排出量取引義務化は国によるグリーンウォッシュ教唆

2026年01月08日 06:50

Halyna Romaniv/iStock

残念ながら2026年度より排出量取引(GX-ETS)が義務化されます。

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二酸化炭素(CO2)などの排出量取引「GX-ETS」が4月から本格始動する。業種ごとにCO2などを排出できる「枠」を設定し、参加企業は枠内に排出量を収めなければならない。達成できなければ「罰金」を払う必要があり、企業経営に影響を及ぼす可能性がある。割り当てられた排出枠は企業間で売買でき、排出量を減らしたと見なせる炭素クレジットの利用も部分的に認められている。枠は年度ごとに変わり、徐々に縮小する。

筆者は日本国内でGX-ETSを義務化する必要はないと何度も述べてきました。

大義名分がなくなった排出量取引、スコープ3義務化を見直すべき

日本では2026年度からGX-ETS(排出量取引)が義務化されます。日本政府は、GX-ETS義務化の理由としてCBAMへの対応を挙げています。しかし、CBAMの対象品目について、EUの輸入に占める日本の割合は、鉄鋼4%、アルミ1%、セメント0%、窒素肥料0%、水素及び希ガス1%、電力0%、日本からの輸出に占めるEUの割合は鉄鋼7%、アルミ9%です。GX-ETSに強制参加させられる400社のうち、EUの輸入量上位10%に該当する企業が何社あるのでしょうか。

欧州CBAM、COP30で総スカン:日本版CBAMなど土台無理ゲー

製品・サービスはまったく変わらないのに、参加企業は事務手続きや炭素クレジット購入など様々な負担が増えます。

(中略)

もちろん、海外企業は対象外。つまり、GX-ETS参加企業は、来年度以降の日本国内市場において、海外の競合に対して価格競争力が低下することになります。

(中略)

これではまずい、そうだ日本版CBAMを立ち上げよう、となったと仮定します。

(中略)

欧州ですら事実上の骨抜きになるのですから、日本版CBAMなんて到底無理です。

さらに、排出量取引によって売買される炭素クレジットにCO2削減効果はない、企業側が炭素クレジット=グリーンウォッシュと認識すべき、とも主張してきました。しかしGX-ETS義務化が見直されることなく新年度を迎え、無力感でいっぱいです。

■

さて、この年末年始の海外ニュースでも、相変わらず炭素クレジットの欺瞞が報じられていたのでご紹介します。

Hamburg rechnet Klimabilanz mit Öfen in Afrika schön, die es nie gegeben hat

ハンブルクはアフリカに存在しなかったストーブでカーボンフットプリントを計算

2025年12月24日

ハンブルクは長い間、海外でのプロジェクトによる排出量の相殺に頼ってきた。Atmosfair という組織を通じて、同市はアフリカでの気候保護プロジェクトに資金を提供し、ナイジェリアとインドで効率的な調理用コンロの導入を約束した。そこでは、木材の使用量を減らすことで排出量を削減し、ハンブルクは排出権を気候バランスに算入していた。2018年から2020年の間に、ハンブルクは100万ユーロ以上の価値のある認証を購入した。これにより、約75,000トンのCO₂を削減したと記録された。

(中略)

しかし、近代的な炉が設置されるはずだったナイジェリアの地域では、依然として野外での火の使用が主流だった。新しい設備は設置されていなかった。

(中略)

環境当局は、国連機関によって確認された事後検証済みの排出権証明書を指摘した。一方、ハンブルク会計監査院は、当該期間に追加のストーブが設置されていなかったことを確認した。

(中略)

批評家たちは、これを現代の免罪符取引だと指摘した。ハンブルク会計監査院の監査がなければ、この件は公表されなかっただろう。

ドイツのハンブルク市が長年にわたって購入していた炭素クレジットに関して、会計監査院の調査により実態がなかったことが判明したそうで。ドイツでは同様の事例が2024年の春から夏にかけても話題になり、炭素クレジット詐欺だとして大騒ぎになりました。当時紹介した記事はこちら。

日本企業はドイツの炭素クレジット詐欺被害に学ぶべき

こうしたカーボンオフセット、炭素クレジットの実態が日本国内でまったく報じられないため「日本企業の中には炭素クレジットの購入がCO2削減につながるのだ」「自社のCO2排出量を相殺できるのだ」と信じ込んでいる担当者が少なくありません。

仮に炭素クレジットの中身を理解している場合でも「日本政府が認めているJ-クレジットを使えば問題ない」と考える担当者は多いはずです。しかし、ドイツ政府やハンブルク市といったお上が推奨してきた炭素クレジットであっても詐欺が横行しており、後から大問題に発展しました。国や自治体に炭素クレジットの中身を評価することなどできません。そもそも、J-クレジット購入者に対して国は「もっと(実態以上に)排出削減した“ことにしたい”者」というひどい呼び方をしているのです。

続いて、世界最大のボランタリー炭素クレジット認証機関でまたまたまた起きた認証撤回をご紹介します。

Verra Rejects Four Forest Carbon Projects In China, Expands Review Of Others

Verra、中国における森林炭素プロジェクト4件を却下

2025年12月15日

ボランタリー炭素市場基準機関であるVerraは、中国政府の承認書類の正当性について重大な疑問点を発見したことを受け、中国国内の複数の炭素プロジェクトを却下し、さらに数十件のプロジェクトについて広範な再審査を開始したと発表した。今月初めに完了した品質管理審査において、Verraは4件の森林プロジェクトが中国当局から必要な認可を受けているかどうかを独立監査人が検証できないと判断した。この措置により4件のプロジェクトが完全に却下された。これらは合わせて約442万トンの検証済み炭素単位(VCU)を発行していた。

(中略)

Verraは、同様の問題を抱える中国国内の他の35件のプロジェクトを、登録・発行プロセスにおける追加審査対象とした。

(中略)

確認が得られない場合、Verraは追加プロジェクトの却下及びVCU(検証済みクレジット)の差し替え対象となる可能性があると述べた。

❞

Verraの発表によれば、すでに4件のプロジェクト442万トン分を撤回しており、追加で調査する35件のプロジェクトの発行済みVCUは1,420万トン分だとか。とんでもない量です。

よく日本企業向けのセミナー等で高品質だと推奨されるVerraについても、アゴラ上でたびたび紹介してきました。

世界の炭素クレジット市場の創始者が詐欺罪で告訴される

2023年5月にはVerraのCEOを15年間務めたDavid Antonioli氏が、理由の説明なく突然辞任しました。Verraの炭素クレジット認証に対しては、森林のCO2削減効果を誇張しているのではないかという指摘が後を絶ちません。

CEO辞任の翌月には、ブラジル連邦捜査局から詐欺の捜査を受けてVerraはブラジル・アマゾンでの熱帯雨林プロジェクトにかかわるクレジット発行を停止しました。Verraの認証を受けたプロジェクトからは5人の逮捕者も出ました。

また別の分析によれば、Verraの炭素クレジットの90%以上が無価値であることが判明し、ディズニー、シェル、グッチなどの大企業が使用している炭素オフセットはほとんど価値がなく、地球温暖化を悪化させる可能性がある、との指摘もみられます。

何度でも繰り返しますが、クレジット購入者が相殺した分と同じ量のCO2をクレジット発行者である森林保護プロジェクトや太陽光発電事業者が排出量としてカウントしないという致命的な欠陥を抱えています。炭素クレジットに高品質も低品質もなく、本質的にすべてグリーンウォッシュなのです。

国が企業に対して排出量取引参加や炭素クレジット購入を強制するのはグリーンウォッシュ教唆ではないでしょうか。義務化ではなく自由参加にして、「CBAMの影響を避けるためにGX-ETSが必要だ」「実態以上にCO2を削減した”ことにしたい”」などと本気で考える企業があるとしたら自主的に利用すればよいだけなのです。

■

 

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