日本上空でも気候モデルは温暖化を過大評価していた

janiecbros/iStock
以前に紹介したが、地球全体の上空(正確には高度約9000m以下の対流圏)について、IPCCで用いられるCMIP6気候モデルと衛星観測(UAHというデータセット)を比較すると、そこでは、ほとんどのモデルの気温上昇率が観測を上回っていた。
それでは、日本ではどうなのか、筆者が計算してみた。詳しくはワーキングペーパーCIGS WP「日本におけるCMIP6気候モデルと観測データとの比較」に書いたが、本稿では、その一部を紹介する。
日本の上空(正確には国内13か所の高層観測地点)に対応する格子を選び、1979~2024年について、39のCMIP6モデルとUAH(v6.1)の上空の気温(正確には下部対流圏気温)を比較した。
結果が図1である。各系列の回帰直線が1979年に同じ位置から始まるようにそろえてある。細い線が39のモデル、赤線がその平均、UAHの線が衛星観測である。年ごとの変動は大きいが、46年間の推移を比べると、モデル平均の気温上昇は衛星観測より大きい。

図1 日本上空の下部対流圏平均気温に相当する指標の推移(ワーキングペーパーCIGS WP図10)。
細い線はCMIP6の39モデル、赤線はその平均、UAHの線は衛星観測。
気温上昇率は、UAHが0.168℃/10年だったのに対し、CMIP6の39モデル平均は0.338℃/10年で、ほぼ2倍だった。
図2はモデルごとの上昇率を小さい順に並べたものである。UAHの上昇率は39モデルのすべてを下回った。なお別の衛星データ系列であるNOAA STAR v5.0を用いても、1981~2024年の上昇率は0.196℃/10年で、同期間のモデル平均0.347℃/10年を大きく下回った。

図2 日本上空の下部対流圏平均気温に相当する指標の上昇率(CIGS WP図11)。
灰色は個別のCMIP6モデル、UAHは衛星観測、赤い破線は39モデル平均。
ただし、図1の最後を見ると、UAH衛星観測もここ2、3年で大きく上昇している。これが一時的な変動なのか、これからも続いて長期トレンドを大きく押し上げるのかは、まだ分からない。
それでも、1979~2024年の長期トレンドを比較する限り、気候モデルは地球全体だけでなく、日本上空についても、衛星観測より大きな温暖化を示した。
ここで知っておくべきは、日本の温暖化の将来予測は、このような暑くなりすぎる気候モデルに基づいているということである。さらに言えば、「温暖化なかりせば」このような猛暑にならなかった、といった主張も、このようなモデルによるシミュレーションに基づいている。
なお上述のワーキングペーパーでは、様々な形で観測とモデルの比較をしている。また改めて紹介したい。
■
関連記事
-
現在世界で注目を集めているシェールガス革命。この動きをいち早く分析したエネルギーアナリストとして知られる和光大学の岩間剛一教授に寄稿をいただきました。分かりやすく、その影響と問題点も示しています。
-
混迷のスリランカ スリランカのゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が軍用機で国外逃亡したというニュースが7月13日に流れた。 スリランカではここ数か月、電気も燃料も食料も途絶え、5月以来54.6%のインフレ、中でも食糧価格が80
-
今年も3・11がやってきた。アゴラでは8年前から原発をめぐる動きを追跡してきたが、予想できたことと意外だったことがある。予想できたのは、福島第一原発事故の被害が実際よりはるかに大きく報道され、人々がパニックに陥ることだ。
-
突然の家宅捜索と“異例の標的” 2025年10月23日の朝、N・ボルツ教授の自宅に、突然、家宅捜索の命を受けた4人の警官が訪れた。 ボルツ氏(72歳)は哲学者であり、メディア理論研究者としてつとに有名。2018年までベル
-
何かと気候危機だと騒ぐのが好きな日経新聞がまたやらかした。 こんな記事があった。東京の8月の蒸し暑さが東南アジアの都市並みに匹敵するようになったということだ。 東京の夏の暑さは東南アジア級 もう働けない、労働損失は年28
-
本年1月17日、ドイツ西部での炭鉱拡張工事に対する環境活動家の抗議行動にスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリが参加し、警察に一時身柄を拘束されたということがニュースになった。 ロシアからの天然ガスに大きく依存して
-
先進国ペースで交渉が進んできたことへの新興国の強い反発――。最大の焦点だった石炭火力の利用を巡り、「段階的廃止」から「段階的削減」に書き換えられたCOP26の合意文書。交渉の舞台裏を追いました。https://t.co/
-
11月15日~22日、ブラジルのベレンで開催されたCOP30に参加してきた。筆者にとって20回目のCOPにあたる。以下にCOP30の経過と評価につき、私見を述べたい。 COP30の位置づけ COP30で採択された「グロー
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間
















