政府がCO2ゼロで経済成長という試算の捏造を注文

2024年12月10日 06:50
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

NicoElNino/iStock

前回書いたように、11月25日に、政府は第7次エネルギー基本計画におけるCO2削減目標を2035年に60%減、2040年に73%減、という案を提示した(2013年比)。

この数字は、いずれも、2050年にCO2をゼロにするよう、2013年から直線を引っ張って決めただけだ。こんな出鱈目なことで、日本のエネルギー政策を決めようとしている。

12月3日には、政府は「総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第66回会合)」を開催し、そこで複数のシンクタンクが、「シナリオ分析」として試算を発表しているが、これがまた酷い。

みな、「2050年CO2ゼロを達成するエネルギー需給の姿」をお絵描きしているだけだ。

太陽・風力、CO2回収貯留(CCS)とか、アンモニア発電とか、こういったものを大量導入してCO2をゼロにするという。どれもこれも、そのような大量導入が技術的に出来るとも思えないが、仮に出来たとしても、経済的に猛烈にコストのかかる話ばかりである。

それなのに、どのシンクタンクも、産業空洞化も起きなければ、経済破綻もしない、「経済成長しながらCO2ゼロが達成できる」、などと主張している。

実はこの試算、みな「結論ありき」なのだ。政府によるシナリオ分析の依頼内容を見ると、こう書いてある。

「専門機関への依頼内容・・・(中略)・・・以下の点について合致するよう分析を要請した。・・・(中略)・・・  安定供給、経済成⻑、脱炭素を同時に実現するという我が国のGXの基本的理念に基づき、経済活動量を過度に損なわないこと」

つまりは、「CO2をゼロにしても経済は崩壊しない」ことを「前提」にしてシナリオ分析をしろ、と。

それで、ホイホイとその通りのシナリオをシンクタンクは書いたわけだ。注文する方も腐っているが、それに応じるほうも腐っている。

これではまるで、「戦争には負けないことを前提にして戦争計画を建てろ」と言っているようなものだ。

政府は年内に第7次エネルギー基本計画をまとめるとしているが、こんな無謀なCO2数値目標を書きいれることは止めるべきだ。パリ協定への数値目標の提出も見送るべきだ。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 日本政府は排出量取引制度の導入を進めている。前回記事では、それによって、日本のAIが敗戦するという話を書いた。 今回は、排出量取引制度は「消費税級のステルス大増税」だということを書こう。 政府は、2013年を起点として、
  • 世の中で専門家と思われている人でも、専門以外のことは驚くほど無知だ。特に原子力工学のような高度に専門分化した分野だと、ちょっと自分の分野からずれると「専門バカ」になってしまう。原子力規制委員会も、そういう罠にはまっている
  • GEPRの運営母体であるアゴラ研究所は映像コンテンツである「アゴラチャンネル」を提供しています。4月12日、国際環境経済研究所(IEEI)理事・主席研究員の竹内純子(たけうち・すみこ)さんを招き、アゴラ研究所の池田信夫所長との対談「忘れてはいませんか?温暖化問題--何も決まらない現実」を放送しました。 現状の対策を整理し、何ができるかを語り合いました。議論で確認されたのは、温暖化問題では「地球を守れ」などの感情論が先行。もちろんそれは大切ですが、冷静な対策の検証と合意の集積が必要ではないかという結論になりました。そして温暖化問題に向き合う場合には、原子力は対策での選択肢の一つとして考えざるを得ない状況です。
  • 今年5月、全米科学アカデミーは、「遺伝子組み換え(GM)作物は安全だ」という調査結果を発表しました。これは過去20年の約900件の研究をもとにしたもので、長いあいだ論争になっていたGMの安全性に結論が出たわけです。 遺伝
  • はじめに 原子力発電は準国産エネルギーとされているが、周知のとおり日本にはウランがない。それでも「準国産」として扱われるのはなぜなのかを論ずる。 原子力発電の燃料は火力発電の100万分の1 原子力発電の燃料が準国産とされ
  • 今回の大停電では、マスコミの劣化が激しい。ワイドショーは「泊原発で外部電源が喪失した!」と騒いでいるが、これは単なる停電のことだ。泊が運転していれば、もともと外部電源は必要ない。泊は緊急停止すると断定している記事もあるが
  • 大阪市の松井市長が「福島の原発処理水を大阪に運んで流してもいい」と提案した。首長がこういう提案するのはいいが、福島第一原発にあるトリチウム(と結合した水)は57ミリリットル。それを海に流すために100万トンの水を大阪湾ま
  • 元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 日本では「ノーベル賞」は、格別に尊い存在と見なされている。毎年、ノーベル賞発表時期になるとマスコミは予想段階から大騒ぎで、日本人が受賞ともなると、さらに大変なお祭り騒ぎになる。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑