名称は各社各様。
注2)太陽光発電については、ウイグル問題、間欠性、将来の廃棄物処理、格差拡大、森林破壊、防災など課題山積でありサステナビリティの一環とは言えない。詳細は『メガソーラーが日本を救うの大嘘』をご覧いただきたい。
【関連記事】
・企業の脱炭素は自社の企業行動指針に反する①
・企業の脱炭素は自社の企業行動指針に反する②
■
関連記事
-
(GEPR編集部より)サウジアラビアの情勢は、日本から地理的に遠く、また王族への不敬罪があり、言論の自由も抑制されていて正確な情報が伝わりません。エネルギーアナリストの岩瀬昇さんのブログから、国王の動静についての記事を紹介します。
-
20世紀後半から、人間は莫大量の淡水を農工業で利用するようになった。そのうち少なからぬ量は海に還ることなく蒸発して大気中に放出される。それが降水となることで、観測されてきた北半球の陸地における2%程度の雨量増加を説明でき
-
EV補助金の打ち切り…その日は突然訪れた 12月17日、夜7時のニュースをつけたら、「EVの補助金は明日から中止されることになりました。あと5時間です」。 寝耳に水。まるでエイプリスフールだ。 政府はいくらお金がないとは
-
各種機関から、電源コストを算定したレポートが発表されている。IRENAとJ.P.Morganの内容をまとめてみた。 1.IRENAのレポート 2022年7月13日、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、「2021年
-
気候変動開示規則「アメリカ企業・市場に利益」 ゲンスラーSEC委員長 米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長は26日、米国商工会議所が主催するイベントで講演し、企業の気候変動リスク開示案について、最終規則を制定でき
-
前回に続いて、環境影響(impact)を取り扱っている第2部会報告を読む。 今回は朗報。衛星観測などによると、アフリカの森林、草地、低木地の面積は10年あたり2.4%で増えている。 この理由には、森林火災の減少、放牧の減
-
桜井柏崎市長と東電・小早川社長の会談 2025年1月22日、柏崎市の桜井市長は、市役所を訪問した東京電力ホールディングスの小早川社長に対し、柏崎刈羽原発1号機がかつて東北電力と共同で開発された経緯に触れたうえで、6・7号
-
ドイツのための選択肢(AfD)の党首アリス・バイゼルががイーロン・マスクと対談した動画が話題になっている。オリジナルのXの動画は1200万回再生を超えている。 Here’s the full conversa
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間















